あなたが新しい暗号通貨やプロジェクトへの投資を考えているのなら、…
ちょっと待ってください!
あなたが投資しようとしているその暗号通貨やプロジェクト、もしかしたらラグプルかもしれません。
ラグプルとは現在急増中の暗号通貨詐欺です。
ブロックチェーン監視プラットフォームのソリダス・ラブズ(Solidus Labs)の統計によると、2022年には200万人がラグプルの被害に遭いました。
ラグプルに騙されないためにも、手口、事例、対策などを解説します。
- ラグプルの手口、事例
- ラグプルに引っかかる人の特徴
- ラグプルの見分け方と対策
ラグプルとは?
ラグプルとは、新しい暗号通貨やトークンやプロジェクトを作成し、投資家がそれに投資した後、開発者が集まったプロジェクトの資金を持ち逃げしたり、大量に売却したりする詐欺です。
資金を持ち逃げされることを「ラグられる」と言う人もいます。
ラグプルは出口詐欺とも呼ばれます。
なお、投資資金を持ち逃げする出口詐欺は古くからある投資詐欺の常套手段です。
ラグプルは「rug pull」という英語のカタカナ表記で、「pulling the rug out(「絨毯を引き抜く」の意味)」が由来です。
絨毯の上に立っている人が絨毯を突然引っ張られてバランスを崩して倒れる様子と開発者にプロジェクトの資金を突然持ち逃げされてて呆然と崩れ落ちる様が似ていることから、ラグプルと呼ばれるようになりました。
DeFi、GameFi、NFTがブームになってからラグプルが急増しました。
DeFiやGameFiという言葉は知っているけど、実はよくわからない
こんな場合、こちらの記事でわかりやすく解説しているので、ご覧ください。
チェイナリシス(Chainalysis)の調査によると、ラグプルによる被害は2020年には1億ドル未満だったのが、2021年には28億ドルと急増しました。
2021年に起きたラグプルの被害上位15件のうち、CEX(中央集権型取引所)が1件で、残り14件は全てDeFiでした。
ラグプルの手口
ラグプルの被害に遭わないためには、手口を知る必要があります。
そこで、ラグプルの手口を紹介します。
ICO、IDOがラグプルの温床
ラグプルの基本的な流れは、
新しい暗号通貨やトークンやプロジェクトを立ち上げる → 出資を募って資金調達する → 資金を持ち逃る
なので、新しい暗号通貨を新規公開する場であるICOやIDOはラグプルの温床となっています。
ICOとは「Initial Coin Offering」の略で、新規仮想通貨公開のことです。
ICOは取引所に上場する前の安い価格で暗号通貨を購入できます。
そして、上場されて価格が上がることで、大金を稼ぐことができます。
ICOは暗号通貨のIPO(新規株式公開)と考えると理解しやすいです。
IDOとは「Initial DEX Offering」の略で、DEX(分散型取引所)に上場することです。
なお、IDOもICOと同様、上場前に暗号通貨を事前に安く購入できます。
ICOとIDOの違いはDEXを通すか通さないかです。
ICOはDEXを通さず、暗号通貨の発行者と投資家が直接取引しますが、IDOは発行者と投資家の間にDEXが入ります。
なお、間にCEX(中央集権型取引所)が入る場合、IEO(Initial Exchange Offering)と言います。
なぜ、ICOとIDOがラグプルの温床なのかというと、審査が無いからです。
そのため、ICOとIDOは運営者がラグプルしやすい環境であります。
なお、現在では資金を持ち逃げするようなラグプルは少なくなり、購入しても売却できないといった、詐欺を目的としたスマートコントラクトをあらかじめ組み込むなど、複雑になっています。
2種類のラグプル:ハードラグプルとソフトラグプル
ラグプルにはハードラグプルとソフトラグプルの2種類があります。
ICO、IDOに参加する時はラグプルに気を付けよう!
ハードラグプル
ハードラグプルとは、暗号通貨のスマートコントラクトに詐欺的な機能を組み込んで、投資家を騙す手口です。
いわゆる、詐欺コインです。
ソリダス・ラブズの統計によると、2022年1月1日から12月1日までに詐欺コインが117,629件発行されました。
詐欺コインの代表的な手口に、購入しても売却できないハニーポット(Honey Pot)、DEXの流動性プールから出金できないLiquidity Pool Blocksなどがあります。
中でも、ハニーポットが多く、98,442件のコントラクトが検出されました。
ハードラグプルには詐欺コインの他、資金の持ち逃げ、流動性プールの窃盗などもあります。
- 調達資金の持ち逃げ
- 流動性プールの窃盗
- 詐欺コイン
- 高額の取引手数料の請求
- NFTのダブルの作成
- 複製したNFTの販売
- ウォレット上のトークンを勝手に転送
- トークンの保有残高の改ざん
- などなど
要するに、ハードラグプルは最初から騙すことを目的とした詐欺です。
ソフトラグプル
ソフトラグプルとは、発行者が得をする形で暗号通貨を現金化する手口です。
例えば、市場操作で価格を吊り上げて、高騰したところを運営者が売り抜くなどです。
すると、暗号通貨の価格は暴落するため、投資家は損をし、結果的に騙されたことになります。
ソフトラグプルは最初から不正を行う目的があったかどうかわからず、法的にもグレーゾーンであるため、犯罪行為として取り締まることが難しいです。
ラグプルされた暗号通貨3選
ここ数年、多くのラグプルが起きました。
その中で。代表的な事件を3つ紹介します。
ラグプルに遭わないためにも、過去の事件から学びましょう。
イカゲームコイン(SQUID)
イカゲームコインとは、韓国の人気サバイバルドラマ『イカゲーム』に便乗して作られた暗号通貨です。
なお、イカゲームの制作者は「イカゲームとイカゲームコインとは無関係である」とコメントしています。
イカゲームコインは2021年11月に開催されるイカゲームを模したオンラインゲームのトーナメントで使用できるトークンとして2021年10月26日にDEXで売り出されました。
イカゲームコインは公開前に2回の事前販売がありましたが、ドラマ『イカゲーム』の人気を受けて、事前販売は販売後一瞬で完売という凄まじい売れ行きでした。
そして、イカゲームコインは公開後、1週間で約30万倍という驚異の爆上げを記録し、一時は2861ドル以上(約32万円)まで上がりました。
しかし、2021年11月1日、たった5分で価格が約0円(0.00067ドル)まで暴落し、時価総額60億ドル(約6800億円)が5分で蒸発しました。
5分で0円まで爆下げしたのは、イカゲームコインの開発者がラグプルしたのが原因です。
イカゲームコインのラグプルの被害額は210万ドル(約2億4000万円)と言われています。
なお、犯人は捕まっていません。
イカゲームコインには、イカゲームと全く関係ない、ホワイトペーパーやホームページにスペルミスが多いなど、怪しい兆候がありました。
流行に敏感な人は注意が必要かも…
Dragoma(DMA)
Dragoma(ドラゴマ)はブロックチェーンPolygon(ポリゴン)初のWeb3ゲームとして登場しました。
Dragomaはドラゴンを育成するM2Eゲームとして、インフルエンサーを中心に宣伝されました。
M2EとはMove to Earnの略で、日本語に訳すと「動いて稼ぐ」となります。
M2Eは歩いたり運動したりすると暗号通貨を貰える仕組みです。
そのため、M2Eは健康と結びついて、人気があります。
M2Eの代表的なゲームにSTEPN(ステップン)があります。
DragomaのネイティブトークンDMAは2022年8月7日に暗号通貨取引所MEXC Globalに上場されました。
そして、その翌日の8月8日、運営者が大量のDMAを売却し、ラグプルが起こり、価格が99%暴落しました。
(日付は1日経っていますが、実際には上場から数時間しか経っていません。)
ブロックチェーン分析企業PeckShieldによると、Dragomaの被害総額は350万ドル(約4.7億円)です。
Dragomaは報酬が1日12.5MATIC(約1400円)と高額であり、報酬が高過ぎるという疑わしい兆候がありました。
良い話には裏があります
暗号通貨取引所Thodex(トデックス)
Thodexはトルコの暗号通貨取引所です。
2017年に設立され、ユーザー数は39万人です。
Thodexは2021年4月、突如取引停止となりました。
当初は、「外部からの出資のため、5営業日取引所を停止する」というアナウンスがありました。
しかし、5営業日以上経っても取引所は再開されず、サイトにはアクセスできなくなりました…。
そして、ThodexのCEOファルク・ファティ・オゼル(Faruk Fatih Ozer)氏が顧客資産20億ドル(約2800億円)を持って国外に逃亡したことがわかりました。
Thodexのラグプルが起きてすぐに、関係者約77人が逮捕されましたが、CEOのファルク・ファティ・オゼル氏は捕まりませんでした。
ファルク・ファティ・オゼル氏は国際刑事警察機構(インターポール、Interpol)に指名手配され、2022年8月、ファルク・ファティ・オゼル氏はアルバニアで逮捕されました。
Thodexのラグプルは2021年で最も被害が大きく、2021年のラグプルの被害総額の90%を占めるほどでした。
なお、先に触れた2021年に起きた上位15件のラグプルのうちCEXの1件というのがThodexです。
ライセンス登録の無い海外の取引所よりも規制がしっかりしている国内取引所を選びましょう。
ラグプルでされる人の3つの特徴
このような人はラグプルされやすいので気を付けましょう。
1.欲が深い
大金が欲しい!
楽してお金を儲けたい!
欲に目がくらむと、怪しい所が見えなくなり、騙されやすくなります。
なぜなら、確証バイアスが働くからです。
確証バイアスとは、自分の思い込みや先入観などを肯定する情報ばかりを集めて、確信を深める心理傾向です。
その結果、非合理的な判断をしてしまいます。
例えば、「暗号通貨は稼げる」という思い込みがあると、無意識のうちに暗号通貨は稼げるという情報ばかり集めてしまい、デメリットやリスクなど不利な情報を集めようとしなくなります(または気づかなくなります)。
欲に目がくらむと、「お金」や「儲かる」という確証バイアスが働いてしまい、怪しい所やリスクなど大事な情報を見落としてしまいます。
2.「自分だけは騙されない」と思っている
自分だけは騙されない!
こう考えている人は自分が思っている以上に騙されやすいです。
実際に、詐欺の被害者は皆、口を揃えて「自分だけは騙されるとは思わなかった…」と言います。
なぜ、「自分だけは大丈夫」と思っている人ほど騙されるのかというと、警戒心が薄れているからです。
なお、「自分だけは騙されない」と思っている人は、ラグプルだけではなく、ロマンス詐欺やネットワークビジネスにも騙される傾向にあるので、注意しましょう。
3.自分で調べない
インターネットは情報で溢れかえっています。
現代人が受け取る情報は平安時代の一生分、江戸時代の一年分と言われています。
情報を調べるのに時間と労力がかかってしまいます。
また、SNSなど情報を発信する人が多く、多くの人が情報を受け取るのに慣れています。
その結果、自分で調べない人が続出しています。
自分で調べない人は相手の話を鵜呑みにしてしまうため、簡単に騙されてしまいます。
これらの3つの特徴のどれかに当てはまる人は要注意です。
ラグプルの対策
ラグプルは件数が増加しており、年々手が込んで、手口も多様化しているため、騙されやすいです。
そんなラグプルの一番の対策はDYORです。
DYORとはDo Your Own Researchの略で、「自分で調べろ」という意味です。
DYORは暗号通貨界隈では「ググれカス」の代わりによく使われます。
DYORって言われても、何を調べて良いかわからない…
そんな人のために、DYORすべき情報とラグプルかどうかを見分けるポイントを紹介します。
- 暗号通貨、プロジェクトの検索
- 公式サイト、ホワイトペーパー、ロードマップ
- 宣伝
- 報酬
- 運営者のトークン保有率とロックアップ期間
それぞれ、見ていきましょう。
1.暗号通貨、プロジェクトの検索
まずは暗号通貨名やプロジェクト名を検索して、評判や口コミを調べましょう。
もしかしたら、悪い評判や被害報告があるかもしれません。
2.公式サイト、ホワイトペーパー、ロードマップなどの情報
公式サイト、ホワイトペーパー、ロードマップに怪しいところはないか、徹底的に調べましょう。
例えば、イカゲームコインではホワイトペーパーやホームページにスペルミスが多くありました。
また、実現不可能なロードマップを提示している場合がよくあります。
ホワイトペーパーでは運営者の情報やパートナーや出資先も確認しましょう。
運営者の情報は過去の実績をチェックし、パートナーや出資先は有名なベンチャーキャピタル(VC)があるかチェックしましょう。
例えば、Dragomaと同じM2Eの代表格のSTEPNはアシックスとコラボし、さらにSequoia Capital(セコイア・キャピタル)やDeFi Allianceといった有名な大手VCが出資ています。
3.宣伝
ラグプルされる暗号通貨やプロジェクトは過剰な宣伝が行われています。
なぜなら、価格を吊り上げるためです。
(価格が高くなるほど、詐欺師の利益は大きくなります。)
宣伝には有名人やインフルエンサーを使われるケースがよくあります。
Dragomaでは多くのインフルエンサーを巻き込んで大々的に宣伝した。
「有名人やインフルエンサーが紹介しているから」と鵜呑みにせず、DYORしましょう。
4.報酬
ラグプルされる暗号通貨は報酬が高額である場合が多いです。
報酬が多いとたくさんの人が購入し、価格が上昇するからです。
Dragomaは1日12.5MATIC(約1400円)という高額の報酬でした。
例えば、STEPNの報酬はDragoma上場当時のレートで1日当たり約45円だったので、あり得ないほど高額であることがわかります。
なお、ラグプルに限らず、報酬の高い投資案件はハイプ(HYIP)案件と呼ばれる詐欺の可能性が高いです。
ハイプ案件とは、High Yield Investvent Program(高利回り案件)の略です。
特に暗号通貨では価格が急騰して、多くの億り人が生まれした。
そのため、普通ではあり得ない高利回りのハイプ案件でも「暗号通貨ならあり得る」と怪しまれないため、多くの人がハイプ案件に引っ掛かってしまいます。
同じ分野の他のプロジェクトと比較して、報酬が高過ぎないかチェックしましょう。
そして、高過ぎたら、ハイプ案件を疑って、避けましょう。
5.運営者のトークン保有率とロックアップ期間
通常、運営者の一定量のトークンを保有します。
しかし、ラグプルされる暗号通貨は、運営者が保有するトークンの割合が多いです。
なぜなら、市場に出回るトークンの量が少なくなるため、価格が上がりやすく(価格操作しやすい)、そして運営側がタイミングを見て一気に売り抜けられる(ラグプルできる)からです。
トークン保有率は各プロジェクトのホワイトペーパーのトークン配分で確認できます。
もしも運営者がトークン保有率が50%以上だったら、注意しましょう。
また、ホワイトペーパーにトークン配分の記載がない場合も注意しましょう。
トークン保有率と一緒にチェックしたいのが、ロックアップ期間です。
ロックアップ期間中は運営者や初期支援者はトークンを売ることができません。
逆に言うと、ロックアップ期間がトークンを絶対売らずに、プロジェクトを軌道に乗せるまで頑張るという運営者のコミットメントの表れと言えます。
なので、ロックアップ期間が長いほど、運営者の本気度が高いと言えます。
逆にロックアップ期間が短い(またはロックアップされない)場合、売り抜ける気マンマンとも取れます。
ホワイトペーパーにロックアップ期間の記載がない場合、注意しましょう。
まとめ
ラグプルはプロジェクトの運営者が調達資金を持ち逃げする暗号通貨詐欺で、現在急増中です。
特にICO、IEOで多いです。
欲が深く、自分では調べず、自分だけは大丈夫と思っている人がラグプルの餌食になりやすいです。
ラグプルの手口は年々巧妙になっているので、見分けるのが難しくなっています。
基本な対策はDYORです。
ラグプルに騙されない、過去の事件の手口を学び、話を鵜呑みにせず、DYORしましょう。
コメント コメント 0