ウクライナ侵攻で、FX相場はどんな影響を受けてきた?
今後どうなるか、知りたい。
2022年2月24日に、ロシアはウクライナへ侵攻を開始しました。
開戦から500日以上も経過していますが、未だに終結する気配すらありません。
戦争は地政学リスクが高いため、FXへの影響が大きいです。
そのため、ロシアのウクライナ侵攻の情勢や今後のFXへの影響が気になる方が多いことでしょう。
これからのウクライナ侵攻がどうなるかを知っておけば、FXでもどのようにトレードすればいいかわかることでしょう。
- FX相場で見る侵攻開始から現在までの状況
- ウクライナ侵攻による今後のFXへの影響シナリオ5つ
この記事を読めば、ウクライナ侵攻がFXにもらした影響から、今後どうなるかまでが理解できます。
ウクライナ侵攻が今後、どのような形でFXに影響を与えるか気になる方は、ぜひ参考にしてください。
ウクライナ情勢は?FX相場で見る侵攻開始から現在までの状況
ウクライナ情勢によるFXの影響を考えるなら、侵攻から現在に至るまでの過程とともに紐解くのが一番有効です。
そこでここからは、ウクライナ侵攻開始から現在までの主な出来事が、ドル円にどのような影響を与えたかを解説していきます。
- ロシアがウクライナへ侵攻開始(2022年2月24日)
- 欧米がロシアへSWIFT排除などの経済制裁を開始(2022年2月末~)
- ロシア軍がヘルソンから撤退完了(2022年11月11日)
- フィンランドのNATO加盟(2023年4月4日)
- アメリカがウクライナへクラスター爆弾の供与を発表(2023年7月7日)
ロシアがウクライナへ侵攻開始(2022年2月24日)
2022年2月24日に、ロシア軍はウクライナへ侵攻を開始しました。
この日は114.40円まで下落しましたが、ニューヨーク時間で115.69円まで上昇しています。
というのも、バイデン大統領の演説で、
世界がロシアに責任を負わせる。
と、アメリカが中心となってロシアに対して徹底的に軍事手段以外で追い詰めることを発表したからです。
そのため、欧米とロシアの間に緊張が強まるとトレーダー達の間で危機感が高まって、ドルが買われました。
この日は、安値から高値まで約120pips動いています!
しかし、その後に円安局面が続いたことを考えると、この時点での危機感は低かったと言えます。
欧米がロシアへSWIFT排除などの経済制裁を開始(2022年2月末~)
2022年2月末頃から、アメリカやEUなどがロシアへの経済制裁としてSWIFT排除を開始しました。
SWIFTとは、国際送金や決済に利用されるネットワークを提供する法人のことです。
全世界の銀行が海外へ送金などを行う際は、SWIFTのネットワークを使います。
SWIFTからロシアを排除すれば、ロシアは海外との間で入出金が不可能となるため、ロシア経済に深刻なダメージを与えることに繋がるのです。
そうなると、ロシアもウクライナへの侵攻を強めます……。
つまり当時は戦争状態が激化することが予想されたため、この後からドル買いか加速しました。
というのも、「有事のドル買い」という言葉がある通り、基軸通貨への安心期待からドル買いが進行しやすくなるからです。
そのため、ドル円は2022年2月末から10月中旬頃まで強い上昇トレンドを形成しました。
ロシア軍がヘルソンから撤退完了(2022年11月11日)
2022年11月11日には、ロシア国防省が「ロシア軍がヘルソンからの撤退を完了した」と発表しました。
ヘルソンは、黒海へつながるドニプロ川の要衝です。
ロシアは9月末にヘルソン州を併合したばかりなので、ここを失うとプーチン大統領が打ち出した併合政策が早くも失敗という形になります。
この失敗は、プーチン大統領が主導してきたウクライナ侵攻で最大の敗北と見られるため、大統領の求心力低下は避けられません。
FX相場では、ヘルソン州の撤退発表でウクライナ侵攻の一服感がトレーダー達に広がり、一気に円を買い戻す動きが加速しています。
ドル円チャートでは2022年11月11日を境に下落トレンドを形成し始め、2023年1月の中頃には約8ヶ月ぶりに127円台まで戻りました。
フィンランドのNATO加盟(2023年4月4日)
2023年4月4日にフィンランドが31番目の加盟国として、NATOに加盟しました。
NATOは、旧ソビエト連邦(現:ロシア)の社会主義国家に対抗して組織された、欧米の軍事同盟です。
フィンランドはロシアと陸続きで隣同士であるため、フィンランドのNATO入りは地理的に「ロシア包囲の完成」に近いとしか言いようがありません。
そのため、ロシアはフィンランドのNATO加盟を受けて、
対抗措置をとる。
と表明しました。
そんな緊迫した状況に逆戻りしたと多くのトレーダーが考えたのか、FX相場はドル買いが加速し、ドル円チャートでは131円台から再び上昇トレンドを形成しています。
アメリカがウクライナへクラスター爆弾の供与を発表(2023年7月7日)
2023年7月7日に、アメリカはウクライナへ「クラスター爆弾を供与する」と、発表しました。
クラスター爆弾は、コンテナーの中に数百もの小型爆弾が入った兵器です。
そのため、広範囲に散らばって、多くのものを破壊できます。
ウクライナがアメリカにクラスター爆弾を要求した理由は、下記の2つです。
- 戦争の長期化による弾薬不足
- 前線が1,000kmと広範囲
1つ目の理由は「戦争の長期化による弾薬不足」だからです。
以前からウクライナ軍はクラスター爆弾などの兵器を使用していましたが、開戦から約1年半も経過していることから慢性的に弾薬不足になっていました。
そのため、クラスター爆弾をアメリカから供与してもらうことによって、作戦を効率的に行いたいという狙いがあります。
2つ目の理由は、「前線が1,000kmと広範囲」だからです。
ウクライナ軍は、これからウクライナ東部から南部で構えているロシア軍を一気に排除する必要があります。
ですが、その前線がおよそ1,000kmと広範囲におよびます。
つまり、クラスター爆弾のような広範囲を攻撃する兵器がないと、国境までロシア軍を後退させるのは難しいです。
以上の理由よりクラスター爆弾の供与が決まった日から、FX相場では戦争終結の兆しが見えたと判断され、ドル売りが加速しています。
その結果、ドル円チャートでは約10日で6円も下落しました。
ウクライナ侵攻によるFXへの影響はいつまで?今後のシナリオ5つ
ウクライナ侵攻はFXにとって地政学リスクを秘めているため、今後の動向によっては相場に大きな影響を及ぼします。
そのため、今後ウクライナ侵攻がどのような展開になるのか予想することはトレードの結果に直接結びつくため、とても重要です。
そこでここからは、ウクライナ侵攻が今後どうなってFX相場にどのような影響を与えるか、5つのシナリオから予想していきます。
- 中国などの仲介による停戦の合意
- 戦争の長期化
- ロシア崩壊による終結
- 第3次世界大戦への発展
- ロシアがある程度侵攻して終戦
シナリオ1.中国などの仲介による停戦合意
1つ目のシナリオは「中国などの仲介による停戦の合意」です。
中国は、ウクライナ侵攻で始まった欧米の経済制裁に同調することなく、経済的に孤立したロシアを助けるような形で接してきています。
その証拠に、欧米がロシアの主力輸出品である石油や天然ガスなどを買い控えする中、中国は積極的に買い続けています。
もし中国が仲介役としてロシアに停戦交渉を持ちかければ、ロシアも聞かないわけには行かないため、停戦が合意される可能性は高いです。
そうなれば、戦争停戦という安心感から、トレーダー達の間でドル売りが進み、ドル円チャートも円高が進むと予想できます。
ただし、停戦後に戦争で疲弊したロシアは、経済的に中国の言いなりになる可能性があります!
そうなると、中国元の世界に占める割合が増えて、ドルストレートや円クロスが長期目線では通貨安になる可能性もあるので、注意しましょう。
シナリオ2.戦争の長期化
2つ目のシナリオは、「戦争の長期化」です。
最近はウクライナの反転攻勢や各国の戦車供与もあり、前線を押し返しています。
しかし、ロシアも中国などの近隣諸国から兵器供与があれば、再び侵攻してくる可能性は高いです。
というのも、ロシアは、
親ロシアのウクライナ東部2州(ドネツク州とルガンスク二州)をナチス化から保護する。
という口実で、ウクライナ侵攻を開始したからです。
上記の2州が完全にロシアの支配下になるまでは、プーチン大統領が諦めるとは考えにくいでしょう。
そうなると戦争が長期化するため、ウクライナが優勢になったり、ロシアが優勢になったりなどのニュースが入るたびに相場は荒れます。
具体的には、
- ウクライナ優勢:ドル安
- ロシア優勢:ドル高
となる傾向が強いです。
シナリオ3.ロシア崩壊による終結
3つ目のシナリオは、「ロシア崩壊による終結」です。
ロシア国内で反政府組織の内乱や軍部のクーデターによって、内部から崩壊して戦争が終結する可能性があります。
実際、2023年6月23日に民間軍事会社ワグネルを率いるプリゴジン氏の部隊が、ロシアに対してウクライナに近いロストフ州で武装蜂起しています。
ロシアの民間軍事会社ワグネルが同国内での武装蜂起を宣言した。
引用元:日本経済新聞
創設者のエフゲニー・プリゴジン氏は24日、ワグネルの部隊が南西部ロストフ州に入ったと明らかにした。
プリゴジン氏の反乱はすぐ鎮圧されましたが、クーデターが起こった事実から考えて、今後も起こる可能性は否定できません。
もしロシア内部なら崩壊する形で戦争が終結すれば、トレーダー達の安心感から、「シナリオ1.中国などの仲介による停戦合意」よりも強いドル売りが進むことでしょう。
そうなると、ドル円チャートでは大きく円高が進むと予想されます。
シナリオ4.第3次世界大戦へ発展
4つ目のシナリオは、「第3次世界大戦へ発展」です。
ロシアは核兵器の保有国なので、何かの拍子でNATO加盟国やアメリカ、日本などへ攻撃する可能性もあります。
攻撃が開始されると、同盟を主導していたアメリカも黙っているわけにはいかなくなるため、戦争に参戦します。
また、この混乱に乗じて、中国が台湾侵攻を開始する可能性も高いです。
そうなると同盟関係の国々や関係国が次々と戦争に参戦するため、世界中を巻き込む大戦に発展します!
大戦まで発展すると、現物資産である金やプラチナなどの購入が進みます。
金やプラチナはドル建てで取引されるため、現物資産の購入でドルが使われることからドル安が進むことでしょう。
また、第2次世界大戦後を境に、それまで基軸通貨だった英ポンドから米ドルへと転換していった経緯を考えれば、基軸通貨が変わる可能性も考えられます。
どの通貨が次の基軸通貨になるかはわかりませんが、世界大戦という動乱ではFX相場は大きく乱高下を繰り返すことは確実です。
シナリオ5.ロシアがある程度侵攻して終戦
5つ目のシナリオは、「ロシアがある程度侵攻して終戦」です。
元々ロシアは、
親ロシアのウクライナ東部2州(ドネツク州とルガンスク二州)をナチス化から保護する。
を口実に、侵攻を開始しています。
そのため、上記の州がロシアの手に落ちれば、攻勢はストップする可能性があります。
ウクライナ側も疲弊して戦争中止の世論が高まれば、そのまま自然に終戦するでしょう。
ロシア側の勝利で戦争は終結しますが、終結に変わりないため、トレーダー達の間では安心感の広がりでドル売りが進み、ドル円チャートも円高が進むと予想されます。
まとめ:ウクライナ情勢や今後のシナリオを把握して、FXを予想しよう
ここまでウクライナ情勢がもらしたFXへの影響から、今後どうなるかのシナリオまでを解説してきました。
- ウクライナ侵攻が進むと、ドル買いが進んでドル円も上昇しやすい
- 終結の可能性が出てくると、ドル売りが進んでドル円も下落しやすい
- 中国が介入するシナリオだと、中国元の存在感が増し、ドルストレートや円クロスが通貨安になる
- 第3次世界大戦まで発展すると、金などの購入でドル安が進む可能性が高い
ウクライナ情勢や今後のシナリオが把握できれば、これからの状況次第でFXにどんな影響を与えるか予測できるでしょう。
というのも、FXは地政学リスクで価格が上下しやすい性質があるからです。
予想通りにいけば、相場の流れから上手く利益を取ることができます。
そのためにも、情報収集は欠かさないようにしましょう。
今後のウクライナ侵攻の進捗によっては、トレンドを決める重要なキッカケが生まれる可能性があります。
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