FXをはじめとする投資をやられている方であれば「ナンピン」という言葉を一度は耳にしたことがあるはずです。
実はFXではナンピンを最強の手法と呼ぶトレーダーも少なくありません。
はたしてFXでナンピンというのは本当に勝てる手法なのでしょうか?

ただ結論から先に申し上げますと、ナンピンは非常にリスクの高い手法になります。中には投資で絶対にやってはいけないことのひとつにナンピンをあげる人もいるくらいです。
ここではFXにおけるナンピンのやり方や注意点、具体的なトレード手法をプロが徹底解説していきます。
ナンピンの危険性ついても十分に解説していきますので、ぜひ最後まで読み進めていってください。
FXおけるナンピンとは
まずはFXにおけるナンピンとはいったいどういうものなのか、意味や具体例について詳しく解説していきます。
FXでのナンピン買いとは?意味を解説
ナンピンは含み損が発生しているケースで、平均取得単価を下げる(売りの場合は上げる)ために行うトレード手法です。
FXにおけるナンピン買いとは、保有する買いポジョションの価格が下がり含み損が出た際に「追加で買いを入れる」ことを指します。
FXのナンピン売りはその逆。保有する売りポジションの価格が上がり含み損が出た際に「追加で売りを入れる」ことになります。
簡単に言うと、100円の時に買ったドル円のポジョションが80円に下がり含み損が出た場合、ここでさらに追加の買いを入れて平均取得単価を90円にすることがナンピン買いになります。



なお、FXではナンピン買い・ナンピン売りとせず、まとめてナンピンとするのが一般的です。
FXナンピントレード具体例
FXのナンピントレードを図に表すと以下のようになります。




ナンピンすることによって、買いの場合ですと平均取得単価が下がり、売りの場合ですと平均取得単価が上がります。
そうすることにより、その後当初の思惑通りの方向に価格が推移した際にはより大きな利益を狙うことが可能です。


上の場合ですと、最初に100円で買ったポジョションが80円まで下落したところでナンピンすることによって、平均取得単価が90円になるわけです。
つまり、価格が90円まで戻ってきた時点でプラスマイナスゼロになり、損益分岐点が下がったことになります。
そこから更に価格が上昇すれば、当初100円で買っていた場合よりも大きな利益が望めるということです。
このようにナンピンには、含み損が出た際に損失を平均化して利益を得やすくする目的があります。
FXでナンピンをした場合の平均取得単価計算方法
FXでナンピンをした際に大切なのは、平均取得単価をしっかり把握しておくことです。
計算方法はとても簡単。FXのナンピンの平均取得単価は計算機があればすぐに求めることができます。
例えば、ドル円を100円で1ロット買い、90円・80円でそれぞれ1ロットずつナンピンしたとしましょう。


平均取得単価を求める式は次のようになります。
平均取得単価={(価格×取得枚数)+(価格×取得枚数)+(価格×取得枚数)}÷合計取得枚数
{(100円×1ロット)+(90円×1ロット)+(80円×1ロット)}÷3ロット=90円
このように、平均取得単価は90円という値が求められます。
FXのナンピンの逆?ピラミッティングとの違いを解説
FXではナンピンと似た手法に「ピラミッティング」というものがあります。
ナンピンとピラミッティングは似ている部分がありますので混同しがちですが、FXのナンピンとピラミッティングは全く違う性質の手法です。
一番の違いは、ナンピンは「含み損」が出た場合に行う手法であるのに対し、ピラミッティングは「含み益」が出た場合に行う手法になります。
ピラミッティングとは、保有するポジョションが想定どおりの動きをして含み益が増していくにつれ、ポジションを徐々に追加してさらに大きな利益を狙う手法です。


ロットを減らしながらポジションを追加していくのが一般的なやり方で、積み上がっていくポジションがピラミッドのようになることからピラミッティングと呼ばれています。


このように、ナンピンとピラミッティングはポジョションを積み増すという意味では同じですが、トレード自体の意味合いは全く違うものです。
つまり、FXではナンピンの逆の性質を持つ手法がピラミッティングということになります。
FXでのナンピンの危険性
FXでナンピンは最強の手法であるという声をブログや2ch界隈で度々見かけることがあります。
しかし、実際のナンピンはとてもリスクの高いトレード手法です。
ここからはそんなナンピンの危険性について詳しく解説していきます。
FXでのナンピンは失敗した場合のリスクが大きい
FXのナンピンは損切りをせずにポジションを積み上げていく手法です。
この「損切りをしない」というのはFXにおいては大きなリスクと言っていいでしょう。
仮に思惑以上に値動きが逆行し、ナンピンが失敗した場合には相当な損失を被ることになります。
ポジションを追加で積み上げることをせず、損切りを選べばはるかに損失が少なくて済んだということが起こり得るわけです。
たしかにナンピンが上手く行けば大きな利益を狙うことができます。
しかし、もし失敗した場合には損失が雪だるま式に膨らむということだけは忘れないようにしましょう。
ある程度の資金が必要
FXのナンピンでは、含み損に耐えつつ追加のポジションを取る形になりますので、より多くの証拠金が必要になります。
「含み損に耐える分」+「追加ポジション分」
つまりナンピンを行うからには、ある程度の資金をリスクにさらさないといけないということです。
もし含み損が膨らみ、必要証拠金が追いつかなくなれば強制ロスカットになってしまいます。
追加でポジションを取って間もなく強制ロスカットになってしまっては、ナンピンをする意味がありません。
したがってナンピンをトレードに取り入れようとするなら、十分な資金を用意しなくてはいけないということになります。
メンタルに負荷がかかる
FXでトレード経験のある方であればおわかりいただけるかと思いますが、含み損を抱えるというのは気持ちの良いものではありません。
特に含み損を抱える時間が長ければ長いほど、不安や恐怖といった負の感情が沸き起こってきます。
その点ナンピンは含み損を抱えつつ、追加のポジションを建てるわけですから、メンタルにかかる負荷は相当なものです。
また、ポジションを追加する際のエントリーは全て逆張りになります。
値動きと逆行するエントリーも、普通のメンタルではなかなかできることではありません。
このようにメンタルに強烈な負荷がかかるのがFXでのナンピンという手法です。
FXではナンピンこそがトレーダーにとっての最強の必勝法!?メリットを検証
FXのナンピンには危険性はあるものの、トレーダーの中にはナンピンを推す声があるのも事実です。
そこでここからはFXにおけるナンピンのメリットについて見ていきます。
FXのナンピンで成功すると大きく勝つことが可能
FXにおいてナンピンの成功は大きな利益を意味します。
ナンピンは複数のポジションを持つことになるわけですから、当然それら全てが利益になれば単独でポジションを持つよりはるかに大きな利益を得ることが可能です。
含み損というマイナスを一転して大きなプラスに転じさせることができるのはナンピンの大きなメリットと言えます。
FXのナンピンは損切りを免れることができる
FXのトレードにおいて、ナンピンを選択することは損切りをしないという決断を下すことでもあります。
相場では時に「ノイズ」のような上下に振れる動きが起こるものです。
そのため、上昇なのか下落なのかの大きな流れの判断は合っているのに、相場のちょっとした値動きでストップに引っかかり損切りになってしまうことも出てきます。
しかし、ナンピンという手法をしっかり使いこなすことができればそのような余計な損切りはしなくて済むわけです。
ひとつのトレードが損切りで終わるのか、利益を出して終わるのかは大きな違い。
ナンピンは不必要な損切りを免れる役割を果たしてくれます。
FXのナンピンは資金管理次第で負けない手法になる
FXのナンピンで勝てるかどうかは資金管理次第です。
そもそも証拠金に余裕がないのにナンピンを仕掛けても強制ロスカットになるだけ。
損失をただ増やすだけの行為になってしまいます。
しかし、しっかりと含み損に耐えつつ新たなポジションを追加する資金のマネジメントができていれば損切りにあわずに済むわけですから、ナンピンは負けない手法になり得るということです。
FXでのナンピンのやり方・注意点
これまで見てきたように、FXのナンピンはメリットもありますが同時に危険性もある手法です。
結局のところ、FXのナンピンで勝てるかどうかはやり方次第になります。
ここからはナンピンのやり方について注意点とともに見ていきましょう。
FXナンピンのタイミングは戦略ありき
FXのナンピンは戦略があって初めて成り立ちます。
これまで見てきたようにナンピンというのは大きな利益を狙える反面、リスクをともなう手法です。
環境認識やトレードプラン、損切り・利確ポイントなど、しっかりした戦略がないまナンピンを行うと甚大な損失を被ることになってしまいます。



単に損切りしたくないからと、衝動的で突発的なタイミングでナンピンするようではダメだということです。
そもそも買い目線なのか売り目線なのか、長期保有なのか短期保有なのか、そういった戦略ありきでナンピンを行うようにしましょう。
大きなトレンドに逆らわない
ナンピンの成功確率を上げるには、大きな時間足のトレンドに逆らわないことです。
最初にエントリーしたポジションにそもそもの優位性がないとナンピンをしても多くの含み損を抱えることになります
例えば週足や日足で上昇トレンドなのに、15分足が下落トレンドだからと売りでエントリーしたポジションでナンピンするのは避けたほういいということです。
大きな流れに逆らわないというのは、ナンピンをする際の最も簡単なリスク管理になります。
ナンピンするポイントを決めておく
FXのナンピンで重要なのはタイミングです。
ただナンピンというのは、含み損が出ていてなおかつ値動きと逆行するエントリーをするわけですから、非常に難しい判断が必要になります。



よほど経験のあるトレーダーでない限り、含み損が出ている状況で冷静な判断ができるものではありません。
そこで、これからナンピンをトレードに取り入れようとするなら、最初のうちはあらかじめナンピンするポイントを決めておくことをおすすめします。
例えば、レジスタンス・サポート、直近の高値・安値など、値動きが転換する可能性のあるポイントでナンピンすると決めておけばタイミングに迷いがなくなります。
行動心理学では「人は損失を避けようとする習性がある」とされており、含み損を早く解消したいという感情は冷静な判断を邪魔するものです。
それをあらかじめナンピンのポイントを決めておくことにより、感情を排除した機械的なナンピントレードが可能になります。
ナンピンする回数を決めておく
前述したナンピンするポイントに加えて、ナンピンする回数も決めておくことでリスクを軽減することができます。
つまり「ナンピンするにしても3回まで」といった具合で、ルールを決めておくということです。
やみくもにエントリーしていてはいくら資金が合っても足りません。
下手をすれば、値動きが逆行し続けることだってあるでしょう。
しかし、エントリーする回数が決まっていれば資金管理もしやすくなり、格段にリスクを抑えることができます。
これからナンピンをトレードに取り入れるという方こそ、最初のうちはナンピンする回数を決めておくことをおすすめします。
平均取得単価を常に把握
平均取得単価を常に把握しておくことは、ナンピンを行う際の重要なポイントです。
損益分岐点がわかっていなければ、利益を確定するにせよ損切りをするにせよ、どこまでポジションを持つべきなのかの判断がつきません。
トレードをプラスで終わらせるためにも、ナンピンをした際には平均取得単価を計算するようにしましょう。
なお、FXでナンピンする際には平均取得単価計算をエクセル等で管理するのもおすすめです。
いちいちポジションを取る度に計算機で計算するよりも、エクセルやスプレッドシートの関数計算で管理したほうが遥かに手間が省け、結果としてよりトレードに集中することができるようになります。
平均取得単価={(価格×取得枚数)+(価格×取得枚数)+(価格×取得枚数)}÷合計取得枚数
FXのナンピンには損切りも必要
当然のことではありますが、ナンピンを行うにしても場合によっては速やかに損切りすることも必要になります。
例えば、2022年の3月頃から始まったドル円の上昇相場において、売りポジションを持っていてナンピンを行なっていた場合などは、損切りをできているかどうかで明暗が分かれそうです。


当時は112円〜116円近辺で動いていたドル円ですが、2022年の5月には131円を超える高値をつけます。
仮に114円で売ったポジションを保有し続けているとしたら、17円=1700pips分の含み損が出ているということです。
そこに追加したポジションの含み損が加わるわけですから、損失は計り知れません。
FXでは比較的値動きが安定してるドル円でさえこのような値動きをすることがあります。
他のボラティリティの高い通貨ペアでは、さらに急激で一方的な値動きもあるということです。
したがって、FXでナンピンを行う際には何十億という資金がない限りは、常に損切りすることを視野にいれつつポジョションを取るようにしましょう。
【FXナンピンテクニック】具体的なトレード手法を解説
ここからはより具体的なFXにおけるナンピンのテクニックについて見ていきます。
前述したナンピンの危険性をしっかり理解した上で行うようにしましょう。
【FXナンピンテクニック①】無限ナンピン
無限ナンピンとは、シンプルに利益が出るまでナンピンをし続けることです。




大きなトレンド方向に逆らわずにエントリーするなど、環境認識が確かなものである場合には有効な手法になります。
もちろんリスク管理も必要です。
利益が出るまでは含み損に耐え続けなくてはいけませんので、資金管理が重要なポイントとなってきます。
【FXナンピンテクニック②】値幅間隔を固定した自動ナンピン
FXのナンピンテクニックのひとつである値幅間隔を固定した自動ナンピンとは、あらかじめ値幅を固定して機械的にエントリーする手法になります。
例えば、最初に売りでエントリーしたならば、価格が30pips上昇するごとに自動的にナンピンするといった具合です。


ナンピンで難しいのは、追加でエントリーするタイミングです。
しかし、値幅間隔を固定して自動的にエントリーすることによって、難しい判断が不要になります。
また、事前にナンピンする値幅を間隔を決めておくことで、資金管理もしやすくなると言えるでしょう。
【FXナンピンテクニック③】ナンピンマーチンゲール
ナンピンマーチンゲールとは「ナンピン」と「マーチンゲール」を組み合わせた手法になります。
マーチンゲールはもともとルーレットなどのギャンブルで用いられるベット方法。
勝率が50%のゲームにおいて、一度負けたら次は倍の金額を賭ける方法です。
例えば、赤と黒があるルーレットがあるとして、当たれば2倍の金額がもらえるとします。
その際のマーチンゲールのやり方は以下の通りです。
- 最初に黒にチップを「1枚」賭ける
- 負けたら再び黒にチップを「2枚」賭ける
- さらに負けたら再び黒にチップを「4枚」賭ける
- さらに負けたら再び黒にチップを「8枚」賭ける
といった具合に、負けても同じ側に倍賭けしていくことによって、一度の勝ちで全てプラスにすることが可能になります。
(4回目に買った場合のチップの払い戻し…8×2=16)−(4回賭けたチップの合計…1+2+4+8=15)=1
このマーチンゲールとナンピンを組み合わせたのがナンピンマーチンゲールです。


理論上では「負けない」手法になりますが、その分リスクも伴います。
普通にナンピンを行うよりも、圧倒的に資金が必要になるのは明白です。
そのため、いかに強制ロスカットにならないかが、ナンピンマーチンゲールの最大のポイントです。



証拠金が追いつかなくなり、強制ロスカットなった際の損失は計り知れません。まさに諸刃の剣です。
【FXナンピンテクニック④】両建てナンピン
両建てナンピンとは。通常のナンピンに加え、値動き方向のポジションを両建てするということです。
例えば、1ドル100円で買ったポジョションが下がっていったとします。
そして99円まで下がり続けたところでナンピンの「買い」を入れるのと同時に、新規の「売り」を入れるといった具合です。


仮にこの後98円まで値が下がったとしても、「売り」ポジョションは100pipsの含み益が出ていることになり、最初のポジションの含み損を緩和することになります。
そこで利益を確定させることもできますし、さらに値を下げる場合には再びナンピン、もしくは両建てナンピンと続けることも可能です。


両建てナンピンを行う際に気をつけなくてはいけないのが、ポジョションの管理です。
特に2度・3度と両建てナンピンを繰り返すと、普通にナンピンをするよりも保有するポジションがはるかに増えていきます。
例えば、1ドル100円で買ったポジョションが1円下がる度に両建てナンピンをしていったポジション数は以下の通りです。
レート | 買いポジション | 売りポジション |
---|---|---|
100円 | 100円×1 | – |
99円 | 100円×1 99円×1 | 99円×1 |
98円 | 100円×1 99円×1 98円×1 | 99円×1 98円×1 |
97円 | 100円×1 99円×1 98円×1 97円×1 | 99円×1 98円×1 97円×1 |
両建てナンピンに関しましては、ナンピンマーチンゲールと同様に資金管理が鍵を握るのはもちろん、ポジョション多くなる分だけ注意が必要です。
【FXナンピンテクニック⑤】EAによる自動売買
FXのナンピンはEAにも頻繁に取り入れられています。
ここまで見てきた無限ナンピンやナンピンマーチンゲールといったロジックを組み込んだEAは数多くあり、それらを用いて自動売買を行うことが可能です。
含み損というのは、時にトレーダーから冷静な判断を奪います。
しかし、自動売買であればそこに一切の感情が入り込みませんので、ナンピンであろうが機械的にエントリーすることが可能です。
ただし、自動売買だからこそ資金管理には注意が必要になります。
トレンド転換といった、相場の変化にも注意が必要でしょう。
ナンピン自体がリスクのあるものですので、EAに任せっきりにするのは危険が伴う手法であるということだけは覚えておいてください。
まとめ
ここまでナンピンについて詳しく見てきましたが、大きな利益を得られる反面、危険性も十分にある手法だということがおわかりいただけたかとおもいます。
FXにおけるナンピンは決して悪い手法ではありません。
問題はそのやり方にあります。
くれぐれも損切りしたくないからといった安易な理由でナンピンするのだけは避けましょう。
FXには損切りも必要な要素。大切なのは必要以上に資金を失わないことです。
しっかりとリスク管理をしてトレードと向き合っていきましょう。
取引に役立つ情報をあなたの元に
WikiFXアプリはこちらから


コメント コメント 0