ビットコインの電力問題ってなに?
電力問題がビットコインの価格に与える影響は?
ビットコインの電力問題はインターネット上でも良く話題に挙がっていて、耳にしたことがあるだろう。
一方で電力問題がなぜ発生しているのか、どれくらい深刻なのかといった具体的な内容については、知らない方も多いように感じる。
「ビットコインの電力問題」と聞くと、ビットコインを既に持っている人や、これから購入を考えている人は、不安に感じるのではないだろうか。
そんな方々に向けてこの記事では、ビットコインの電力問題の概要やその原因、そして将来に向けた解決方法まで詳しく解説していく。
ビットコインの電力問題とは
ビットコインの発行や維持のために電力を大量に消費するために、世界的な電力不足や地球温暖化の要因になってしまうということが、長年にわたって懸念されている。
商業施設やオフィスビルなどであれば、消費電力が多いことは容易に想像ができるだろうが、なぜビットコインがそんなに多くの電力を消費するのか、イメージがつかない人が多いだろう。
ビットコインはマイニング(仮想通貨の売買取引を記録する作業)の際に、最も多くの電力を消費する。
このマイニングには性能の高いコンピューターによる、膨大な情報量の処理が必要になるので、大量の電力消費につながる。
そして大手の企業となると、何万台ものコンピューターを同時に稼働させるため、電力の総消費量は膨大な量になってしまう。
英ケンブリッジ大学が発表した「ビットコイン電力消費指数」によると、ビットコインの電力消費量は日本の年間の総電力消費量の12%にも及ぶというデータが出ている。
この消費量はオランダでいえば、年間の総電力使用量と同等の数値となっており、もはや国家レベルだ。
さらにビットコインは発行量が増えれば増えるほど、新たなマイニングのための計算は複雑化していき、必要な電力はより大きなものになっていく。
ビットコインの消費電力は年々大きくなっており、世界的な問題になっている。
こういった事態に対策するために、マイニングを含めた仮想通貨の規制強化に取り組む国も出てきている。
ビットコインの電力問題が与える影響
ビットコインの電力問題が解決されないと、ビットコインの価格や保有者にはどのような影響があるのだろうか。
中国がビットコインへの規制を強化
中国国内ではこれまで膨大な量の、仮想通貨のマイニングが行われてきた。
可能な限り安い経費でマイニングしたいと考える企業が多いため、新疆ウイグル自治区など電力が安い地域を中心に、マイニング業者が集中している状況だったとされている。
一方で2021年5月に中国政府は、中国の規制当局が仮想通貨のマイニングの禁止を検討しているという文書を公開。
その要因の1つとして、やはり大量の電力消費による環境への悪影響が挙げられている。
この影響を受けて、当時は過去最高水準だったビットコインの価格が、50%ほども暴落した。
大きな国による規制強化は、ビットコインの価格に大きく影響を与えることがわかる。
世界中でマイニングの規制が強くなる傾向
世界中でビットコインの電力問題が懸念されている状況であるため、今後は電力問題が要因で規制を強める国も多くなる可能性がある。
現にコソボやカザフスタンなどでは、マイニング業者の締め出しや、電力供給の停止などが行われた。
米ニューヨーク州の議会は2022年6月3日、一部方式の暗号通貨のマイニングを禁止する法案も可決した。
スウェーデンの金融規制当局も、暗号資産のマイニングについて、「急務である低炭素社会移行を阻害する」とし、ヨーロッパ全域での禁止を要求。
また2021年5月に大手自動車メーカーのテスラ社は、環境への影響を考慮して、ビットコインの受け入れの停止を発表。中国のマイニング禁止令と時期も重なり、価格の暴落の一因となった。
マイニングを含めて世界各国で仮想通貨の規制が強められていった場合、前例のようにビットコインの価格が暴落し、価格下落の流れが続いてしまうことも考えられる。
ビットコインの保有者や、今後ビットコインの購入を考えている人は、こういったリスクも考慮しておく必要があるだろう。
ビットコインの電力問題の解決方法
ビットコインの電力問題を解決すれば、規制強化の風向きは変わり、ビットコインの将来性も高くなる希望もある。
「再生可能エネルギーの活用や、プロトコルの移行などの手段を取れば、ビットコインネットワークの維持は可能」と擁護する声も少なくない。
深刻な電力問題の解決方法として、大きく3つの方法が挙げられる。
①再生可能エネルギーのさらなる活用
仮想通貨のマイニングに必要な電力は、安価である火力発電が利用されることも多い。
火力で電力を生み出す際には、天然ガスや石油、石炭といった資源が必要となり、二酸化炭素を排出してしまう。
二酸化炭素は環境汚染や地球温暖化の原因であるため、再生可能エネルギーの活用が求められている。
仮想通貨の電力問題の対策は急務となっているため、現在は再生可能エネルギーを活用する企業も増えてきた。
ケンブリッジ大学は、2020年時点で仮想通貨のマイニングに必要な電力の40%は、再生可能エネルギーでまかなうことができていると発表している。
オーストラリアの企業がマイニングに水力発電を利用したり、エストニアの企業が風力発電を利用したりと、再生可能エネルギーを利用する企業が増えている。
再生可能エネルギーの導入コストや維持費は少しずつ下がっており、今後も再生可能エネルギーの活用がさらに広がっていけば、電力問題の解決にもつながっていくだろう。
引用:3RD GLOBAL CRYPTOASSET BENCHMARKING STUDY
②マイニング機器の性能の向上
ビットコインはマイニングの際に複雑な数式の計算が必要となり、膨大な量のデータを高速で処理するために、多大な電力が消費されてしまう。
そのため多くの国の年間の総電力使用量よりも、ビットコインのネットワークの年間の電力量が上回るという事態が発生してしまっている。
下の図は2022年8月22日時点での、ビットコインの電力消費量を、各国の総電力消費量と比較したものだ。
各国の年間の総電力消費量と比較すると、ビットコインの消費量はチェコの約2倍、オランダの約1.2倍となっていることがわかる。
どれだけビットコインの電力消費量が多いか、お分かりいただけただろう。
近年は世界各国で、ビットコインの電力問題を解決するために、マイニング機器の省電力化が進められている。
マイニングの際の消費電力を削減できる機械の開発、販売も行われている。
現状はまだ機器の費用が高いために普及率が低いが、導入する企業が増えていけば、電力問題の改善につながるだろう。
③プロトコルの移行
ビットコインは現在「プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work)」と呼ばれるシステムを採用しており、マイニングの際に複雑な計算が必要になり、消費電力が大きい要因の1つとなっている。
ビットコインに続く世界第2位の流通量を誇るイーサリアムは、電力問題の解消に向けてProof of Workからの移行を表明している。
「プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake)」と呼ばれるシステムは、従来のProof of Workと比較して、エネルギーの効率が格段に高い。
Proof of Stakeは保有通過量に比例して、マイニングの量が制限されるため、複雑な計算を必要としない。
既にアルトコインではProof of Stakeが採用されており、ビットコインよりも電気消費量が少ない。
ビットコインもProof of WorkからProof of Stakeに移行することができれば、エネルギー効率を高め、電気消費量を抑えることができるだろう。
ビットコインの電力問題まとめ
世界的に環境問題が大きく取りあげられる中で、ビットコインの消費電力は深刻な問題となっている。
環境へ配慮した規制強化が、ビットコインの価格を暴落させたケースも見られる。
ビットコインが今以上に世界中に普及していくためには、電力問題という大きな課題の解決は必須といえるだろう。
電力問題がさらに深刻化していけば、さらなる規制の強化が考えられる。
仮想通貨を取り扱う企業が短期的な利益だけでなく、長期的な目線を持って、再生可能エネルギーや高い省電力機能を備えたマイニング機器の導入、プロトコルの移行など、対策に取り組む姿勢が求められる。
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