国内FXは呑み行為があるからダメ
海外FXなら呑み行為がないから安全
FXをしている上で「呑み行為」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
呑み行為とは国内FX業者が行っている悪質な行為であり、トレーダーに損をさせる原因となっているというような説明をされることが多いです。
しかしこれは本当に正しいのでしょうか。
そこでこの記事では以下の3つについて解説していきます。
- 海外FXの注文処理方式
- DD方式における呑み行為とは
- 海外FX業者は呑み行為を行っているのか
海外FXの注文処理方式

個人がFX取引を行うためには、FX業者などのリテール・ブローカーを介してインターバンク市場にアクセスする必要があります。
つまり、トレーダーからの注文はFX業者内部の注文執行方式に準じて約定されることになります。
この注文処理方式には大きく分けて2種類あり、1つはDD方式でもう一つはNDD方式です。
ここでは以下の3つについて解説していきます。
- DD方式
- NDD方式
- DD方式NDD方式に関する誤解

DD方式
トレーダーの注文とは反対のポジションを持つことになります。
全ての買いと売りのポジションを相殺し合って、どちらの注文が多いかを計ります。
カバー取引=リスクヘッジ
注文を呑む=リスクテイク
DD方式とはトレーダーの注文をFX業者のディーラーが受け付けている方式のことをいいます。
DD方式ではディーラーがトレーダーからの注文を受け取った時点で、トレーダーに対して約定通知がされることになります。
ディーラーはトレーダーからの注文に対して相対取引を行っており、常にトレーダーとは逆のポジションを持たされることになります。

相対取引のことを「反対売買」という表現をすることもあります。
注文を受け取ったディーラーは、受け取った注文同士を相殺しながらネットポジションを計ります。
ネットポジションとは複数の買いと売りのポジションを抱えている場合、それらの注文を相殺しあった結果どちらの注文が多いかを指しています。



ポジション同士を相殺する行為のことをマリー取引と言います。
ディーラーがネットポジションを抱えているという事は、その分の為替リスクを抱えていることになります。
ディーラーが10枚の買いポジションと5枚の売りポジションを抱えていた場合、ネットポジションは、5枚の買いポジションになります。
つまりディーラーは5枚の買いポジション分の為替リスクを抱えていることになります。


ネットポジションを計った後にディーラーが取れる手段は2つあります。
- カバー取引
- 注文を呑む
1つ目はディーラーがネットポジションに対して反対の注文をカバー先に出すことによって、リスクヘッジを行うことです。
このリスクヘッジの行為のことをカバー取引と言います。



FX業者のカバー先は銀行などのリクイディティ・プロバイダーです。
ディーラーが5枚の買いのネットポジションを抱えているとき、為替リスクを抱えていることになります。
この為替リスクをリスクヘッジするためには、同数の反対ポジションを持つ必要があります。
ディーラーはカバー先に対して5枚の売りポジションを立てることで、リスクヘッジを行います。
2つ目は注文を呑むことで、これを「呑み行為」といいます。
この呑み行為については、のちに詳しく解説していきます。


NDD方式
NDD方式とはDD方式とは違ってディーラーを介さない注文のことをいいます。
NDD方式ではトレーダーの注文はFX業者のシステムを通じてインターバンク市場へ流されることになります。
トレーダーは個人の力ではインターバンク市場での取引をすることができませんが、FX業者が提供するNDD方式の注文処理方式を利用することによって、インターバンク市場での取引を間接的に行うことが可能になります。
NDD方式の中にもSTP方式とECN方式の2種類があります。


STP方式ではトレーダーからの注文がディーラーを介することなく、FX業者のシステムを通じてリクイディティ・プロバイダーに直接流されます。
リクイディティ・プロバイダーの例としては、十分な流動性を提供することのできる「ヘッジファンド」「銀行」「投資家」などが挙げられます。
STP方式ではトレーダーの注文はリクイディティ・プロバイダーへとルーティングされ、そこで提供されるレートで約定されます。


ECN方式ではトレーダーからの注文が電子取引所に流されて、そこでオークション形式の取引が行われることになります。
電子取引所には「ヘッジファンド」「銀行」「投資家」「個人トレーダー」など様々なプレイヤーが参加しており、その中でお互いがレートを提示し合っています。
ECN方式では電子取引所内で取引がマッチングした時点で、トレーダーの注文が約定されます。
DD方式とは違ってNDD方式ではディーラーが反対売買を行いは無いため、トレーダーの注文に対してFX業者がリスクを背負う事はありません。
そのかわりディーラーは為替差益によって利益を上げることができないため、DD方式よりもFX業者が得る利益は少なくなります。
DD方式NDD方式に関する誤解
NDD方式とDD方式に関しては多くの誤解があります。
最も多い誤解としては、DD方式やNDD方式がそのFX業者を分類する用語として使われていることです。
NDD方式やDD方式はFX業者の業態のことを表しているのではなく、そのFX業者がトレーダーからの注文に対して適用する注文処理方式を指しているに過ぎません。
このDD方式とNDD方式の誤解から生まれた言葉として、A-book業者とB-book業者という言葉があります。
A-book業者はNDD方式を利用した良質なFX業者として説明されることが多い一方で、B-book業者はDD方式を利用した悪質な業者として説明されることが多いです。
しかし先ほども説明したように、そもそもFX業者自体をDD方式とNDD方式で分ける事はできないので、この言葉の本質的な誤りを理解していただけると思います。
また、多くの海外FX業者は相場の状況に応じてその注文をDD方式で処理するかNDD方式で処理するかを決めています。
レンジ相場のような多くのトレーダーが利益を上げやすい相場ではNDD方式による注文処理を多くし、逆に多くのトレーダーが損をしやすい相場ではDD方式に切り替えるなどして、利益の最大化を図っています。
実際にこのような方法をとっているかはFX業者の内部の人間にしかわからないことですが、FX業者内のシステムがそのようにプログラミングされていることは十分にあり得ることです。
DD方式における呑み行為


ここまで海外FXのDD方式とNDD方式について解説してきました。
では海外FXにおける呑み行為とは一体何なのでしょうか。
前述のように呑み行為という言葉はDD方式を説明する際に使用される言葉で、ディーラーがトレーダーからの注文に対して取ることのできる行動の1つです。
ここでは呑み行為に関する以下の2つについて解説していきます。
- 呑み行為とは
- 呑み行為がトレーダーに及ぼす影響
呑み行為とは
前述のように、DD方式で注文を処理する場合、ディーラーはトレーダーから受け取った注文を相殺してカバー先に流すかその注文を呑むかの選択をします。
呑み行為とはトレーダーから受け取った注文をカバー先に流すことなく、FX業者の内部で注文を留めておくことを指します。
注文を呑むと言う事は、我々トレーダーと同様にポジションを保有して為替差益によって利益を出すことを目的としています。
したがってディーラーが呑み行為を行った場合はかなりのリスクを背負うことになりますが、相場の行方の予想に成功した場合は、大きな利益を得ることができます。
呑み行為がトレーダーに及ぼす影響
ではFX業者が呑み行為を行った場合トレーダーにどのような影響があるのでしょうか。
結論から言ってFX業者が呑み行為によって注文を処理した場合でも、トレーダーの勝率やトレードの成績に影響を与える事はないです。
先ほど説明したように、呑み行為とはあくまでもFX業者がトレーダーの注文に対して買い向かい(売り向かい)、その業者自身でポジションを抱えるという注文処理方法の1つに過ぎません。
トレーダーの注文はFX業者の反対売買によって約定されているので、その注文がカバー先に流されることがなくても、表示しているレートがトレーダーの不利になるような方向に動くと言った事はありません。
またDD方式による処理方式では、ディーラーがトレーダーとは逆のポジションを持つため、利益相反関係にあるといった表現がされることがあります。
この言葉自体は間違っていませんが、トレーダーが儲かりすぎたため、ディーラーやそのFX業者がそのトレーダーに対して出金拒否をしたり人為的にレートをトレーダーにとって不利な方向に動かしたりするといった事はまず考えられないでしょう。



少なくとも日本の金融ライセンスを取得している限り、そのような不正行為が横行することはありません。
またDD方式で注文処理を行っていたとしても、FX業者としてはなるべくトレーダーからのポジションを保有したくないため、カバー取引を行うなどしてリスクヘッジを徹底していると考えられます。
そう考えると、単独のトレーダーが利益を上げすぎたことが原因で、FX業者に大きな損失を与えてしまう事はまず起こりえないといえます。
海外FX業者は呑み行為をしているのか


ここまで、呑み行為について解説してきました。
ここまでの解説で、呑み行為がトレーダーの不利に働くことはないとご理解いただけたと思います。
それにもかかわらず、多くの海外FX業者や海外FXのアフィリエイト記事では
「海外FXは呑み行為をしていないから安全」
というような主張をすることが多いです。
結論から言って、海外FX業者のほとんどは呑み行為をしているといって良いでしょう。
ここでは海外FX業者が呑み行為を行っていることの根拠として、以下の2つについて解説していきます。
- 根拠1:海外FX業者の金融ライセンス
- 根拠2:海外FX業者の豊富なインセンティブ
根拠1:海外FX業者の金融ライセンス
その海外FX業者がどの注文処理方式を採用しているかは、そのFX業者が取得している金融ライセンスを見ることで見当をつけることができます。
WikiFXではそのFX業者がどの国の金融ライセンスを取得しているかを簡単に確認することができるので、実際に参照しながら説明していきます。


WikiFXにアクセスして、中央の検索バーに海外FX業者の名前を入力します。
入力が終わったら検索ボタンをクリックします。


該当するFX業者をクリックします。


この画面ではFX業者がどの国の金融ライセンスを取得しているかを確認することができます。
今回XMのページを表示しており、画面左側にはXMが取得している金融ライセンスを見ることができます。


ライセンス情報の中に「MM」と表記された金融ライセンスがあります。
MMとはマーケットメーカーの略であり、DD方式での注文処理が許可されているライセンスとなっています。


一方で別のFX業者の金融ライセンスを見てみると、「STP」と表記された金融ライセンスを取得していることがあります。
これはSTP方式での注文処理のみが許可されているライセンスとなっています。
MMの金融ライセンスはSTPの金融ライセンスよりも取得難易度が高くなっています。
なぜならDD方式による注文処理の方がFX業者が抱えるリスクの量が多く、そのリスクに耐え得るようなFX業者にしか金融ライセンスが渡されないからです。


MMの金融ライセンスで重要な事は、このライセンスを取得していればSTP方式での注文処理も同時に可能であると言うことです。
XMはASICとCySECのMMライセンスを取得していることから、DD方式とNDD方式の両方の注文処理ができるということになります。
確かに海外FX業者や海外FXのアフィリエイターが主張するように、海外FX業者ではNDD方式の注文処理を行うことができます。
しかし、わざわざ取得難易度の高いMMのライセンスを持っていながらNDD方式での注文処理しか利用しないというのは不自然に感じます。
このように、海外FX業者にはDD方式を使用できる権利が常にあるということを覚えておく必要があります。
補足:国内FX業者は申告通りに注文処理をしなければならない
日本の金融ライセンスには、ASICやCySECのようにMMのライセンスはありません。
国内FX業者がどちらの注文処理方式を採用するかは、日本の金融ライセンス取得する時点で金融庁に申告することで決まります。
例えばFX業者がDD方式のみを使用する業者として日本の金融ライセンスの取得申請した場合、その申請内容とFX業者の業績等を考慮して、そのFX業者に日本の金融ライセンスを付与するかを検討します。



DD方式のみを使用する業者として申請した場合、DD方式を採用できるほどの大きな資本を持っているかなどが検討されます。
金融ライセンスが取得できたFX業者は、上記の申告通りにDD方式でのみ注文執行を行うことになります。
FX業者が執行方式を申告する際は、DD方式かNDD方式のどちらかを選択するしなければならないという訳ではありません。
DD方式とNDD方式の両方を使う旨を申請をしていれば、その申請が通った際にはどちらの注文処理方式も使うことができます。
根拠2:海外FXの豊富なインセンティブ
海外FXではハイレバレッジやボーナス、ゼロカットなどのトレーダーにとっての豊富なインセンティブが提供されています。
このような豊富なインセンティブを提供できるという事は、それだけFX業者の財源に余裕があると言うことです。



ゼロカットに関しては、取得している金融ライセンスによって義務付けられている場合もあります。
前述のようにFX業者の注文処理方式にはDD方式とNDD方式がありますが、収益性の面ではDD方式の方がNDD方式より圧倒的に高いです。
それを踏まえると、豊富なインセンティブを提供している海外FX業者がNDD方式でのみで収益を上げているとは考えにくく、DD方式も取り入れることにより豊富なインセンティブを提供できるに足る収益を上げていると考える方が自然です。
まとめ:海外FX業者も呑み行為をしていると考えるのが自然
ここまで注文処理方式と呑み行為について解説してきました。
海外FX業者がどの注文処理方式でトレーダーの注文を処理しているのかは、そのFX業者の内部の人間にしかわからないことなので、「海外FX業者も呑み行為をしている!」と断定することはできません。
しかし、「海外FX業者は呑み行為をしていない」という発言には不自然な点が多く、「海外FX業者でもDD方式による呑み行為をしていると考えるのが自然である」と結論づけます。
この記事では根拠として以下の2つを解説しました。
- MMの金融ライセンスを取得していながら、NDD方式でしか注文執行を行わないというのはかなり不自然
- NDD方式による収益だけでは、トレーダーへ豊富なインセンティブを与えることはできない
国内FX業者と海外FX業者はどちらも呑み行為をしている点では相違ないですが、WikiFXでは日本の金融ライセンスを取得していて、より安全性の高い国内FX業者の利用をオススメします。
猪首顧問のFXコラム:Webの情報は間違いだらけ、海外FXの真実を話します
「Abook」「Bbook」について、本稿記事での説明でご理解いただいたと思いますが、
けっして競馬や競輪みたいな公営ギャンブルの世界における「呑み行為」とは意味が違います。



そもそも「呑み行為」という表現自体、非常にダーティなイメージがありますよね…。
前提として、外国為替市場(インターバンク)における取引は、相対取引市場なのです。
これに対して、すべての売買注文が「取引所」において集約され、全参加者の注文がマッチング方式で約定されるのが「取引所取引」です。
相対取引では、常に取引の相手方は1対1なわけですから、損益においては常に相反する結果が生じるのは当たり前なのです。



だから「Bbook=悪」だと決めつけること自体ナンセンスなのです。
そして「海外FX=Abook」「国内FX=Bbook」これもウソ。
また「Abook専門」とか「Bbook専門」という認識も間違いです。
世界中のほとんどのFX会社は、その時その時の顧客の売買バランスを見ながら、Aの比率とBの比率をコントロールしてるのが実態です。



完全A-Bookを謳う海外FX業者も、実際はB-Bookを併用しているのが実情です。しかし実際に注文がどのように処理されているかは、外部から確認のしようがないのもまた事実。我々が業者側の嘘を証明できないのをいいことに、海外FX会社は間違った情報を平気で流しているのです。
相対取引の仕組みで成り立ってるビジネスを、外国為替マーケット以外でみてみましょう。
カジノに代表されるような、いわゆるギャンブルマーケットです。
カジノには多くの顧客が参加してきますよね。カジノ側は常に不特定多数の顧客の勝負に対して、胴元として相対で受けるわけです。
ここではカジノ収益モデルを細かく説明はしませんが、胴元側であるカジノの収益の源泉は、不特定多数の顧客の負け分であることは誰もが知ってることです。
しかし時には、不特定多数の顧客の方が大勝ちしてしまうこともあるわけです。
その時に、カジノ側が顧客に勝ち金を払えなかったらどうなるでしょうか?
そんなカジノは顧客からいっぺんに信用を失い、あっという間に倒産するでしょう。



「相対」を前提としたマーケットという意味で、これはFX会社でも全く同じことが言えます。
いくらBbook100%でやってるFX会社でも、顧客は自分の勝ち分がちゃんと支払われるのであれば問題はないはずです。
問題なのは勝ち分がちゃんと支払われないときです。
そんなFX会社は一気に悪評がたち、会社の存続も怪しくなるでしょう。
仮に顧客側が大勝ちしても、ちゃんと利益金を支払ってくれる会社…
言い換えるなら支払い能力があり、それだけ資本的体力(信用)があるかが最も重要だということです。
そうしますと…
- 経営基盤
- 資本要件
- 企業基盤
等々が不透明な海外FX会社と、厳しい金融庁の監督下で運営されている国内FX会社のどちらで取引するのがいいかは、自ずとご理解いただけると思います。
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