FXに限らず、株式でも仮想通貨でも、突然ローソク足が上下に激しくに突き抜けることがあります。一体何が起きたのかと、減り続ける残高を目の当たりに恐ろしい思いをしたトレーダーは少なくないでしょう。
短時間で価格が暴落・高騰することは、フラッシュクラッシュといって、危険な局面でもあれば絶好の稼ぎ時として有名です。
暴落!したかと思えば、また価格が高騰!
安易に飛び乗ると、一瞬で口座残高がゼロになったりします。しかし、一方ではフラッシュクラッシュを狙って稼ぐトレーダーもいるのです。
今回は、フラッシュクラッシュとは何なのか、なぜ起きるのか、過去の代表的なフラッシュクラッシュの例を挙げながら注意点や稼ぐコツなどを解説していきます。ぜひ最後までお付き合い下さい。
- フラッシュクラッシュとは?
- フラッシュクラッシュが起きる理由
- よくあるフラッシュクラッシュのパターン
- フラッシュクラッシュの危険性と利点
- フラッシュクラッシュの注意点と稼ぎ方
フラッシュクラッシュとは?
フラッシュクラッシュって何?
フラッシュクラッシュとは、価格が瞬間的に暴落した後で、高騰して元に戻ることをいいます。
フラッシュクラッシュのイメージ
Investopediaによると、
~withdrawal orders rapidly amplify price declines before quickly recovering
~that can happen over a few minutes
~but by the end of the day, as if the flash clash never happened.
引用元:Flash Clash – Investopedia
~急激な売り注文によって下げが拡大して、すぐに回復すること
~数分程度で生じることがある ~1日の終わりには何事もなかったかのように収まる
というように定義してあります。
例えば、下がり続ける価格に「これはもっと下がり続けるかもしれない」と多額の損切をした後で、見る見るうちに価格が戻り、無駄な大損で終わるなどありがちなパターンです。本当に悔しい思いをしがちな局面です。
ローソク足で見るフラッシュクラッシュ
ローソク足で見るフラッシュクラッシュには上図のようなものがあります。下に長く伸びるラインで価格を押し上げるハンマー、ドラゴンフライが出現です。ローソク足がどこまでも下がりきったタイミングで、エントリーするやり手のトレーダーもいます。
基本的には、「価格が暴落して」「価格が元にもどる」現象をフラッシュクラッシュといいますが、時には急激な暴落そのものをフラッシュクラッシュと呼ぶこともあります。
過去の代表的なフラッシュクラッシュ
では、過去の代表的なフラッシュクラッシュをいくつか見てみましょう。
2010年5月6日 NYダウ フラッシュクラッシュ!
2010年5月6日のフラッシュクラッシュにて、NYダウは数分で700ポイント暴落、1000ポイントの安値をつけました。サーキットブレーカーが発働、暴落から1時間30分後には回復に向かいます。
たった1人のトレーダーの取引、約4兆ドル(450兆円)の売りがフラッシュクラッシュの引き金になったとのことです。
参照:Single trade helped spark May's flash crash
2019年1月3日 アップルショック!
2019年1月3日、前日にAppleが業績を下方修正したことで、フラッシュクラッシュで金融市場がオープンしました。
対ドルで円は109.50から104円台まで上昇。6分間でUSDJPYは3.5円暴落、3時間で5.0円程度下げています。同時に豪ドル、トルコリラが対ドルで暴落しています。数時間後にドルは回復、豪ドル、トルコリラも高騰しました。
参照:US Stocks – Wall Street rattled by Apple's sales – Reuters
2021年10月21日 BITCOIN 87%暴落!
フラッシュクラッシュといえば、仮想通貨が凄まじいです。2021年10月にBINANCE.USの取引所にて、BTCUSDは$65,760の高値から約1分で$8,200まで瞬間的に87%も暴落しました。すぐに価格は元に戻り、アルゴリズムトレードのシステムにバグが原因だったと判明しています。
参照:Bitcoin Appears to Crash 87% – Coindesk
フラッシュクラッシュが起きる理由
フラッシュクラッシュが起きる理由は、状況によって様々ですが、一般的に考えられている理由をいくつかご紹介します。
理由1 アルゴリズムトレードの影響
フラッシュクラッシュが起きる第一の原因といわれているのが、アルゴリズムトレードの影響です。厳密にいうと、ヘッジファンドなどの大手機関が設定しているアルゴリズムトレードです。超高速システムにて秒・分単位の注文が大量に発生することから、フラッシュクラッシュが起きやすくなると指摘されています。
アルゴリズムトレードとは? AIのデータ解析を基盤にした自動売買のことです。
JPモルガンは、2018年に、急進化したアルゴリズムトレードで、次にくるフラッシュクラッシュはかつて見たことがないほどに凄まじいだろう、と予見しています。
参照:Algorithmic Trading , the Flash Clash – Science Direct
参照:JP Morgan warns next crisis to have flash clashes
理由2 スプレッドが広がりすぎた
また、スプレッドの拡大が、フラッシュクラッシュを引き起こす場合があります。
スプレッドが広がる理由は以下の2つです。
- 取引量が極端に少ない → 流動性に乏しい
- 取引量が多すぎる → 流動性が激しすぎる
取引量が少ないと、流動性がないためスプレッドが拡大しやすくなります。買い手・売り手がいないため、インターバンク市場の価格提示も緩慢です。わずか少数の取引であっても価格が上下にジャンプしてしまうのです。
取引量が多すぎてもスプレッド拡大につながります。注文の処理に時間がかかり、スリッページやリクオートで価格が一方向に伸びやすくなり、フラッシュクラッシュを加速させる結果となります。
理由3 戦略的な価格操作
時には、ヘッジファンドや中央銀行など、巨大な機関によって市場が操作されてフラッシュクラッシュが起きることもあります。兆単位・秒速と桁違いの注文で暴落や高騰を仕掛けます。日銀介入も大規模な価格操作の1つです。
兆単位で1つの注文が入れば当然ながら衝撃的な値動きが生じます。衝撃的な値動きに翻弄されたトレーダーが後に続き、フラッシュクラッシュが始まります。
理由4 ファットフィンガー現象
もう1つ、フラッシュクラッシュの原因といわれているのがファットフィンガー現象です。
ファットフィンガー現象(Fat-Finger-Mistake)とは、太い指がキーを押し間違える(隣のキーを合わせて打ってしまう)ことを指しています。
IG証券によると、ヘッジファンドなどの注文ミスからフラッシュクラッシュが引き起こることが報告されています。大手金融機関のマネージャーが、注文時に間違えて0を1つ多く付け足したりで、フラッシュクラッシュを引き起こしてしまうのです。
参照:Flash clashes explained – IG証券
理由5 経済指標発表への反応
ヘッジファンドなどの大量注文が出やすいタイミングが経済指標の発表です。発表後の混沌とした値動きの中、世界中のアルゴリズムトレードが一斉に稼働して、売買を誘発します。
誘発された世界中のトレーダー達は、狂ったように上に下にと伸びるローソク足を見て、つい飛び乗ってしまうものです。そこからフラッシュクラッシュが加速していきます。しばらくすると短期筋の利確が入り始めて、今度は反対方向へと価格が戻るわけです。
理由6 重大なニュース・発言・イベントの影響
そして、フラッシュクラッシュの背景には、何らかのニュースが関係していることが多くなります。
まったく予想外に不意打ちで報道されるニュースは、大型フラッシュクラッシュの起爆剤となり得ます。心の準備ができていないがゆえ、「パニック売り」や「パニック買い」を引き起こしやすいのです。
フラッシュクラッシュの理由は解明できる場合が多い
フラッシュクラッシュは一見何の理由もなく、突然出現するかのようなイメージがありますが、大抵は何らかの理由があります。
Twitterやニュースメディアの情報を調べることで、「これか!」と思える理由が探せるはずです。
理由次第で、様子を見たり、損切・利確したりと判断材料になるでしょう。
よくあるフラッシュクラッシュのパターン
歴史的なフラッシュクラッシュとは別で、小さなミニ・フラッシュクラッシュは日常的に頻繁に出現しています。
ここでは、日常でよくあるミニ・フラッシュクラッシュのパターンを3つぐらい見ておきましょう。
東京・月曜早朝のフラッシュクラッシュ
トルコリラは取引量が少ないため、スプレッドが広がりやすい通貨です。上図チャートは6月のFOMC政策金利発表前後のもので、30分単位のミニ・フラッシュクラッシュが連続しています。土曜日早朝は5.75まで急落した後、月曜早朝には6.90あたりまでジャンプしています。
経済指標の発表前後のフラッシュクラッシュ
2023年6月13日、米CPIは前月比で0.1%で予想0.2%を下回ったものの、CoreCPIが予想を上回ったため、USDJPYは上下激しい展開となりました。75分で1.0円ほど急落した後、すぐに高騰して急激な上昇トレンドに向かっています。
突発的なニュースのフラッシュクラッシュ
6月6日、米SECがCoinbaseを提訴した報道にて、ETHUSDは90分で約100ドル近く急落しました。しかし、今回の仮想通貨起訴問題にて、Binance、Coinbaseを始めとする関連業者はかなり強気だったため翌日にはいったん価格が戻っています。
フラッシュクラッシュの危険性
さて、ここまで見てきたように、フラッシュクラッシュは暴落・高騰と激しい値動きを見せる恐ろしい現象です。無意味な損切や含み損の急拡大を引き起こします。
最悪の場合どうなるのかな・・・
ここではフラッシュクラッシュの危険性をズバリ指摘していきます。
危険性1.ロスカットのリスクが高まる
まず、フラッシュクラッシュの第一の危険性とは、ロスカットリスクが高まる点です。わずか数分、時には数秒たらずの一時的な値下がりで、ロスカットされる可能性があるのです。
とくに、含み損がもともと拡大している場合は、フラッシュクラッシュにて致命的な打撃を受けやすくなります。
危険性2.ロスカットが間に合わない可能性
これが、フラッシュクラッシュで最も恐るべき点です。
ご存じの方もいるように、国内のFX会社にはゼロカットという仕組みはありません。FX会社のシステムが間に合わなかった場合は、残高がマイナスとなる可能性があります。
危険性3.過去には借金を抱えたケースもある
もし、ロスカットが間に合わずにマイナス額が発生すれば、FX会社への借金(追証)となり返済しなければなりません。
FX史上に残る驚異的なフラッシュクラッシュでは、ロスカットが間に合わずに借金を抱えたトレーダーが続出しました。
ロスカット等未収金発生状況(2019年1月3日)
2019年のフラッシュクラッシュで、マイナス残高(ロスカット未収金)を出したトレーダーはトータルで6598人。総額約9億4,300万円が記録されています。トルコリラショックの時は総額12億円以上の未収金が発生しています。
ロスカット等未収金発生状況(月次)
そこまで大きなフラッシュクラッシュはないものの、2022年~2023年にかけて激しい値動きが続いています。2022年11月、2023年5月にはマイナス残高が発生していることがわかります。
フラッシュクラッシュの利点・メリット
確かにフラッシュクラッシュは危険です。しかし、フラッシュクラッシュの超高速ボラティリティを活かして稼ぐトレーダーもいます。
ここでは、フラッシュクラッシュの利点・メリットを挙げていきます。
利点1.短時間で大きく稼げる
フラッシュクラッシュは、上手く利用すれば短時間で大きく稼げるチャンスです。
暴落の波に乗ってショートでエントリー、あるいは下がりきった頃合いにロングを決めて高騰の波に乗れれば大儲けにつながります。
2015年のスイスフランショックでは、ゼロになる覚悟で5万円で売りから入り15分間で85万円稼いだ例や、ドル円ショートで3年分稼いだ、というトレーダーもいます。
利点2.利益へと反転することも
また、フラッシュクラッシュで、拡大していた含み損が見る見るうちに利益へと反転することもあります。含み損がプラスに反転した時点で利確しておくなど、フラッシュクラッシュが持ち高・ポジション調整に活用できます。
利益に変わらないととしても、最小限の損切で塩漬け状態から抜け出せるチャンスになるかもしれないのです。
利点3.ロスカットが回避できるケースも
フラッシュクラッシュ出現のおかげで、ロスカットに合うトレーダーもいれば、トレンドが急激に反転してロスカットが回避できた、というトレーダーもいます。
そろそろロスカットが危ない・・・と、そんな時にポジションと同じ方向にフラッシュクラッシュが生じた時は、まさに救いの神です。損切ルールを守らなかったことを深く反省して、晴れやかに再スタートを切りましょう。
フラッシュクラッシュの注意点・稼ぎ方
それでは、最後にフラッシュクラッシュで注意するポイント、稼ぐポイントをご紹介しておきます。
注意するポイント
フラッシュクラッシュがいつ起きても耐えられるよう、つねに証拠金維持率に余裕を持っておくことが大切です。理想は1000%以上。最低でも300%は維持できるトレードを心がけて下さい。
普段から、証拠金維持率・ポジションのリスクマネージメントを行っておけば、フラッシュクラッシュでも動揺せずに済みます。
また、一時的に落ち込む証拠金への対策として、緊急用の支援金をいくらか用意しておく方法もあります。トレードには使わない資金として、証拠金維持率が回復したら、また緊急用口座に戻して次の機会に利用できます。
稼ぐポイント
経済指標など、あらかじめ予定がわかっている場合は、早めのタイミングでポジションを保有、両建てしておくなどトレードの準備をしておきましょう。結果に応じて3つぐらいのシナリオを設定しておけば慌てずに済みます。
不意打ちのフラッシュクラッシュは、まず長引きそうかどうかのファクトチェックが必要。コロナウイルスや連続利上げの可能性など、インパクトを吟味した判断が欠かせません。
インパクトが強すぎる場合は、一方向のみにトレンドが加速するリスクがあります。
いずれの場合でも、短時間トレード(できれば数分程度)と早めの損切に徹すること。目まぐるしい、急落・高騰の流れの中で、ほんの一部の波に乗れればOKだと、欲を出さないことが成功のコツです。
まとめ
今回は、フラッシュクラッシュとは非常に危険な局面であると同時に、大きく稼ぐチャンスであることを見てきました。ここ1、2年はインフレ・利上げをめぐって相場は乱高下を繰り返しています。幸か不幸か大小さまざまなフラッシュクラッシュが起きやすい環境にあるのです。
せっかくの機会ですから、十分に注意しながら、フラッシュクラッシュでひと稼ぎ狙ってみてもいいでしょう。
ただし、一瞬で残高ゼロ・ロスカットとなるリスクがありますので、初心者の方は、避けておいた方が無難です。トレードに慣れている方でも、急落・高騰の理由がわからない時は絶対に波に飛び乗らないよう注意しましょう。
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