逮捕されたのは三菱UFJ銀行元女性行員の今村由香理容疑者です。
彼女は2020年4月から2024年10月までの約4年半にわたり、練馬支店と玉川支店の貸金庫から顧客の資産を繰り返し窃取し、被害総額は17億円以上に上り、約60人の顧客が被害に遭いました。
この事件は日本の大手銀行の貸金庫で起きたということで、社会に大きな衝撃を与えました。
この記事では、三菱UFJ銀行の貸金庫窃盗事件と今村由香理容疑者に関する情報を解説します。
三菱UFJ銀行の貸金庫窃盗事件の概要

2024年11月、三菱UFJ銀行において、行員による顧客の貸金庫からの窃盗事件が発覚しました。
事件が発覚したのは、被害に遭った顧客からの通報がきっかけでした。
銀行側の調査の結果、長期間にわたる大規模な窃盗事件であることが判明し、警察に被害届が出されました。
その後、警視庁は、元行員の今村由香理容疑者を窃盗の疑いで逮捕しました。
窃盗が行われたのは2020年4月から2024年10月までの約4年半です。
被害総額は17億円以上で、うち、現金が約10億円、金塊が7億円以上です。
被害者の数は60人以上に上ります。
事件発覚後、三菱UFJ銀行は11月14日に今村由香理容疑者を懲戒解雇しました。
2025年1月14日、警視庁捜査2課が窃盗容疑で今村由香理容疑者を逮捕しました。
逮捕容疑は、2024年9月に練馬支店で顧客2人の金塊計約20キログラム(時価総額2億6000万円相当)を窃取したというものです。
事件に対して、三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取は「信頼・信用という銀行ビジネスの根幹を揺るがすものだと厳粛に受け止めており、お客様や関係者の皆様に心よりお詫び申し上げる」とコメントしています。
今村由香理容疑者とは?

貸金庫窃盗事件を犯した今村由香理容疑者とはどのような人物なのか、解説していきます。
今村容疑者は東京都内の私立短期大学を卒業後、当時の東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に一般職として入行しました。
入行後は窓口業務や事務作業を担当し、その勤務態度の良さと仕事ぶりが高く評価されました。
その後、倍率の高い面接試験に合格して総合職へ転向を果たし、そして、事件のあった練馬支店や玉川支店で支店長代理や営業課長などを歴任しました。
今村容疑者の評価・性格
今村容疑者の職場での評価は非常に良いものでした。
- 真面目な性格で勤務態度が良好
- 仕事ぶりが高く評価され、総合職への転向を果たすほどの実力の持ち主
- ばりばり働くキャリアウーマン
職場での評価が高く、信用されていたことが、事件の発覚の遅れにつながったのかもしれません。
しかし、一方では近隣住民には悪い印象を与えていたようです。
- 気性が荒い一面があった
- 挨拶をしても話しづらい印象があった
- 近所の住民とトラブルを起こすことがあった
- 怒声を放つ姿を目撃されることもあった
このように、今村容疑者は裏表のある人物だったと思われます。
今村容疑者の私生活
今村容疑者は以下のような私生活を送っていたようです。
- 普段は落ち着いた性格で、派手な生活をしている様子はなかった。
- 駐車場収入の徴収に自ら出向くなど、金銭面での几帳面さがあった。
- ストレスやプレッシャーを抱えながら生活していた形跡がある。
今村容疑者の犯行動機
今村容疑者の犯行動機は金銭目的です。
彼女は15年以上競馬などのギャンブルにのめり込んでおり、多額の借金を抱えていたとのことです。
また、外国為替証拠金取引(FX)にもハマっており、FXで約10億円の損失を出していたようです。

優秀な銀行員で金融の知識があっても、FXでは勝てません。
FXで勝つためには、手法や資金管理など、しっかりと学ぶ必要があります。
そのため、消費者金融からの多額の借り入れをしていたそうです。
- FXはギャンブルではない。ギャンブルのようにトレードすると負けます。
- 借金してまでトレードしない。借金のプレッシャーは大きいので、より大きなリスクを取ったり、借金から逃れたい一心で今村容疑者のように犯罪に手を染めてしまうリスクがあります。
なお、今村容疑者は2013年には700万円以上の負債を抱えて民事再生法の適用を申請し、東京地裁から認可を受けていました。
このことから、犯行以前から深刻な経済的問題を抱えていたことがわかります。
盗んだ金品はFXの損失補填、消費者金融への返済、競馬での損失の穴埋めに使っていたようです。
こちらの記事では、今村容疑者がFXで10億円も損した理由をプロの視点から詳しく解説しています。


犯行手口


今村由香理容疑者が貸金庫から顧客の資産を窃盗した手口について解説します。
今村由香理容疑者は犯行当時、練馬支店では営業課長、営業課支店長代理、玉川支店では営業課支店長代理という役職であり、貸金庫管理責任者という立場でした。
彼女はその立場を利用して、貸金庫の窃盗を行いました。
具体的には以下の手口です。
ターゲットの選定
まずは窃盗する被害者を選びました。
被害者は以下の基準で絞り込まれました。
- 貸金庫の利用頻度を事前に把握する。
- 来店が少ない顧客を優先的に狙う。
- 来店頻度の高い顧客は避ける。
手口
貸金庫を開けるには、銀行用と顧客用の2種類の鍵が必要です。
しかし、今村由香理容疑者は予備鍵を不正に使用して犯行を行いました。
なお、予備鍵は封筒に入れられ、顧客印と銀行印で封緘されていましたが、封緘を破って使用しました。
そして、予備鍵を使用した後に封筒を再度糊付けして再封緘しました。
犯行後の対応
今村由香理容疑者は犯行が発覚しないよう、窃盗した後、様々な隠ぺい工作を実行していました。
彼女は窃盗が発覚しないよう、盗んだ貸金庫の中に他の顧客の金品を入れて補填し、隠ぺい工作をしていました。
帳尻を合わせるため、金品の移動を詳細にメモしていました。
また、現金を盗み出す際には、紙幣を束ねる帯封と札束の一番上にある紙幣1枚を自宅に保管していたとのことです。
現金を補填する際に、それを利用して何事もなかったかのように偽装するためです。
なお、盗み出した金塊を都内や千葉県内の7カ所の質店に質入れして換金していました。
売却すると、シリアルナンバーから窃盗が発覚するリスクがあるからです。
さらに、シリアルナンバーを確認して、同じ物を質請けして貸金庫に戻し、隠ぺいしていました。
また、顧客が想定外のタイミングで来店した場合、システムを意図的に切断し、「故障している」など言い訳をして、貸金庫の中身を確認できないようにしていたとのことです。
三菱UFJ銀行の対応


事件発覚直後、三菱UFJ銀行は以下の対応を実施しました。
- 事案対策本部の即時設置
- 警察への相談と事実関係の調査開始
- 監督官庁への報告
- 今村由香理容疑者を懲戒解雇
被害に遭った顧客に対しては、補償を開始しました。
また、お客様専用の問い合わせ窓口を設置して対応しています。
同時に、以下の再発防止策を実施しています。
システム面の強化
- 予備鍵の本部一括管理への移行
- 貸金庫室内の防犯カメラ増設
- 貸金庫の利用状況記録の精査強化
管理体制の見直し
- 二重チェック体制の整備
- 内部監査体制の強化
- 貸金庫管理業務に関与する従業員の配置見直し
三菱UFJ銀行は今後、再発防止策の実行、顧客や関係者からの信頼回復に向けた取り組み、被害者への誠意ある補償対応の継続を実施していく予定です。
向井理人執行役員カスタマーサービス推進部長は「リスクの認識が十分でなかった」と述べ、半沢頭取も「一度つくった管理体制を不断に見直す意識に欠けていた」と反省の意を示しています。
まとめ
三菱UFJ銀行は元行員の今村由香理容疑者によって、巧妙な手口で4年半にわたって行われてきました。
今村容疑者はFXや競馬で多額の損失を出し、借金をしており、それが犯行の動機でした。
この事件を受け、三菱UFJ銀行は現在、被害者への補償を行い、同時に再発防止策を実施し、信頼回復に取り組んでいます。