ビットコイン・クジラとは?正体、動きを知るためのアラートを解説

「パレートの法則」、「80:20の法則」、「2:8の法則」という言葉を聞いたことがありますか?

一部の金持ちが社会全体の財産の大部分を持っていて、その割合が20(お金持ち):80(資産)になるという富の分布の法則です。

※厳密に20:80ではなく、数字に多少のバラツキはあります。
パレートの法則で言いたいことは富の分布には偏りがあるということです。

このパレートの法則、実は色々なことに当てはまります。

例:

  • 会社の売上の8割を2割の優秀な社員が叩き出している。
  • 会社の売上の8割が2割のお客様からの注文。

あなたの会社でも心当たりはありませんか?

パレートの法則はビットコインにも当てはまります。

発行されている8割のビットコインを2割の所有者が保有しているのです。

この8割のビットコインを保有する2割の所有者のことをビットコイン・クジラ(Bitcoin Whale)と言います。

なお、ブルームバーグによると、ビットコインの場合は95%のビットコインを上位2%の所有者が保有しています。

出典:Bloomberg

クジラの動きはビットコインの価格に影響を与えます。
なので、彼らの動きを知ることはとても重要です。

そこで、ビットコイン・クジラについて、解説します。

この記事からわかること
  • ビットコイン・クジラについて
  • ビットコイン・クジラの影響力
  • ビットコイン・クジラの正体
  • ビットコイン・クジラの動きを追跡する方法
目次

ビットコイン・クジラとは?

ビットコイン・クジラとは、発行されているビットコインの大部分を保有する一部の所有者(アドレス)の意味です。
要するに、ビットコインの大口投資家のことです。

クジラの語源は「ロンドンのクジラ」という異名を取る元JPモルガンのトレーダー、ブルーノ・イクシル(Bruno Iksil)氏から来ています。

ブルーノ・イクシル (Bruno Iksil) は、フランス生まれの相場師(トレーダー)。

その荒っぽく危うい取引手法から「ロンドンのクジラ (the London Whale)」や、 そのウォール街への潜在的な影響力の大きさから(ハリー・ポッターの敵役になぞらえて)「ヴォルデモート」とも通称された。JPモルガン・チェースのロンドン事務所に勤め、JPモルガン・チェースに巨額の損失を与えたとされる。イクシルは2005年からJPモルガンで働き始め、パリに住まいを置いたまま、ロンドンに通勤していたと言われている。JPモルガンでは、クレジット・デフォルト・スワップで毎年数億ドルの利益を上げていたともいわれる。イクシルはプライバシーを固く守っていると言われ、年齢も分からないが、「私生活は質素で週末は家族孝行」とも報じられた。

2011年、その攻撃的な取引手法で「Caveman(原始人)」とも称されたイクシルは、ある会社が債務不履行に陥れば、JPモルガンに労せずして4億5千万ドルが転がり込むと踏んで、およそ10億ドルを投じた。2012年はじめのイクシルは、それほど力を持ち、また、強気の投資をしており、雑誌『New York』によれば、イクシルひとりが動くことで株価指数を動かすことも可能であったという。その後、「ロンドンにあるこの銀行(JPモルガン)の投資本部事務所におけるデリバティブ取引がらみの破滅的な20億ドルの損失」が2012年5月に明るみに出た後、イクシルは「取引権限を剥奪」された。7月、イクシルがJPモルガンを退職したことが報じられた。

出典:Wikipedia

株価指数を動かすほどの彼の異名にちなんで、暗号通貨業界で市場に大きな影響を与える投資家のことをクジラと呼ぶようになりました。

具体的には以下の2つの条件を満たす大口投資家がビットコイン・クジラと呼ばれます。

  1. 1,000BTC(約29億円)以上保有する。
  2. 頻繁に取引しないが、一旦売りに動くと短期間で大量に売却する。

ビットコイン・クジラのアドレスは合計で2,145個です。
全アドレス数は43,050,713個なので、ビットコイン・クジラが全アドレスに占める割合はわずか0.005%に過ぎません。

しかし、ビットコイン・クジラが保有するビットコインの割合は約41.27%です。

出典:BTC.com
出典:BitInfoCharts

一方、保有量が1BTC(約290万円)未満の投資家はビットコイン・シュリンプ(海老)と呼ばれます。

ビットコイン・クジラの動きに注意すべき理由とは?

なぜビットコイン・クジラの動きに注意すべきなのでしょうか?

彼らが動く時、暗号通貨市場に大きな影響を与えるからです。

ビットコイン・クジラの影響とは?

ビットコイン・クジラは大量のビットコインを保有しています。

しかも、ビットコインの市場規模は株式などの従来の金融市場と比べると規模が小さいです。

なので、もしも彼らがビットコインを売却すると、市場が彼らの売りを受け止められず売り圧力が生じ、価格が下落します。
そして、価格が急落したのを見た他の投資家が恐怖に支配され、パニック売りが起こります。
すると、価格がさらに下落するので、さらに多くの投資家が投げ売り、大暴落を引き起こす可能性もあります。

しかも、ビットコインは暗号通貨を代表する銘柄であり、暗号通貨業界での影響力が強いです。
そのため、イーサリアムなど他の暗号通貨まで下落する可能性があります。

特に10,000BTC(約290億円)以上持つ巨大クジラの影響力は無視できません。

巨大クジラは価格操作することも不可能ではありません。

ビットコイン・クジラが動いて市場を暴落させた事例

2018年9月、ビットコインが15%以上の暴落しました。

2018年8月後半から9月初めのチャート
出典:CoinMarketCap

オンチェーンデータによると、暴落の原因は「あるビットコイン・クジラが売却したのではないか?」とのことでした。

そのクジラのアドレスを追跡したところ、ビットコインが暴落した期間中に50件の取引の記録があり、合計50,500 BTC(約352億円)が関与していたことが判明しました。

さらに、この数ヶ月前にもビットコイン・クジラの影響で価格が暴落しました。

それは、2018年4月に起きました。

「2匹の巨大クジラが24時間で1億ドル(約110億円)以上に相当する約13,100 BTCを売却した」というニュースが暗号通貨市場を駆け巡りました。

このニュースを聞いた投資家たちはパニックになってビットコインを投げ売りし、たった20分で200ドル(約22000円)下落しました。

しかし、後に「売却ではなく、ウォレット間で資金移動しただけ」ということが判明しました。

ビットコイン・クジラは、売却しなくても噂が広がるだけで市場に大きなインパクトを与える存在なのです。

ビットコイン・クジラは、売却しなくても噂が広がるだけで市場に大きなインパクトを与える存在です。

ビットコインクジラの正体とは?

動いた時はもちろん、「売却した」という噂が広がるだけでも暴落を引き起こすビットコイン・クジラ。
そんなビットコイン・クジラの正体に迫ります。

2種類のビットコイン・クジラ

ビットコイン・クジラは主に2種類います。

  1. イノベーターとアーリーアダプター
  2. 機関投資家・企業

それぞれ、見ていきましょう。

イノベーターとアーリーアダプター

このタイプのクジラはビットコインの開発者や初期に投資した人たちのことです。

イノベーターとは?

イノベーターとはマーケティング用語で、新しい商品やサービスが登場したら、すぐに購入して試してみる人たちを意味します。
いわゆる、マニアやオタクです。

彼らは品質や利益などはお構いなしで、とにかく他人よりも早く新製品を試すことに喜びを感じます。

アーリーアダプターとは?

アーリーアダプターとはマーケティング用語で、流行の初期段階で商品やサービスを購入する人たちを意味します。
いわゆる、流行の先端を行く人です。

彼らはイノベーターの次に新しい商品やサービスに飛びつきます。
しかし、彼らはイノベーターと違い、品質や利益を考えて、良いと判断した物しか購入しません。

このタイプはビットコインを初期から保有し続けた開発者や投資家が価格の上昇によってクジラに成長したパターンです。

イノベーターとアーリーアダプターは頻繁に取引しない投資家が多いのが特徴です。

しかし、マイニングによるビットコインの発行量の増加、価格上昇による売却などで、イノベーターとアーリーアダプターの保有割合は減少しています。

機関投資家・企業

このタイプのクジラはビットコインが値上がってから「投資」目的で市場に参入してきた大口投資家です。

クジラの大部分が機関投資家・企業です。

機関投資家・企業は利益を出すためにビットコインを購入しているので、イノベーターとアーリーアダプターとは違い取引の頻度が多いです。

機関投資家が投資をして利益を出すためにビットコインを購入するのはわかりますが、企業が積極的に購入するのは不思議に思いますよね?
企業の場合は企業財務の一環としてビットコインを購入しています。

ビットコインを購入している企業はこれらです。

出典:CoinGecko

国としてはアメリカやカナダの企業が多いですが、ランキング7位には日本企業のネクソンがいます。

上場企業のビットコインの保有率は0.91%です。

第三のビットコイン・クジラ

イノベーターとアーリーアダプター、機関投資家・企業の他、第三のビットコイン・クジラが存在します。
しかし、彼らの存在はイレギュラーで特殊です。

第三のクジラとは犯罪で押収されたビットコインを一時保有する国や政府機関などです。

例えば、2017年、ブルガリア政府は犯罪者集団から213,519BTC(当時のレートで約484億円相当)を押収しました。
さらに他の犯罪でもビットコインを押収しており、その結果、ブルガリア政府はビットコイン保有者ランキング第2位に輝きました。

また、アメリカのFBIも違法ドラッグ取引の闇サイト「シルクロード(Silk Road)」の摘発で押収した144,336BTCで、ビットコイン保有者ランキング第4位に輝いたことがあります。

ブルガリア政府は押収したビットコインの取り扱いについてはコメントを控えているので、その後どうなったのかはわかりません。

FBIは押収したビットコインをデジタル・カレンシー・グループ(Digital Currency Group)CEOのバリー・シルバート(Barry Silbert)氏に売却しました。

日本では2014年2月にハッキングを受けて破綻した暗号通貨取引所マウントゴックス(Mt.Gox)事件で、第三のクジラが誕生しました。

マウントゴックス事件とは?

2014年2月24日、当時世界最大であった日本の暗号通貨取引所マウントゴックスがハッキングされました。
そして、自社保有分の10万BTCとユーザー保有分の75万BTC(当時のレートで約470億円相当)、さらに顧客から預かっていた資金28億円が流出しました。

被害者は12万7000人にも上りました。

マウントゴックスは3日後、破綻しました。

マウントゴックス事件については、こちらの記事で詳しく紹介しているので、お読みください。
→ 暗号資産の事件3選|今日からできるセキュリティ対策を解説

マウントゴックスの破綻後、ビットコイン20万BTCが残っていることが判明します。
そして、この20万BTCは凍結されました。

この凍結された20万BTCのうち、16万BTC以上をマウントゴックス管財人の小林信明弁護士が保管しました。
そして、日本人だけでなく世界中の暗号通貨投資家から、彼は「東京のクジラ」と呼ばれるようになります。

なお、小林氏は2018年3月から6月、資金調達のために24,658BTC(当時のレートで約2億6,000万円相当)を売却しました。

すると、ビットコインの価格が大きく変動しました。
(下のチャートを参照してください。)

出典:coinmarketcap

ビットコインを一番持っているのは誰?

ビットコインを一番持っているのは誰なんだろう?

こんな風な疑問が浮かぶかもしれませんね。

ビットコインを一番持っているのは、ビットコインの生みの親サトシ・ナカモトです。
日本人の名前ですが、国籍や正体は一切不明の謎の人物(もしくは集団)です。

サトシ・ナカモトの保有量は1,125,150BTC(約3兆円)とされています。

サトシ・ナカモトの次に多く保有しているのは、34xp4vRoCGJym3xR7yCVPFHoCNxv4Twseoというアドレスです。
このクジラアドレスは252,597BTC(約7,155億円)を保有しています。

アドレスランキング
出典:BTC.com

このクジラアドレスの正体は暗号通貨取引所のバイナンス(Binance)です。

WikiBitではバイナンスの安全性スコアは9.23と評価されています。

出典:WikiBit
WikiBitとは?

WikiBitとは世界中の暗号通貨取引所、プロジェクト、トークンの安全性、信頼性を評価する第三者機関です。
5,000社以上の取引所、8,000以上のトークンを網羅しています。

また、評価の他、取引所を利用して被害に遭った人たちの生の声、調査員の取引所への突撃調査など、リアルな情報を知ることができます。

WikiBit:https://www.wikibit.com/ja/

ランキング2位のクジラアドレス(bc1qgdjqv0av3q56jvd82tkdjpy7gdp9ut8tlqmgrpmv24sq90ecnvqqjwvw97)は暗号通貨取引所ビットフィネックス(Bitfinex)です。

WikiBitではビットフィネックスの安全性スコアは6.94と評価されています。

出典:WikiBit

ランキング3位のクジラアドレス(1LQoWist8KkaUXSPKZHNvEyfrEkPHzSsCd)は暗号通貨取引所ジェミニ(Gemini)です。

WikiBitではジェミニの安全性スコアは8.98と評価されています。

出典:WikiBit

ビットコイン・クジラの情報は基本的に公開されていませんので、どこの国の誰がクジラなのかはわかりません。
もしかしたら、あなたの周りにもひっそりとビットコイン・クジラがいるかもしれません。

ビットコイン・クジラの警報アラートで動きを知る

ビットコイン・クジラの動きがわかれば、大慌てしないで済みますし、稼ぐこともできます。

なので、多くの暗号通貨投資家はクジラの動きに注目しています。
まるで、ホエールウォッチングのように。

ビットコイン・クジラの動きをウォッチする方法は2種類あります。

  1. アラートツール
  2. クジラクラスター

それぞれ、解説します。

アラートツール

アラートツールとはビットコイン・クジラの動向を常に監視し、動きがあった時に警報するツールです。

代表的なアラートツールは2つあります。

ホエールアラート(Whale Alert)

Whale Alertとは大きな暗号通貨の取引(500BTC以上のトランザクション)があった時にツイッターで自動的に知らせてくれるツールです。

出典:Whale Alert

Whale Alert:https://twitter.com/whale_alert

Whale Alertの特徴

・リアルタイムで大口取引の情報が届く

・ツイッターなのでアプリのインストールが不要で気軽に使える

・ビットコインだけではなくイーサリアムなど上位の他の暗号通貨の大口取引、USDTなどステーブルコインの新規発行や償却も情報も届く

なお、Whale Alertは英語のなので、苦手な人は拒否反応を起こしてしまうかもしれません。
しかし、ツイートはテンプレートなので、どれか1つのツイートを翻訳ツールにかければ、他のツイートの意味もわかるようになります。

ホエールマップ(Whalemap)

Whalemapとはクジラの動きを分析して、市場の動向(トレンド)を知らせてくれるツールです。

出典:Whalemap

Whalemap:https://whalemap.io/

Whalemapの特徴
  • クジラの動きが可視化(チャート)されてわかりやすい
  • 複数のクジラの動きが同時にわかる

Whalemapは英語で、メールアドレスを登録しなければならないので、敷居が高く感じるかもしれません。
しかし、複数のクジラの動きを同時に把握できるので、クジラクラスターを知ることができます。
(クジラクラスターについては、次で詳しく解説します。)

クジラクラスター

クジラクラスターを知ることはビットコイン・クジラの個々の動きを把握するよりも重要です。

クジラクラスターとは?

クジラクラスターとは複数のクジラが同時にポジションを保有した価格帯です。

クジラクラスターに注目すべき理由は以下です。

  • 上昇相場やレンジ相場では、クジラクラスターがサポートラインになる。
  • 弱気相場の場合、クジラは利確のためにクジラクラスターよりも上の価格で一斉に売り出すので、暴落の兆候となる。
  • クジラクラスターを下回ったら、クジラが買い増す可能性がある。

要するに、クジラクラスター付近ではクジラたちが何らかのアクションを取る可能性があるのです。
だから、クジラクラスターがわかれば、彼らの動きに合わせて素早くアクションを取ることができます。

クジラクラスターを知る方法は、先ほど紹介したWhalemapです。

暗号通貨に投資するなら、アラートツールを使って、クジラの動きを追いましょう。

まとめ

ビットコイン・クジラとは、1,000BTC以上のビットコインを保有する大口保有者のことで、主に開発者や初期投資家、機関投資家や企業です。

ビットコイン・クジラは、数は少ないですが、市場に与えるインパクトは大きいです。
そして、彼らが一旦動き出すと、市場が大きく動きます。
過去には暴落することもありました。

なので、ビットコインに限らず、暗号通貨に投資するなら、クジラの動きをウォッチする必要があります。
Whale AlertやWhalemapなどアラートツールを使って、彼らの動向をチェックしましょう。

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この記事を書いた人

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