FXの相関関係を利用して優位性の高いトレードができるのでしょうか?
2つの要素の関連性を調べるときに使われる相関関係ですが、各国の通貨が影響し合って値動きが生まれるFXにおいて何かしら有効活用できそうですね。
- FXにおける相関関係は何に注目して考えるのか
- 通貨ペアの相関関係を簡単に把握する方法
- 相関関係をトレードに活かす方法と注意点
本記事ではFXにおける相関関係の基本から分かりやすく解説し、トレードに活用する方法や注意点などもまとめています。通貨ペアの選択や値動きの把握に役立ちますので、ぜひ参考にしてください。
FXの相関関係とは
FXの相関関係とは、ある通貨が他の通貨に影響を与える関係のことです。
両方が同じ方向に動くときは「正の相関」と言い、逆に動くときは「負の相関」または逆相関と言います。
ことさらFXトレードにおいては、通貨ペアの相関関係に注目します。
1つの通貨に着目していないことに注意して下さい。
たとえば、通常ユーロ円とポンド円は同じ方向に動きやすいので「正の相関がある」と表現されます。
イギリスは2020年12月にEU離脱が完了したものの、両者は地理的に近く強い経済関係が保たれているので、ユーロ(EUR)とポンド(GBP)の値動きの方向性が似るのはもっともなことです。
このように、FXトレードでは通貨ペアで相関関係を言い表すことが通例となっています。
通貨ペアの相関係数とは
FXの通貨ペアの相関係数とは、2つの通貨ペアの値動きが似ているか否かを表した数値です。
-1から1の範囲で示され、1に近いほど2つの通貨ペアが似た値動きをし、-1に近いほど2つの通貨ペアが逆の値動きになることを意味します。
FX通貨ペアの相関関係を一覧表で確認
ここからはFX通貨ペアの相関関係がひと目でわかるように相関係数で確認していきましょう。
クロス円の相関関係 一覧表【主要通貨ペア】
まずはクロス円の主要通貨ペアにおける相関関係を一覧表で確認します。
通貨ペア | USD/JPY | EUR/JPY | GBP/JPY | AUD/JPY |
---|---|---|---|---|
USD/JPY | 1.00 | 0.85 | 0.87 | 0.92 |
EUR/JPY | – | 1.00 | 0.92 | 0.89 |
GBP/JPY | – | – | 1.00 | 0.92 |
AUD/JPY | – | – | – | 1.00 |
表の各数値が相関係数です。見方の例として、USD/JPYとEUR/JPYの相関係数が0.85と1に近いことから、USD/JPYが上昇するとEUR/JPYも上昇しやすいことを示しています。
続いてEUR/JPYとGBP/JPYを見ると、相関係数が0.92であることから、USD/JPYとEUR/JPYよりもさらに近い値動きになることが分かります。
このように、FXトレードで実際に使用する際には他通貨ペアとの関係において相対的にどうなのか?という視点で参考にしていくことが大切です。
ドルストレートの相関関係 一覧表【主要通貨ペア】
続いてはドルストレートの主要通貨ペアにおける相関関係を一覧表で確認します。
通貨ペア | USD/JPY | EUR/USD | GBP/USD | AUD/USD |
---|---|---|---|---|
USD/JPY | 1.00 | -0.92 | -0.89 | -0.12 |
EUR/USD | – | 1.00 | 0.94 | 0.30 |
GBP/USD | – | – | 1.00 | 0.38 |
AUD/USD | – | – | – | 1.00 |
表の各数値は相関係数です。見方の例として、USD/JPYとEUR/USDの相関係数が-0.92と-1に近いことから、USD/JPYが上昇するとEUR/USDは下落しやすいことを示しています。
クロス円の相関関係と同じく、FXトレードで参考にする際には他の通貨ペアとくらべて相対的にどうなのかという視点で調べるようにしましょう。
他通貨ペアとの値動きの関係性を知るために活用することが大切ですね
FX相関関係の一覧表からトレード対象を考える
FX相関関係の一覧表からトレード対象をどのように決めていったら良いのでしょうか?
実際にはチャートと相関係数の両方を確認しながら次のように考えます。
ドル円とユーロ円の相関関係が比較的強いから、欧州時間は値動きが大きくなりやすいユーロ円でトレードしよう。
ドル円とユーロドルの相関関係が比較的弱いから、同時に逆のポジションをもたないようにしよう。
前者は相関関係の強さから2つの通貨ペアが似た値動きをすることを想定し、その上で値幅の出るユーロ円で収益率を高めることを目的にしています。
後者は相関関係の弱さから2つの通貨ペアが逆の値動きをすることを想定し、同時に損失を抱えないトレードを心がけようとしています。
これほど単純にFXの相関関係を相場に適用できるわけではないですが、基本の使い方として各通貨ペアの値動きの関係性を把握するために活用することができます。
FX通貨ペアの相関関係をチャートで確認
続いては、ひと目でFX通貨ペアの相関関係が分かるように合成チャートで確認してみましょう。
ドル円とユーロ円の日足合成チャート
まずはドル円とユーロ円(2021年12月1日~2022年5月17日)の相関関係を日足の合成チャートで見ていきます。
2022年3月7日以降は似た値動きをしているものの、2月10日から3月7日にかけては逆の値動きをして負の相関(逆相関)になっていますね。
当時はロシア・ウクライナ情勢で緊張感が漂う中、ロシア・プーチン大統領の「ドンバスで起こっていることはまさに大量虐殺である」との発言が影響し、地政学的リスクの高いユーロ(EUR)売りが先行しました。
さらにファンダメンタルズ的には、アメリカの米国金利引き上げにともないドル(USD)が買われやすい下地も整っています。
FXの相関関係が高い通貨ペアであっても、有事の際には乖離することがある事例となりました。
ドル円とユーロドルの日足合成チャート
もう一つ、ドル円とユーロドルの相関関係を日足の合成チャートで見ていきます。
ドル円とユーロドルは負の相関(逆相関)にあることを先に解説しましたが、合成チャートにすると一目瞭然ですね。
FXで相関関係を活かしたトレード手法
ここからはFXで勝つための相関関係を活かしたトレード手法をご紹介します。
各通貨ペアの値動きの強弱感を把握するだけに終わらせず、勝つFXトレードをするために何をすべきかを考えていきましょう。
相関関係が強い通貨ペアを比較してトレード精度を高める
1つ目は、相関関係の強い通貨ペアを比較してボラティリティが高まる初動を狙うトレードです。
一例として、各チャートが近接して値動きの強弱感を捉えやすいユーロ円とポンド円の日足で説明します。
例えばポンド円でロングを考えていたら、一度ユーロ円のチャートを見て上昇する兆しがあるかを確認できたら、ポンド円のエントリー精度を高めることに役立ちます。
また、過去からの値動きをなぞってみるとボラティリティが高まる初動に時差が生まれていることが分かります。
それゆえ、先に一方が上昇した際には、後ほどもう一方が上昇することを想定してロングを仕込むこともできるでしょう。
つまり、トレードを予定している通貨ペアと相関関係が強い通貨ペアの値動きを照らし合わせることで、テクニカル分析の精度を高めることができます。
ただし、FXの相関関係は先述のドル円とユーロ円のように相場環境によって変化するので、あくまで全体感を把握するために使用することが基本になります。
逆の相関関係が強い通貨ペアを保有してスワップで稼ぐ
ヘッジファンドが使う手法として、逆の相関関係が強い通貨ペアを保有してスワップで稼ぐ方法があります。
負の相関(逆相関)にあるドル円とユーロドルの日足合成チャートを見ていきます。
このように負の相関(逆相関)にある2つの通貨ペアを両方保有すると、一方が上昇すればもう一方は下落し、利益や損失を相殺します。
この間にもインカムゲインであるスワップポイントは受け取れるので、負の相関(逆相関)が綺麗に保たれるほどスワップで稼ぐ方法は有効に機能し続けます。
ヘッジファンドはFX市場で巨額の資金を動かすことから、スワップポイントでも十分に利益を出せる有力な手法です。
FXの相関関係を活かしたトレードの注意点
先にドル円とユーロ円の相関性の崩れをご覧いただいたとおり、FXの相関関係を鵜呑みにしたトレードにはリスクがあります。こちらではFXの相関関係を生かしたトレードの注意点を2つ取り上げました。
トレード時間軸によってチャートの様子が変わる
上述では通貨ペアの相関関係を日足で見てきましたが、4時間足以下の短い時間足にすることで随分と印象が変わることも多いです。
つまりデイトレーダーとスイングトレーダーが同じ通貨ペアを追っていても、相関関係の捉え方が全く異なることさえあります。
ですのでFXの相関関係をトレードに活用する際には、トレードを執行する時間足と相関関係を調べている時間足が合致していることを確認してください。
相関関係が崩れることを前提にする
国際的に政治・経済が密接に関係するグローバル社会おいて、FX通貨ペアの関係性も変化していきます。後ほど紹介する米ドルとゴールドの負の相関の崩れは代表例です。
それゆえ、FXの相関関係は相対的なものであり、時には例外が起こりうることを念頭におきながら値動きの全体感を把握することが大切です。
FXトレーダーであれば、通貨ペアの相関性以上にトレード手法の相関性に着目することが、相場で稼ぎ続けるために必要な観点かもしれませんね。
FX通貨ペアの相関関係を表示するインジケーターを紹介
MT4・MT5などFXチャートを表示するプラットフォームごとに、通貨ペアの相関関係がわかるインジケーターが搭載されています。どれも使い方が似ているので、見方の例として一つだけご紹介します。
各プラットフォームで相関を意味する「correlation」で検索すると、複数のインジケーターが選べるでしょう。そられを使用すると、サブウィンドウに右軸の値が相関係数のチャートが表示されます。数値の見方は次の通りです。
1:強い正の相関
0:相関なし
-1:強い負の相関
上のチャートのサブウィンドウはドル円とユーロドルの相関性を示しています。相関係数は-0.8264(2022年5月19日時点)なので、チャートの通り強い負の相関に近いことが分かります。
FXとゴールドの相関関係
相場において有事の際にゴールド(金)が買われることは広く知られています。それではFXとゴールドの相関関係はどうなっているでしょうか。
一般的にドルとゴールドは負の相関、ユーロとゴールドは正の相関にあると言われています。こちらでは世界の基軸通貨であるドルに着目し、ゴールドとの関係性について簡単に解説します。
米ドルとゴールドの相関関係について
従来は米ドルが上昇すればゴールドが値下がりし、逆もまた然りで米ドルとゴールドは負の相関(逆相関)にありました。
ゴールドも世界の基軸通貨的役割があり、宝飾品以外にも電子機器などの材料としても価値のある貴金属であることから、実物としての価値が認められています。
それゆえFXや株式市場が不安定化したときには、世界で価値が認められているゴールドに両市場から逃げ出した資金が向かいやすく、リスク回避の際にゴールドは買われやすい傾向にあります。
コロナショック(2020年2月以降)のように、あらゆる金融商品を現金に換える例外的なリスク回避姿勢を除けば、米ドルとゴールドは負の相関(逆相関)を保っています。
相関関係は崩れる | ドル円とゴールドの価格推移
ところが2021年10月以降、負の相関(逆相関)であったはずの米ドルとゴールドが正の相関に変わりました。米金利の上昇にともない、ゴールドの価格も上昇するようになったのです。
市場からはインフレによる影響との見方が強く、ゴールドの物としての価値が見直されているようです。類似する例としては1970年代後半に起こったオイルショックで、当時もFRB(米連邦準備理事会)はインフレ対策として高金利政策を実施、現在のように米ドルとゴールドが正の相関を見せました。
ここで、ドル円とゴールド先物(2020年3月~2022年5月中旬)の相関関係を週足で見てみましょう。
アメリカと異なり日本銀行が金融政策を変えられない状況なので、米ドル単独とゴールドの相関関係とほとんど変わりませんね。直近は負の相関になっていますが、上述の2021年10月以降の値動きは、「相関関係は崩れることを前提にする」事例です。オイルショックから50年の時を経て、当時の値動きを再現しているようにも見えます。
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FX相関関係のまとめ
ここまでFXの相関関係の概要から始まり、通貨ペアの相関関係を相関係数とチャートで確認しました。そしてトレードで利用する際の注意点や、歴史ある米国ドルとゴールドの相関性についても解説しました。
本記事を3つにまとめると
- 相関関係とはある通貨が他の通貨に影響を与える関係でありFXでは通貨ペアの関係性に利用する
- FXの相関関係は合成チャートにすることで通貨ペアの相関性を簡単に知ることができる
- FXの相関関係は崩れることを前提として全体の値動きを把握する程度に活用することが望ましい
この記事では相関関係について、主にFX通貨ペアとの関係性についてご紹介しました。トレードにおいてはテクニカル分析を補足する程度が丁度よいと言えそうです。
相関関係を活用してトレンド形成につながる値動きをいち早く察知するなど、みなさんのトレードに少しでもお役に立てば幸いです。
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