スイスフランショックは、FXの大暴落を代表する衝撃的な為替変動の1つです。ドル、ユーロ、円は対スイスフランでわずか数分で30%以上暴落、世界のFX市場に激震が走りました。
おそらく、スイスフランショックのことを聞いたことがあるトレーダーは多いでしょう。ただ、ここで「なぜスイスフランショックが起きたのか」「どれくらいの損失が出ているのか」など、詳しいことはあまり知られていないかもしれません。
今回は、約9年経った現在でも、FX史上最大の暴落として語られる「スイスフランショック」の全貌をわかりやすく紐解いていきます。
FXって怖いね、
を代表する出来事です!
ぜひ読んでおいて下さい!
暴落が起きたその瞬間に、大儲けした人、大損した人の事例や、スイスフランの今後の見通しなどもワールドワイドでご紹介していきます。ぜひ、この機会にご一読下さい。
- スイスフランショックでどれくらい暴落したのか
- スイスフランショックが起きた要因
- スイスフランショックで大儲けした人・大損した人
- スイスフランの現状と今後の展開
- スイスフランショックから学んだこと
スイスフランショックでFX市場は激震!
何となく聞いたことがあるトレーダーも多いように、スイスフランショックは、世界中のトレーダーを多額の借金に追い込んだ前代未聞の為替変動のことをいいます。あまりにも急激な暴落にて、経営破綻・倒産を強いられたFX業者もあったほどです。
あまりにも急激に相場が暴落したので、
FX業者のシステムもストップ!
ロスカットも間に合わなかったのです!
どれくらいの値動きが起きたのか、スイスフランショックの恐ろしさをチャートで見ていきましょう。
2015年1月15日ユーロが暴落!
スイスフランショックは、2015年1月15日、スイス中銀が発表した対ユーロへの「為替介入の撤廃」から始まりました。スイス中銀は、2011年から「スイスフラン高ユーロ安」が進みすぎないよう、「スイスフラン売り/ユーロ買い」の為替介入を行っていたのですが、日本時間の午前10時30分頃に「為替介入を撤廃した」というニュースが報道されたのでした。
このニュースに瞬発的に反応した、トレーダー、投資機関、銀行は「スイスフラン買い/ユーロ売り」へと爆走、そこへ強制決済や損切りの「買い」が連打されたわけです。
結果として、スイスフランの価値が爆発的に急騰し、ユーロが暴落してしまったのです。ほんの数十分の出来事でした。
EURCHF 15mチャート
上図は当時の15分チャートです。ニュース速報後、15分でEURCHFは1.20から0.9400まで急下降、2,000pips以上下がりました。続けて次の15分には0.85を下回る局面もあり、EURCHFはわずか30分で3,600~3,800pips程度下がったことになります。
3,800pipsを日本円にすれば・・・
- 1000通貨 → 38,000円
- 10,000通貨 → 380,000円
- 100,000通貨 → 3,800,000円
- 1,000,000通貨 → 38,000,000円
ぐらいの金額になります。あまりにも凄いボラティリティで、ロスカットが間に合わずにマイナス金額(FX業者への負債)を出したトレーダーが続出しました。
※分足チャートのこの時間は空白となったFX業者がほとんどでした。
円やその他の通貨も暴落!
スイスフランショックで一番打撃を受けたのは、EURCHFですが、国内では、実はEURCHFの取引自体は少なかったとのことです。むしろ、ユーロの暴落から波及したUSDCHFやCHFJPYなど、その他通貨ペアの暴落(高騰)で損した人が多かったようです。
対ドル・対ユーロのスイスフラン(2011~2015)
スイスフランの衝撃は、またたく間にその他通貨や金融市場にも影響。対ドルでは1.1702と2013年以来の高値をつけ、USDCHFは1.02795からでは0.81615まで急落しました。
GBPCHF/USDCHF
GBPCHFも例にもれず、激しい動きを見せました。1.5560あたりから15分で1.2226まで急落、30分後に1.1842の安値をつけています。
CHFJPY/EURJPY
ここで注視しておきたいのがCHFJPYです。EURCHFがあまりにも騒がれていたため、CHFJPYの価格動向があまり取り上げられていないのですが、結構すごいです。113円だったCHFJPYは15分で142.74まで上昇、30分で151円の高値に達しているのです。約39円の値動きがあったわけで、EURCHFに負けず劣らずの凄まじさでした。
一方では、通貨高による輸出産業の悪化が懸念され、スイス株式は暴落しています。
参照:Swiss Franc to US dollar – Exchange Rates UK
スイスフランショックを引き起こした理由とは
スイスフランショックは、スイス中銀による「為替介入の撤廃」のニュースが起爆剤となりました。スイス中銀は「なぜ、為替介入を突然撤廃したのか」「なぜここまで急減な変動を引き起こしたのか」、ここでスイスフランショックを引き起こしたいくつかの要因を解説していきます。
なぜ、誰も予測できなかったの!?
なぜ、ここまで暴落したの!?
今さらだけど、理由が知りたい!
怖いよ~。
為替介入の撤廃はあまりにも突然だった!
スイス中銀 為替介入の撤廃を発表
スイス国立銀行(中央銀行)は15日、過去3年にわたり維持してきたスイスフランの対ユーロの上限、1ユーロ=1.20フランを廃止すると発表した。発表を受けてスイスフランは30%近く急騰、通貨高による輸出下押しへの懸念からスイス株は急落した。
2015年1月15日/日本時間7:13PM
出典:スイス中銀がフラン上限廃止 – REUTERS
スイス中銀は直後の会見にて、今回の政策の効果を期待するためには、市場の不意をつく必要があったと言及しています。あえて、市場にはひた隠しにして、気配さえも見せていなかったようです。撤廃を示唆するどころか、12日にはスイスフランの為替介入は今後も継続する、といった表明すら行っています。
「まさかの撤廃」を打ち出し、市場の期待・予想を裏切ることで大きな効果を得たい、というスイス中銀の思惑があったようです。かすかな可能性さえ予想させなかったスイス中銀の戦略どおりに、FX市場はパニック状態に陥りスイス高を加速させたのでした。
※ちなみに、日銀が2022年9月~10月に行った為替介入も「不意打ち」による「大きな効果」が得られています。
10月21日は日本時間の深夜、24日は早朝と為替介入への警戒が薄い時間帯だった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作氏は「市場が油断している時間を狙った『奇襲』で、投機筋によるその後の円売りをちゅうちょさせる点では効果はあった」と説明する。
出典:財政状況で円安再燃も – 日経新聞
スイス中銀が「為替介入」を始めた理由
ここで、なぜスイス中銀はそもそも対ユーロで「為替介入」を行っていたのか、見ておきましょう。
「為替介入」を開始したのは2011年9月、2007年のリーマンショック~2011年にかけて欧州は債務危機に陥り、ユーロの下降が止まらないことがきっかけでした。経済恐慌への懸念から安全資産と呼ばれるスイスフランの買いが進み、「ユーロ安スイスフラン高」が数年以上続いたのです。
スイスフラン高が進みすぎると、スイス国内外を問わずスイスの商品が売れなくなってしまいます。欧州の他競合に比べて割高となったスイス輸出業業者の収益は悪化、観光業、小売り業と痛手を負っていたのでした。
そこで、スイス経済の回復に向けて実施されたのがスイス高を食い止めるための「為替介入」だったのです。スイス中銀は約3年に渡って、EURCHFが1.20以下に下がらないよう操作していたのです。
当時、政策として「1ユーロ = 1.20スイスフラン」を上限に、為替介入を行うことを公表しています。この時は「ユーロ買い・スイスフラン売り」でEURCHFは高騰しています。
ECBの金融政策が懸念材料となっていた
撤廃に動いた理由は、いくつか説がありますが、1つはECB(欧州委員会)の利下げ・金融緩和への観測が強まっていたからだと言われています。もし、ECBの金融緩和が現実となれば、ユーロ安の圧力が強まり、ユーロを買い続けることが困難になります。
為替介入の効果が限定的だった
もう1つは、為替介入によるスイス経済への影響が思ったよりも弱かったことです。リーマンショックによる経済低迷が尾を引いているのはスイスだけではなかったわけで、スイス安がもたらす回復力は限定的でした。
スイス中銀のバランシートは火の車だった
そして、決定的な要因は2014年末、気が付けばスイス銀行のバランスシートは巨額のユーロを抱えたまま、スイス経済の回復もままならず、かなり危うい状態にあったことです。金に交換するなどの緊急策が持ち上がっていた矢先、年明けに介入撤回を決意したとのことです。
情報公開への圧力で収益が減少との噂も
また、匿名性が高く、秘密主義を徹底していたスイス銀行に、海外から脱税捜査の圧力が強まり、急激に収益が減少したからだとの噂もあったようです。
参照:Why Swizerland Scraped the Euro – Investpedia
参照:Swiss Franc Soar After Central Drops Cap – The New York Times
1.20サポートラインの悲劇
さらに、突然の撤回だったことに加えて、「1.20のサポートライン」が意識されすぎていたことも、スイスフランショックを加速させました。
為替介入は、スイスの金融政策として公表されていました。2011年以来「1ユーロ = 1.20スイスフランがユーロ安の限界」という常識が固まっていたのです。
スイスフランの売りポジションが集中していた!
ユーロ/スイスフランの為替レート1.20が3年間に渡って、強靭なサポートラインとなっていました。そこで「ユーロ買い」「スイスフラン売り」を入れるのが恒例となっていたことが悲劇を招いたのでした。
スイスフランショック直後の楽天証券の調査によると、シカゴIMMの通貨ポジション統計では、1.20付近で「スイスフラン売り」が26,444ポジションも溜まっていたと報告されています。これらのポジションは、スイスフランの高騰と同時に一斉にロスカットされ、スイスフランの価値を押し上げるかたちとなりました。
誰にも予測できなかった
スイスフランが爆発的な高騰を果たした理由をまとめると、為替介入の根拠が理にかなっていただけに、誰にも予測できない事態を招きました。世界中のトレーダーが、対ユーロでは、「スイスフランは1.20以上に上がらない」「上がるわけがない」「だってスイス中銀がそう言っている」と信じて疑わなかったわけです。
ECBのラガルド総裁は、「スイス中銀の行動には驚いた。私にすら知らされなかった。」と発言しています。
スイスフランショックで大儲けした人・大損した人
スイスフランショックは、FX業界では大暴落・大損失・大借金の代名詞として語られるようになりましたが、当然ながら、この大変動劇にあやかって稼いだ投資家もいます。
人が借金で苦しんでいるのに
大儲けした人もいるなんて!
これだからFXはわからない!
ここでは、スイスフランショックで大きく稼いだ人、大損した人、借金を負ってしまった人について実例を調査してみました。どれくらい稼げて、どれくらいの借金になったのか、参考までに見ていきましょう。
数千万円以上を稼いだトレーダーもいる
まずは、あの騒動の最中に幸運にも利益を得たケースをご紹介します。2チャンネルのスレッドを見ていきましょう。
稼げました!儲かりました!ありがとう!
怖いくらいに稼げてしまった!
これで引退します・・・
他にも・・・
「特上寿司を頼もう」「税金が1600万円」「これで人生やり直せる」「前年の損失取り返した」
など、稼いだことを示唆する口コミがいくつかありました。あまりにも大きな利益で、引退します、というトレーダーが何だかとてもリアルです。
借金に苦しむトレーダーが続発
確かに稼いだトレーダーもいますが、圧倒的に多かったのはやはり損失・借金を出したケースです。
金融先物取引業協会は、スイスフランショックのロスカット未収金額は33億円超えだったと公表、この金額は2023年10月時点においても最高記録(最悪記録?)となっています。
ロスカット未収金額とは、ロスカットが間に合わずにマイナス残高(FX業者への負債)となった金額のことです。
33億円の内訳として個人部門が19億円、法人部門が14億円でした。件数では個人が1,137件、法人が92件となっています。平均すると個人1人で約160万円の負債、法人の場合はもっとシビアとなり平均1社で1,500万円の負債を出したと計算になります。GMOクリック証券では、1.1億円の未収金が発生したとのことです。
ただし、この数字はマイナス残高の場合ですので、実質の損失額はもっと多額の数字が出ていると想定できるでしょう。
どれくらいの損失・借金になったのか?
投稿、口コミ、ニュース情報などから当時の実況投稿を調べてみました。いきなり損失で終わった例やロスカットでマイナス残高となった口コミを見ていきましょう。
マイナス残高でロスカット!
参照:スイスフランのレートに一喜一憂するスレ – 2チャンネル
数百万円の損失や借金ならイメージできますが、数千万円になると想像することすら難しいです。途方に暮れたトレーダーはさぞかし多かったことでしょう。別で、相応の貯蓄をしていない限りは、これらの金額は借金として返済しなければならないのです。
そこで、その借金に苦しんだトレーダーに残された道は「自己破産」です。通常、「自己破産」はレバレッジをかけるFXなどには適用されないのですが、「裁量免責」の方向で手続きすると裁判所の判断で「自己破産」が可能です。その代わり、FX自己破産で腕のいい弁護士に依頼する必要があります。やり方次第だということです。
海外ではどうだったのか!?
海外のスイスフランショックの影響も調べてみました。海外では面白いことに「The CHF Tsunami(津波)」「The Swiss Tsunami(津波)」などのタイトルがニュースや投稿の見出しにつけられていました。
グローバル投稿サイト「FOREX FACTORY」では、1月15日=16日かけて、大損した(ごく一部は稼いだ)トレーダーの投稿が絶えることなく続きました。簡単な和訳をつけておきました。
2日連続で稼いだ!
ALPARIで、昨日2,000ドル(約23万円)無事に出金できました。ありがたい。今日もトレードで2,900ドル(約33万円)稼いだよ。
by Forex Factory
両建てしてたのにロスカットでマイナス残高!
GBPCHFの買いと売りの両建てで50pipsの開きがあった。両方ともー4000pipsのロスカットで、しかも残高は-142,000ドル(1,600万円ぐらい)。
by Forex Factory
なぜか4,000万ドルの借金!どうやって返す?
サクソバンクでショートのオプションしてたら、20,000ドルが16,000ドルに減ったから、出金しようとしたらできない。清算が後になって行われて、何と400,000ドル(約4,500万円)の損失が出ているとのこと。どうやって返す?誰か教えて。ストップできなかったのに、こちらのせいなのか!
by Forex Factory
「今日はたまたまトレードを休んでいた!神様のおかげで助かった」
「30分ぐらいでPCに戻ってきたら、とんでもないことになっていた」
「20pipsの利確で買いを入れたら、何と200pipsもずれて約定、しかも利確はもとの20pipsに!14,000ドルなくなった」
国内と変わらず、海外でも深刻な投稿が相次ぎました。中にはカジュアルでちょっと笑える投稿もありました。いわゆるオフショア系のハイレバ海外FXではなく、自国のFX業者で日本のようにマイナス残高を出したケースもあったようです。マイナス残高はFX業者の責任ではないのかと問いかけるスレッドも結構ありました。
参照: The CHF Tsunami 15 January – FOREX FACTORY
破産したFX業者・証券会社
トレーダーだけでなく、FX業者・証券会社にもスイスフランショックは大きなダメージを与えました。とりわけ、業者の場合はトレードの規模も大きいことや、顧客のロスカット損失による損害も半端ではなかったようです。
国内業者の場合
国内では、損失は出ているものの経営破綻に至ったFX業者はありませんでした。スイスフランが、日本ではそこまでメジャーな通貨ではなかったことが幸いしたのかもしれません。
海外業者の場合
海外では、多くのFX業者・証券会社や銀行にて深刻なダメージが見られています。英国大手銀行のBarclaysは億単位の損失を計上、FX業者Alpari(アルパリUK)は顧客の損失がカバーできずに経営破綻を宣告しました。IG証券は日本円で4,000億円相当の損失が出たと報道されました。
米国のFXCMは、顧客の損失が2億5千万ドル(約337億円)に及び、資本面での救済を協議していると公表。FXCMの株価はプレマーケットで90%以上下落したのでした。ニュージーランドや香港でも同様に多額の損失が発生している旨が明らかにされています。
FX業者の場合も、スイスフランショックで利益が得られたケースがあります。米外資系のゲインキャピタルHD(Forex.com)は、混乱の中で利益を確保したと発表、同社の株価は3.6%上昇しました。
参照:Swiss franc shock shuts some FX brokers – REUTERS
参照:「スイスフランショック」の余波世界に – REUTERS
FX業者が経営破綻した場合の対応
経営破綻したアルパリUKは日本にも支社アルパリ・ジャパンを構えていました。利用していた日本人トレーダーも多かったようです。すべてのポジションが強制決済となりましたが、金融庁の認可を受けた登録業者だったため、倒産の際には信託保全にて資金は返還されました。
FXCMも日本法人がありましたが、スイスフランショックのあと、2015年4月に楽天証券の100%子会社となり、急場をしのいでいます。顧客資金もそのまま移行されました。
海外FXでは基本的にゼロカット保証だったが・・・
XM、Axiory、iForexなど海外FXではゼロカットを採用するのが一般的です。スイスフランショックほどの大暴落でも、海外FXを利用していたトレーダーは、ロスカットによるマイナス残高は避けられたようです。
ただし、海外FXのゼロカット保証で注意しておきたいのは、FXDDという業者は当時スイスフランショックが起きたあとで、ゼロカット保証を撤回していることです。マイナス分を別口座から引き落としたり、出金額や新たな入金額から引き落としたりで一気に非難を浴びる結果となりました。
海外FXの規約に法的拘束力はない!
FXDDの言い分では、万が一の時には顧客はマイナス残高分を支払う責任がある、と同意書に表記してあるとのことでした。ただ、そもそも無登録業者であり、日本の法律の管轄外となるため、法的拘束力はありません。突然のゼロカット撤回で損したトレーダーもいるでしょうが、マイナス額の返済義務もないことになります。
いずれにしても、スイスフランショックのような事態が起きた時には、倒産リスクが高く信託保全の義務もない海外FX業者の利用は非常に危険だといえるでしょう。
スイスフランの現状と今後の展開
さて、2015年に起きたスイスフランについて理解が深まったところで、今後のスイスフランに興味を持つトレーダーもいるでしょう。
この機会に、スイスフランの現状や
今後の見通しを軽くご紹介しておきましょう。
スイスは、日本よりも小さな面積の小国であるにもかかわらず、世界有数の大手金融機関、大手グローバル企業が集結している経済大国の1つです。GDP総額は世界で20位前後、1人あたりのGDPは2022年度は2位にランクインしています。
スイスGDP推移
国民全体の生活水準が高く、医薬品や精密機器、食品などの輸出産業にて貿易黒字・安定した成長を維持しています。ネスレやロシェ、アデコ、チューリッヒ保険や、UBS(スイス銀行グループ)、クレディスイスなど日本でも有名です。米国や欧州にネガティブ要因があると、安全資産としてスイスフランに資金が流れる傾向にあるのです。
そんなスイスでも、これまでの信頼性を
覆すような出来事があったのです。
安定した経済力と歴代の金融大手をバックグラウンドに持つスイスですが、2023年3月、スイスを代表する大手銀行クレディ・スイスが経営破綻に陥ってしまいました。スイスフランの安全性に、若干の陰りが出てきているのです。
2023年3月クレディ・スイス経営破綻!?
3月16日、クレディ・スイスは2007年以来の収益悪化で経営破綻に危機に瀕していることを発表。ここ数年にわたって、クレディスイスではマネー・ロンダリング、スパイ疑惑などスキャンダルが続いていました。2022年後半あたりから、前例のない顧客離れが見られ、23年2月には約1400億ドル(約15兆円)が流出し、致命的な状況に陥ったのです。
クレディ・スイスの預金高の推移
ちょうど3月には、米カリフォルニア州のSVB(シリコンバレーバンク)などの、ハイテク系地銀の破綻が続いていたため、リーマンショックの再来を恐れたパニック売りが銀行株を襲いました。米ドル、スイスフラン、ユーロは売られ、超ウルトラ低金利・保守派の円に資金が流入。クレディスイスの株価は1スイスフラン以下に暴落し、そのほとんどの価値を失いました。
参照:クレディ・スイスを危機に陥れたのは何か – Bloomberg
出典:Swiss central bank posts biggest loss – CNBC
UBSがクレディ・スイスを救済買収
167年の歴史と実績を持つ大手金融クレディ・スイスの経営破綻は、スイス経済のみならず、世界経済への脅威となり得ます。緊急策が必要だと、助け舟に乗り出したのが、ライバル銀行であったUBS(スイス銀行グループ)です。
6月には、救済買収によって生じる90億フラン(約1兆4,000億円)をスイス政府がバックアップすることを前提に、UBSのクレディ・スイス買収が決定しました。本格的にUBSの資本形態にクレディ・スイスの要件が組み入れられるまで、2年の猶予が設けてあります。この両者の合併統合は、2007年来の最大規模を記録し、470兆円規模の投資資産を有する大手銀の誕生となりました。
安全資産としてのスイスフランの行方は?
スイスは金融業の資産比率が世界で最も高く、対GDPで520%を占めています。特に、海外での売上げが大きく金融セクター全体の2割を占めているとのことです。金融立国としてのスイスの歴史は1,800年代にまでさかのぼります。2回の大戦・数々の紛争がある中、スイスの中立性が世界中から顧客を集め、スイス金融業に大きく寄与したといわれています。
ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナなど戦争が勃発する2023年、今後もスイスが中立性をどの程度維持できるのかが1つの要素となるでしょう。
そして、さらに考慮しておきたいのがスイスの政策金利です。かつては、日本・欧州と肩を並べてマイナス金利を維持していましたが、現在は1.50~1.75とやや高めです。欧米ほどではないとしても、金利によるスイスフラン買いが進む局面もあります。加えて、クレディ・スイスの1件もあったことから、安全資産としての役割は低減する可能性はあります。
今後は、戦争などの地政学リスクが高まった時や、米経済にネガティブ要因が発した時などは、スイスフランよりも日本円に注意が向くかもしれません。ただ、依然としてスイス金融・スイス中銀の影響力は念頭に置いておきたいものです。
スイスフランショックから学んだ教訓とは
ここまでで、スイスフランショックやスイス経済のことがだいぶん分かってきました。経済規模が半端ではない中央銀行や大手銀行の影響力は非常に大きいということです。それでは、最後にスイスフランショックの出来事を教訓に、FXで守るべき5つのポイントをまとめておきます。
資金管理やリスク管理のコツを
スイスフランショックから学べました!
FXで守るべき5つのポイント
- 投資資金と生活費・貯蓄はきっちりと分ける(大損しても生活していける!)
- 投資資金のすべてをトレードに使わない(投資にも余剰資金が必要!)
- 変動が激しい時は様子を見る(安易に飛び乗ると危険!)
- ニュースとチャートはこまめにチェック(早期発見なら傷も軽い!)
- 低レバレッジ、高い維持率、損切設定を心がける(被害も最小限!)
やはり、最初に肝心なのは、FXトレードにかける資金と生活費・貯蓄分を完全に分離しておくことです。そうすれば、全額失ったとしても(マイナス金額をつくったとしても)、何とかやっていけますし、借金のリスクも低減できます。
また、投資資金すべてをFX口座に入れておかないことも重要です。いざという時の追証や、敗者復活戦のために資金をとっておきましょう。
一番大切なのは、低レバレッジで高い証拠金維持率を確保しておくことと、損切設定です。そうすることで、万が一、マイナス残高になったとしても最小限に抑えていけます。
まとめ
今回ご紹介したように、FXトレードではある日突然、何らかの理由で相場が激しく変動してしまうことがあります。なぜ、スイスフランショックがいまだに時々取り上げられるのか、FXの恐ろしさがよく理解できたのではないでしょうか。市場を揺るがすような大変動は、そう頻繁に訪れることではありませんが、それがいつなのか誰にもわからないのです。
強気の上昇が続いていても、これは下がるとの理由があったとしても、FXに絶対はありません。未来は完全に未知数であり、それが魅力でもあると同時に、一寸先はつねに闇となるリスクが待ち構えています。普段から、リスク管理・資産管理をトレーダー自身でしっかり行い、つねに最悪の事態に備えておくことが欠かせません。
どんなに勝てている時でも、スイスフランショックの教訓を忘れずに、生き残っていきたいものです。
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