欧州時間は最も取引高が多い時間帯であるため、値動きが活発になる傾向があります。
ですが、具体的にどんな特徴があるのかご存じですか?
欧州時間は、東京時間やヨーロッパ時間とは異なる特徴が存在します。
そのため特徴を理解せずに取引すると、不利な立場でトレードすることになるかもしれません。
- 欧州時間の時間帯(夏時間と冬時間)
- 欧州時間の特徴6つと戦略3つ
- 欧州時間でおすすめの手法2つ
この記事を読めば、欧州時間の時間帯や特徴、戦略だけでなく、おすすめの手法まで理解できます。
欧州時間の理解が深まれば、自分なりに対策や手法が立てられるようになれるので、ぜひ最後までご覧ください。
欧州時間とは?夏時間と冬時間で異なるので注意
欧州時間とは、欧州地域内の市場が開場する17時(夏時間なら16時)から翌2時(夏時間なら翌1時)に取引が活発化する時間帯のことです。
夏時間or冬時間 | 取引が活発化する日本時間 | 適用時期 |
---|---|---|
夏時間 | 16時~翌1時(夏時間) | 3月~11月 |
冬時間 | 17時~翌2時(冬時間) | 11月~3月 |
夏時間(サマータイム)とは、日の出が早まる時期(3月~11月)に、時計を1時間早めて、太陽が出ている間に行動しようという欧米の考え方のことです。
夏時間ではない時期の時間帯は「冬時間(11月~3月)」と呼ばれ、夏時間よりも1時間遅くなります。
そのため、夏時間から冬時間、もしくは冬時間から夏時間の移行時期は注意が必要です。
時間移行 | 移行時期(グリニッジ標準時) |
---|---|
夏時間→冬時間 | 11月の第1日曜日 |
冬時間→夏時間 | 3月の第2日曜日 |
また欧州時間はユーロ圏全体にある市場が対象のため、下記の市場が影響を与えていることを覚えておきましょう。
- ロンドン市場(イギリス)
- ユーロネクスト・パリ市場(フランス)
- フランクフルト市場(ドイツ)
- チューリッヒ市場(スイス)
欧州時間の特徴は6つ
欧州時間の特徴は、イギリスのロンドン市場やドイツのフランクフルト市場に関係するものが多く、6つあります。
- 東京時間よりも値動きが活発になる
- ECB(欧州中央銀行)の政策が反映されやすい
- ユーロ圏やドイツの経済指標に左右されやすい
- ドイツ債と外国債の利回り差が市場心理に影響する
- 19時前後の昼休みで値動きが落ち着く
- 1時にロンドンフィックスがある
欧州時間で取引するなら覚えておきたいものばかりですので、しっかりと理解しておきましょう。
特徴1.東京時間よりも値動きが活発になる
特徴の1つ目は「東京時間よりも値動きが活発になる」です。
なぜなら欧州時間は、世界で最もFX取引高が多いロンドン市場が開場する時間帯でもあるからです。
またユーロ圏で影響力が強いフランスとドイツ、ユーロ圏とつながりが深いスイスなどの各市場も開場する時間帯でもあります。
- ロンドン市場(イギリス)
- ユーロネクスト・パリ市場(フランス)
- フランクフルト市場(ドイツ)
- チューリッヒ市場(スイス)
順位 | 国名 | 取引高(単位:百万US$/日) |
---|---|---|
1位 | イギリス | 3,576,409 |
5位 | 日本 | 375,505 |
6位 | スイス | 275,719 |
7位 | フランス | 167,123 |
9位 | ドイツ | 124,448 |
上記の通り「世界の外国為替市場規模 国別ランキング・推移」でロンドン市場があるイギリスは、5位の日本の約10倍に相当する額で1位です。
また、6位のスイスや7位のフランス、9位のドイツの取引高も欧州時間で加わるので、より取引高が多くなり、値動きに拍車がかかります。
そのためユーロ圏全体の取引量が一気に増加する影響で、欧州時間は東京時間よりも値動きが活発になるのです。
特徴2.ECB(欧州中央銀行)の政策が反映されやすい
特徴の2つ目は「ECB(欧州中央銀行)の政策が反映されやすい」です。
というのもECBが行う政策発表の内容が、為替へ強い影響を与えるからです。
ECBの発表内容は、主に2つあります。
- レポ・レート(ECB最低応札金利)
- 公開市場操作
1つ目は「レポ・レート(ECB最低応札金利)」で、ECBからユーロ加盟国の中央銀行へ貸出する際の金利のことです。
基本的にECBにとってインフレは懸念事項であるため、必要であれば躊躇無くレポ・レートを引き上げる傾向があります。
目的 | レポ・レート | ユーロ |
---|---|---|
インフレ抑制 | 上げる | 通貨高 |
インフレ促進 | 下がる | 通貨安 |
ECBがインフレを抑制したい場合はレポ・レートを上げるので、ユーロは他の通貨よりも通貨高になります。
逆にインフレを促進したい場合はレポ・レートを下げるので、ユーロは他の通貨よりも通貨安になります。
2つ目は「公開市場操作」で、ECBが市場のマネーサプライ(資金供給量)をコントロールすることです。
公開市場操作により市場に存在する資金量が変化するので、通貨価値に影響を与えるのです。
マネーサプライ | ユーロ |
---|---|
下げる | 通貨高 |
上げる | 通貨安 |
例えば、EU各国の中央銀行が国債などを売り、販売代金として市場からユーロを回収します(売りオペレーション)。
すると市場のマネーサプライが減少するので、結果的にユーロは他の通貨よりも通貨高になるのです。
逆にEU各国の中央銀行が国債などを買うと、購入代金としてユーロが市場へ放出されます(買いオペレーション)。
すると市場のマネーサプライが増加するので、結果的にユーロは他の通貨よりも通貨安になるのです。
また公開市場操作は不定期で発表されますが、レポ・レートは「ECB政策金利」という形で6週間おきに発表されます。
発表時期 | 発表時間(日本時間) |
---|---|
夏時間(3月~11月) | 20:45 |
冬時間(11月~3月) | 21:45 |
3月と11月は夏時間・冬時間の切り替え時期と重なるため、年度によっては1時間早まったり遅くなったりするので、注意が必要です。
そのため、前もって何時頃にレポ・レートが発表されるかチェックしておきましょう。
特徴3.ユーロ圏やドイツの経済指標に左右されやすい
特徴の3つ目は「ユーロ圏やドイツの経済指標に左右されやすい」です。
なぜなら、欧州時間で多く取引されるのはユーロのため、ユーロ圏やドイツの経済指標の影響を直接受けるからです。
ドイツの経済指標が重要な理由は、「世界の名目GDP 国別ランキング・推移」にてGDPが世界4位と、ユーロ圏内において最高である点が挙げられます。
順位 | 国名 | 取引高(単位:百万US$/日) |
---|---|---|
1位 | 米国 | 22,997,500 |
2位 | 中国 | 17,458,036 |
3位 | 日本 | 4,937,422 |
4位 | ドイツ | 4,225,924 |
- ECB政策金利発表
- ユーロ圏消費者物価指数(HICP)
- 購買担当者指数
- ユーロ圏GDP
- 消費者物価指数(CPI)
- Ifo景況感指数
- 鉱工業生産
- 失業率
- 失業者数
「ユーロ圏消費者物価指数(HICP)」とは、ユーロ圏全体の物価を表す指標です。
ECBが市中のインフレ具合を測る場合に参考にする指標で、基本的に「0~2%」を目標としています。
ですが、もし2%を超えるようであれば市場関係者はインフレ抑制の利上げを期待してユーロ高になりますし、逆に低すぎると利下げ期待からユーロ安になります。
「Ifo景況感指数」とは、ドイツ企業の約9,000を対象に今後6カ月の景気の先行きをアンケート調査し、その結果を指数にしたものです。
ドイツ景気はユーロ圏に多大な影響を与えるので、「ドイツ景気」≒「ユーロ圏の景気」を示す指標として認知されています。
通常80~120の間で推移していますが、先月比のどれくらいかで注目されることが多いです。
よって欧州時間で取引するなら、ユーロ圏やドイツの経済指標に気を配りましょう。
特徴4.ドイツ債と外国債の利回り差が市場心理に影響する
特徴の4つ目は「ドイツ債と外国債の利回り差が市場心理に影響する」です。
というのもファンドマネージャーの多くは、ドイツ債と外国債の利回り差を意識してトレードしているからです。
基本的にFX市場では、国債利回りが高い方の通貨が買われる傾向があるため、利回りが高くなった国の通貨高が進みます。
そのため、ドイツ債と外国債の利回り差がユーロクロスに影響を与えるのです。
例えば、米国債よりもドイツ債の利回りが高い場合はユーロが買われるため、ユーロ/米ドルは上がります。
逆に、ドイツ債よりも米国債の利回りが高い場合は米ドルが買われるため、ユーロ/米ドルは下がります。
そのため欧州時間で取引するなら、欧州時間の参加勢が注目しているドイツ債と外国債の金利差がどの程度かチェックしておきましょう。
欧州時間の開始前に金利差をチェックすれば、どちらの方向へトレンドが形成されやすいか判断しやすくなります。
特徴5.19時前後の昼休みで値動きが落ち着く
特徴の5つ目は「19時前後の昼休みで値動きが落ち着く」です。
というのもロンドン市場などの関係者は、19時前後で昼休みをとること多いからです。
実際、19時前後ではボラティリティ(価格変動)が下がる傾向があります。
もし19時前後に取引をスタートしても、なかなか相場が動かなければ、
昼休みの影響で、相場が動かないのだな
と考えましょう。
またその日にトレードしにくいと感じるなら、21時(冬時間なら22時)になるまで待つのもおすすめです。
なぜならニューヨーク市場も参加してくるため、再びボラティリティが上がってくるからです。
特徴6.1時にロンドンフィックスがある
特徴の6つ目は「1時にロンドンフィックスがある」です。
ロンドンフィックスとは、ロンドン市場において金の取引価格を決定する時間のことです。
金は基本的にドル建てで取引されるので、ロンドンフィックスが近づいてくるとユーロや英ポンドを米ドルへ大量に両替する動きがあります。
そのため、ロンドンフィックスがある1時(夏時間なら24時)前後ではユーロクロスや英ポンドクロスが大きく動くので、注意が必要です。
欧州時間の戦略は3つ
欧州時間で取引するなら、前もってどのような戦略でトレードするのか考えておきましょう。
ここでは、欧州時間で役に立つ戦略を3つご紹介します。
- 通貨はユーロクロスを選ぶ
- 15時の「東京オプションカット」に注意する
- 開始1時間前からの「アーリーロンドン」にも気を配る
戦略1.通貨はユーロクロスを選ぶ
戦略の1つ目は「通貨はユーロクロスを選ぶ」です。
ユーロクロスを選ぶ理由として、「為替市場における通貨別取引高のシェア」でユーロは16.1%と2位になっているからです。
また「世界で取引量の多い通貨ペアランキング」でも、ユーロ/米ドルが1位となっています。
というのも欧州通貨はユーロであるため、ユーロ圏の国々が全てユーロで決済していると考えれば、当然の結果となります。
そのため、欧州時間ではユーロクロスを中心にトレードすれば問題ありません。
戦略2.15時の「東京オプションカット」に注意する
戦略の2つ目は「15時の『東京オプションカット』に注意する」です。
東京オプションカットとは、東京市場におけるオプション権利行使の締め切り時間のことです。
東京オプションカットは15時に行われますが、この時間が近づいてくると価格もオプション価格に近づいていきます。
なぜならオプション権利を買った側と売った側の双方で、自分が有利になるように売買が行われるからです。
例えば、120円の買いオプションを大量に売ったAさんと、それを買ったBさんがいたとします。
NYオプションカット時間が近づくと、それぞれ次のような思惑で行動します。
Aさん「120円より安ければ、Bさんのオプション行使によって自分のポジションを売らずに済み、オプションプレミアム(オプションの売買によって得られる利益)が残せる。
だから少しでも売って、相場を下げよう。」
Bさん「120円より高ければオプションで安く買えるので、すぐ売れば利益になる。
だから少しでも買って、相場を上げよう。」
このようにオプション売買した人たちによる攻防が、相場に現れるのです。
そのため東京オプションカットの15時が近づいてくると、価格もオプション価格に近づくことを意識しておきましょう。
戦略3.開始1時間前からの「アーリーロンドン」にも気を配る
戦略の3つ目は「開始1時間前からの『アーリーロンドン』にも気を配る」です。
アーリーロンドンとは、欧州時間の開始1時間前に一足早く市場に参加してトレードする人たちのことです。
早起きして飛び立つ鳥にちなんで、別名「アーリーバード」とも呼ばれます。
アーリーロンドン | 欧州時間(日本時間) |
---|---|
15時 | 16時~翌1時(夏時間) |
16時 | 17時~翌2時(冬時間) |
基本的にアーリーロンドンは、東京時間でたまった損切りポジションを巻き込んで、逆方向へ行くように注文する傾向があります。
上の画像では15時のアーリーロンドンを機に反転し、東京時間の損切りポジションを巻き込みながら上昇しているのが分かるはずです。
そのためポジションを東京時間から欧州時間へ持ち越す場合は、アーリーロンドンによって潰されないよう注意しましょう。
欧州時間のおすすめ手法は2つ
欧州時間で取引するなら、おすすめの手法が2つあります。
- 欧州時間のダマシをRSIで回避
- ロンドンボックス手法
それぞれ押さえておきたい手法なので、ぜひ覚えておきましょう。
手法1.欧州時間のダマシをRSIで回避
おすすめの手法1つ目は「欧州時間のダマシをRSIで回避」です。
RSIとはオシレーター系のインジケーターの一種で、「買われすぎ」や「売られすぎ」が判断できます。
RSI | シグナル |
---|---|
70以上 | 買われすぎ |
30以下 | 売られすぎ |
ではRSIがない場合とある場合で、欧州時間のダマシが回避できるか検証してみましょう。
【RSIがない場合】
上の画像から欧州時間の前は、未明から形成されたチャネルラインによって相場が下落中です。
しかし16時の欧州時間の開始と共に、チャネルラインを下へブレイクしました。
このままさらに、下落するかも?
と考えがちですが、このブレイクはダマシだったため、その後は急上昇しています。
もしブレイクの時点で売りエントリーしていたら、大きな損失を被っています。
【RSIがある場合】
上の画像から、16時の欧州時間でチャネルラインをブレイクした時に、RSIはダイバージェンスを起しています。
「ダイバージェンス」とは、チャートの動きとRSIの動きが逆行することです。
チャートとRSIの動きがお互いに逆行している場合は、「反転シグナル」となります。
チャート | RSI | 反転シグナル |
---|---|---|
上がる | 70%付近で下がる | 下落 |
下がる | 30%付近で上がる | 上昇 |
チャートは下落中ですが、RSIは28%から32%と下限が上がっているため、「上昇」の反転シグナルが出ていると判断できます。
そのため、16時のブレイクアウトはダマシだと予測できるのです。
ですが、RSIは必ずダマシを予測してくれる訳ではありませんので、一種の予防ラインとして活用しましょう。
手法2.ロンドンボックス手法
おすすめの手法2つ目は「ロンドンボックス手法」です。
ロンドンボックス手法は、欧州時間が始まる直前7時間前で形成したボックスをブレイクしたら、その方向へ順張りする手法です。
具体的には、下記の手順で行います。
- 15分足に設定
- 欧州時間直前の7時間前の高値・安値でボックスを形成
- 欧州時間の開始後に、2のボックスをブレイクした方向へエントリー
- エントリー後、利確は30pips、損切りは20pipsに設定
この手法がおすすめできる理由は、欧州時間中は東京時間よりも値動きが活発になるため、確実に初動を捉えられるからです。
つまり、初動を捉えるための「東京時間で形成されたボックスをブレイクした方向へエントリー」となります。
ただし確実にブレイクを確認するまでは、エントリーするのを控えましょう。
なぜならダマシによる見せかけのブレイクで、チャートがボックスへ戻ってくることがあるからです。
そのためブレイク後の次のローソク足が出現したタイミングで、エントリーするようにしましょう。
まとめ:東京時間よりも圧倒的に値動きが良くなるので、戦略が大事となる
ここまで、欧州時間の時間帯や特徴などを解説してきました。
- 夏時間なら「16時~翌1時」、冬時間なら「17時~翌2時」が欧州時間となる
- 「ECB(欧州中央銀行)」や「ユーロ圏やドイツの経済指標に左右されやすい」などの特徴がある
- ユーロクロスの通貨ペアを中心にトレードする
- おすすめ手法は「欧州時間のダマシをRSIで回避」や「ロンドンボックス手法」がある
欧州時間は、東京時間よりも値動きが圧倒的に良くなります。
そのため、欧州時間が始まる前に経済指標や東京時間で相場の流れをチェックし、今後どうなるかの戦略を立てることが重要となります。
というのもFXは手法も大事ですが、情報戦でもあるからです。
もしある程度分析できれば、値動きが予想できるようになれますので、しっかりと取引前に準備しておきましょう。
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