ロシアルーブルはFXで取引できるの?
ウクライナ侵攻はロシアルーブルの取引にどんな影響がある?
ロシアのウクライナ侵攻を受けて上記のような疑問を持った方も多いのではないでしょうか?
ロシアの通貨であるロシアルーブルは通常であればFXで取引することができますが、現在はかなり注意が必要な通貨でもあります。
この記事では以下の4つについて解説していきます。
- ロシアルーブルの特徴
- ウクライナ侵攻によりロシアルーブルは今後どうなる?
- FXでロシアルーブルを取引するメリット
- FXでロシアルーブルを取引するデメリット
この記事を読めば、ロシアルーブルをFXで取引する際のポイントを理解することができます。
ロシアルーブルの特徴

ロシアは世界最大の国土面積を持つ国であり、法定通貨であるロシアルーブルはFXでは「RUB」と表記されています。
ロシアはもともと通貨バスケット制と呼ばれる固定相場制の一つを採用していましたが、2014年の11月から現在も続く変動相場制に移行しました。
このような歴史があるロシアルーブルには以下の2つの特徴があります。
- 原油価格との相関性が高い
- 高金利通貨である
原油価格との相関性が高い
ロシアは世界有数のエネルギー産出国であり、2021年の原油生産量は世界3位、天然ガス生産量は世界2位に位置しています。
原油や天然ガスなどの天然資源の生産が盛んなロシアでは、これらの資源を欧州をはじめとした世界各国に輸出することにより多くの国益を得ています。
原油などの資源の輸出によりロシアの経常収支が黒字になれば、それだけロシアルーブル買いが増えることになり、ロシアルーブルの価格は上昇することになります。
一方で石油や天然ガス自体の価格が低迷した時には、財政悪化に直結してしまうという負の面を持っているのも特徴です。
以上のように、原油価格の上昇/下降に合わせてRUB/JPY(ロシアルーブル円)も上昇/下降していることがわかります。

原油価格の確認にはWTI原油先物価格を見ることをオススメします
後述しますが、2022年2月末のロシアルーブルの急落はウクライナ侵攻によるものなので、原油価格との相関性はあまり見られません。
あくまでも強力なファンダメンタルズ要因が存在していない場合にのみ、原油価格との相関性が見られると理解しておきましょう。
高金利通貨である
ロシアは政策金利が高いことでも知られています。


2022年2月末に起きたウクライナ侵攻以前の政策金利は8.5%と、FXで取引できる通貨の中でもかなり高水準でしたが、ウクライナ侵攻以降は一時的に政策金利が20%にまで引き上げられました。
一時的に政策金利を大幅に引き上げたのは、ウクライナ侵攻の際に急落してしまったロシアルーブルを復活させることが目的とされています。
2022年7月現在では政策金利は徐々に下げられて、9.5%にまで落ち着きました。
ウクライナ侵攻によりロシアルーブルは今後どうなる?


ここからは、2022年2月に発生したウクライナ侵攻がロシアルーブルにどのような影響があるのかを解説していきます。
ロシアルーブルのようなマイナー通貨をFXで取引する際は、テクニカル分析だけではなく、これから説明するようなファンダメンタルズに関する知識も必要になります。
必ず押さえておきましょう。
- ロシアへの金融制裁はFX市場にどんな影響を与えたのか
- ロシアがデフォルトした場合のFXへの影響は?
- ロシアルーブルの為替動向
ロシアへの金融制裁はFX市場にどんな影響を与えたのか
2022年2月末にロシアがウクライナに侵攻したことで、戦争が勃発しました。
これを受けて日本や欧米諸国はロシアに対して経済制裁を行うことを打ち出し、中でも以下2つの金融制裁は金融市場に大きな影響を与えました。
- ロシア国内の特定の銀行をSWIFTから除外
- ロシア中央銀行の資産凍結



SWIFTとは世界中の銀行や金融機関を繋いで、金融取引を安全に処理する役割を担っている団体です
ロシア国内の特定の銀行がSWIFTから除外されることで、ロシアの国際的な経済活動は著しく制限されることになります。
また、ロシア中央銀行の外貨準備も凍結されてしまったため、外貨を売ってロシアルーブルを買い支えるなどの措置を取ることも難しくなってしまいました。
外貨準備とは、政府や日本銀行が緊急事態の備えとして保有している外貨建て資産のことです。
例えば日本でアジア通貨危機のような出来事が起きたとします。
日本円を保有している人たちは「日本円は危険だ」と思い、日本円を手放し始めます。
日本円の価値はみるみると下がり、最終的にはハイパーインフレのようなことが起きてしまいかねません。
ここで日本政府や日本銀行は、下がりすぎてしまった日本円の価値を再び適正に戻すために、「外貨準備」を使って日本円を買い支えるのです。このように「相場を適正に保つために使われる外貨建て資産を「外貨準備」と呼びます。
以上のような金融制裁が加えられたことによって、ロシア国債のデフォルト懸念が顕在化しました。



デフォルトとは国に国債の返済能力がなくなることを指しており、デフォルトを起こした国の信頼度はかなり低下することになります
外貨準備が凍結されているロシアは、外貨建てのロシア国債の返済が難しい状態となっており、実質的にデフォルトしたとの認識が高まっています。


このようにロシアのデフォルト懸念が高まったこともあり、世界中がロシアルーブルを大量に売り、価値が急落することになりました。
かつて1ロシアルーブルは1.5円から1.6円で取引されていましたが、ウクライナ侵攻の際には1ロシアルーブル=約0.8円にまで落ち込むことになりました。
資産凍結によりロシアルーブルの買い支えができないロシアは、政策金利の引き上げをはじめとする様々な通貨防衛策によってロシアルーブルの価値回復に努めている状況です。



現在ではロシアルーブルの価値はウクライナ侵攻以前の水準よりも大幅に回復しています。
ロシアルーブルの今後の為替動向
ロシアルーブルは先行き不透明であり、当面の間はウクライナ侵攻に関連するファンダメンタルズが為替動向の鍵を握っていると言えます。
2022年7月現在ロシアルーブルの価値はV時回復をしており、今最も上昇率の高い通貨といっても過言ではありません。
ロシアルーブルのV字回復は以下の3つの通貨安対策によるものであると考えられています。
- ロシア国民の外貨購入を制限
- 天然ガス貿易の決済通貨をロシアルーブルにするよう要請した
- ロシアの石油、天然ガス輸出企業に対して外貨収入の80%をロシアルーブルに両替するよう要請した
一時はデフォルトの懸念すらあったロシアルーブルがここまでの回復を見せたのは、以上のような徹底的な外貨売りとロシアルーブル買いを行なったからだと考えられています。
では、このV字回復の勢いに乗ってロシアルーブルをロングするべきなのでしょうか。
結論から言って、現在ロシアルーブルをロングすることは危険であり、為替動向をしばらく見守るべきでしょう。
理由は以下の2つです。
- ロシアルーブル買いがロシアの景気を反映したものではないから
- 今後もロシアに対する経済制裁が検討されているから
1つ目の理由は今回のロシアルーブルのV字回復が半ば強制的に起こったことであり、ロシアの経済状況を正確に反映しているとは言えないからです。
今回のウクライナ侵攻を受けて多くのFX業者がロシアルーブルの取り扱いを停止したように、現在ロシアルーブルの相場は流動性が著しく低下している状態です。
流動性の低い相場であることも相まって前述した通貨安対策によるロシアルーブル買いが大きなV字回復として反映されたと考えられます。
したがって、流動性の低い現在のロシアルーブル相場では、いつ上昇相場が崩れるかわからない不安定な状態であると言うことができます。
2つ目の理由は、戦争が長期化すれば新たにロシアに対する経済制裁が与えられる可能性が高いからです。
戦争が長期化すれば新たな経済制裁が課せられる可能性が高く、外国からの輸入にも頼ることができないロシアは現在よりも深刻な物資不足を招くと考えられます。
また、国際金融市場から除外されている限りはロシアルーブルが信頼感を取り戻すことは難しいと考えられます。
以上のことから考えるとロシアルーブルの上昇圧力は一時的なものであり、ロシアルーブルのロングには危険が伴うと結論づけることができます。



現在のような流動性の低い相場では逆張りのショートもオススメできません。
FXでロシアルーブルを取引するメリット


ここまでロシアルーブルについて解説してきました。
通貨や国に様々な特徴があるロシアルーブルですが、ここではFXでロシアルーブルを取引するメリットを解説していきます。
- 高いスワップポイントが付与される
- 必要証拠金が少額ですむ
2022年7月現在、ほとんどのFX業者でロシアルーブルの新規注文の受付を停止しています。
ロシアが国際金融市場から事実上排除されつつあることを考えると、当面の間はFXでロシアルーブルを取引することはできないと考えられます。
ロシアルーブルの取り扱い状況は各FX業者の公式サイトで確かめるようにしましょう。
高いスワップポイントが付与される
前述のようにロシアの政策金利はかなり高水準のため、FXの際にもらえるスワップポイントも大きいです。
特にロシアルーブルと日本円のような低金利通貨との通貨ペアであるRUB/JPYをロングした場合は、大きなスワップポイントを得ることができます。
スワップポイントを狙ったトレードをする際は、トレードによる損失がスワップポイントの収益を上回らないように気をつけましょう。
必要証拠金が少額ですむ
ロシアルーブルのクロス円レートは低いので、取引の際の必要証拠金は少額ですみます。
RUB/JPYは現在2.3円付近で推移しています。
最大レバレッジ25倍で取引できる場合、USD/JPYが1通貨量あたり5.6円で取引できる一方で、RUB/JPYは1通貨量あたり0.13円で取引することができます。
必要証拠金で少ないということは、それだけ少額の軍資金から取引を始めることができ、こまめに投資資金を調整できるというメリットがあります。
FXでロシアルーブルを取引するデメリット


次にロシアルーブルを取引するデメリットについて解説していきます。
- 流動性が低く、ロスカット危険性がある
- 地政学リスクが高く、急激に値動きする可能性がある
- トレードできるFX業者が少ない
流動性が低く、ロスカットの危険性がある
ロシアルーブルのようなマイナー通貨は流動性が低く、常にロスカットの危険性があります。
加えて、今回のような戦争が発生した場合は多くの投資家や投機家がロシアルーブルから資産を引き上げるため、流動性がより低くなります。



流動性が低いとは市場全体の注文量が少ないということです
流動性が低いということは、エントリーと決済の両方で不利な価格で約定されてしまうことを指しています。
また流動性が低ければ急激な値動きも発生するので、その値動きを狙ったトレードをする投機筋も存在します。
しかし流動性の低い相場では注文量の多い大口注文が相場の方向性を決定してしまうので、一般的なトレーダーが相場に参加することはオススメできません。
地政学リスクが高く、急激に値動きする可能性がある


ロシアは冷戦時代から西側諸国との対立が深く、紛争や戦争の懸念が常に存在しています。
それゆえにロシアルーブルは地政学リスクが高い通貨であり、今回のウクライナ侵攻もロシアの持つ地政学リスクの一つでした。
地政学リスクの高い通貨は紛争や戦争が発生すれば通貨の価値が急激に動くこともあります。
また有事の際にはドルや円が安全資産として買われる傾向にあるため、相対的にロシアルーブルの価値が下がることもあります。
トレードできるFX業者が少ない
そもそもロシアルーブルを取り扱っているFX業者は少ないです。
ウクライナ侵攻を受けて、ロシアルーブルを取り扱っていたFX業者でも新規注文の受付を停止したり、そもそもの取り扱いを終了するなどの処置を取っています。
国内FX業者 | 取り扱い状況 |
---|---|
外為どっとコム | 新規注文の受付停止 |
SBI FXトレード | 新規注文の受付停止 |
SBI証券 | 新規注文の受付停止 |
IG証券 | 取り扱い終了 |
みんなのFX | 新規注文の受付停止 |
LIGHT FX | 新規注文の受付停止 |
楽天FX | 取り扱いなし |
まとめ:ロシアルーブルをFXで取引するのはオススメしない
ここまでFXにおけるロシアルーブルについて解説してきました。
この記事のポイントは以下の通りです。
- ロシアルーブルは原油価格との相関性が強い
- ロシアの金融制裁を受けてロシアルーブルの価値は暴落したが、V字回復を遂げた
- ロシアルーブルは大きな上昇率を見せているが、それは実態の伴わないものである可能性が高い
- 経済制裁を受けたロシアは実質的に国際金融市場から排除されており、今後ロシアルーブルがFX取引できるかは怪しい
WikiFXでは安全性に優れた国内FX業者の利用をオススメしています。
コメント