私たちが普段よく見ているローソク足ですが、実は日本の江戸時代に誕生しました。
その後、欧米でもローソク足が知られるようになり、世界中のトレーダーがローソク足チャートを見て、トレードを行っています。
ローソク足の考案者については諸説ありますが、相場師の「本間宗久(ほんまそうきゅう)」という人物であると言われています。
彼は江戸時代の米相場で財産を築いた人物です。
本間宗久は現在の山形県酒田市出身で、『酒田五法』という手法の名前の由来にもなっています。
今回紹介するのは「酒田五法」というローソク足の分析手法です。
『プライスアクション』や『チャートパターン分析』とも言い換えることができます。
多くのトレーダーが知っているトリプルトップは『三山(さんざん)』、ヘッドアンドショルダーは『三尊(さんぞん)』という名前で酒田五法の中にまとめられています。
酒田五法の考えた方を知れば、ローソク足だけでトレードするプライスアクションや、チャートパターン分析の考え方が理解できるようになります。
今回は前半と後半に分けて、じっくり酒田五法について検証していきましょう。
注目ポイント
・酒田五法の基本である5つのパターンは?
・酒田五法で覚えたい3つのローソク足とは?
・酒田五法はスキャルピングで利用できる?
1 酒田五法の基本~5つのチャートパターン~
酒田五法には、5つのチャートパターン分析とローソク足を組み合わせたローソク足分析が紹介されています。
この章では、酒田五法の基本である5つのチャートパターンを解説していきます。
1-1 三山は天井のローソク足に注目
三山とは、大天井の大型を表す線。底値より波乱を繰り返しながら上進して下押す、この運動を三度繰り返して大天井を打つものならば・・・
酒田五法の「三山」は、「トリプルトップ」という名称で一般に知られています。
下記の図のように山が3つ連なっているチャートの形のことです。
相場の天井を見極める方法として知られ、3回突破できなかった高値は諦めるだろうという推測をし、売り仕掛けができるポイントがないかを探します。
酒田五法のすごいところは、天井で逆張りをするのではなく、『天井を確認したら、順張りの売り仕掛けをしろ』という部分です。天井を狙ってしまいがちですが、酒田五法は奥深いです。
同じようなチャートパターンである『ダブルトップ』は、三山(トリプルトップ)の出現数が限られていることから2つの山でも天井になる確率が高いだろう、という考え方です。
これも広く知られている考え方ですが、経験則でいうと、やはり三山の形であるトリプルトップの方が天井になりやすいと思います。
三山のトップが「上髭陰線」というローソク足の形になっていると、よりトレードの優位性が上がります。
トリプルトップの天井付近にあるローソク足の形に注目しましょう!
3つの山の形が現れたら、天井になる確率が高い!
天井になったことを確認してから順張りで売りエントリーをするのが鉄則です!
1-2 三尊はヘッドアンドショルダー
3つの山の真ん中の山が一番高いパターンを「三尊(さんぞん)」と呼びます。
ヘッドアンドショルダーとしても知られているチャートパターンですね。
三尊は2つ目の山が他の山よりも高い形です。1つ目と3つ目の山は高値圏にありますが、同じ価格である必要はありません。
トレーダーの心理的に「もう高値を更新できないだろう・・。
上昇トレンドが終わり、下落基調になるのではないか」と思い始めます。
ネックラインを割ったポイントで、買いポジションを持っているトレーダーは損切りをし始め、順張りで売りを仕掛けるトレーダーが増加します。
それで、ネックラインを割ると、一気に価格が下落を始めます。
天井付近から仕掛けることができればいいのですが、3つの山の形成が完了してから「三尊の形だったんだ」と判断できます。
ネックラインを終値で割るまでは我慢です。日足で三尊が出現したらチャンスです。
1-3 三川は底値圏で発生するチャートパターン
三川は三山の反対にして、底値にて突っ込みては戻すという運動を繰り返すというパターン。大底の意にして大体数ヶ月下落して起こる現象なります。
三川(さんせん)は三山(さんざん)の逆の形である「逆三尊」という解釈もあれば、3つのローソク足の並び方に注目した分析法だという解釈もあります。
三川は酒田五法の中でもバリエーションが豊富な形です。
三山はチャートの形に注目しているのに対し、三川はローソク足の形に注目しているという違いがあります。(※諸説あり)
三川については、2章で詳しく解説します。
1-4 三兵が出現したら順張り
三兵とは上進開始の表徴にて、永く保ち合いたる市況が小短線にて陽線三本を連続して幾分づつ上位に進み表示するものにて 大上げの前兆としるべし。
酒田五法では、上昇のローソク足を「赤」、下落のローソク足を「黒」で表します。
着実に上昇をしていく陽線の3本連続したローソク足の組み合わせを『赤三兵』といい、逆の陰線が3本連続している組み合わせを『黒三兵』と呼びます。
1-5 三法は一時的な停滞シグナル
「休むも相場なり」という言葉がありますが、相場には買い、売り、休みという3つの局面があると言われます。
それを表しているのが『三法』と言えます。
上げ三法
手前の三連続陰線を抜く大きな陽線が出現したら、利食いが一巡したとみなし、買い増しポイントとなります。
下げ三法
手前の三連続陽線を抜く大きな陰線が出現したら、利食いが一巡したとみなし、売り増しポイントとなります。
この三法ですが、非常にシンプルかつ非常に有効なシグナルだと思います。
下記のチャートで確認してみましょう。ユーロドルの1時間足チャートです。
上記のチャートに示しているのが「下げ三法」と呼ばれるローソク足の組み合わせです。
一時的に停滞するシグナルですが、陰線と陰線の中に3本の陽線が出現しています。
下げ三法の後に相場が大きく下落していることが分かります。
トレンドの発生期間中に出現する小休止の相場です。
一度小休止することで、再びトレンド方向へ相場が伸び始めるシグナルです。
強いトレンドが出現している場合、この三法が出現する確率が高くなります。
プライスアクションの原点のような考え方ですが、ぜひ様々な銘柄で探してみてください。
時間足は1分足から日足までどの時間足でも有効です。
1-6 三空は株式市場や先物市場で活用する
三空踏み上げは売り向かうべし
三空叩き込みは買い向かうべし
最後に紹介する『三空(さんくう)』ですが、FX市場で活躍する場面はほとんどありません。
主に株式市場や先物市場で活用するものです。
『空』は相場の窓を表し、3本連続で相場の窓が開いたら、反対方向に仕掛けるシグナルとされています。
2 酒田五法を応用したプライスアクション【一覧表】
三川は3つのローソク足の組み合わせで相場の予測をするのに活用できます。
2-1 三川は酒田五法の中心的な考え方
三川のバリエーションは非常に豊富で、すべてを細かく覚える必要はありません。
代表的な三川の形を覚えるだけでも、「相場観」を養うことができます。
ローソク足は、1つの形から様々なことを読み取ることができる非常に奥深いチャート形式です。
酒田五法の三川もローソク足の特徴を活かした元祖プライスアクショントレード手法です。
プライスアクションをマスターしたいトレーダーは、三川に注目して代表的なローソク足の組み合わせと基本的なシグナルを覚えましょう。
2-2 三川を構成するローソク足の基本形
星
十字線とも呼びます。
大陽線の後に十字線(星)が出現し、次の足が陰線となれば下落する可能性があります。
反対に大陰線の後に十字線が出現し、次の足が陽線となれば上昇反転の可能性が高くなります。
星が出現したら、相場の転換に注意しましょう。
はらみ足
インサイドバーとも呼ばれているはらみ足は、大陽線の後に小陰線が出現するローソク足の組み合わせです。
小陰線の実体部分が大陽線の中にある必要があります。
はらみ足は「相場が転換するかもしれない」というレベルです。
確定ではないので、そのままトレンドが継続する場合も多く、他のインジケータやプライスアクションなどを見て総合的に判断する必要があります。
ポイントは、時間足の単位を小さくしてみることです。
例えば、日足ではらみ足になっている場合、4時間足や1時間足にしてみると、トライアングルなど別のチャートパターンが出現していることがあります。
はらみ足が出現したら時間単位を小さくして、別のチャートパターンが出現していないかどうかを、確認してみましょう!
包み足
アウトサイドバーとも呼ばれている「包み足」は、非常に有効な反転シグナルとなります。
小陽線に包み込むように大陰線が高値圏で出現した場合、その後は下落となる確率が非常に高いです。
反対に安値圏で小陰線を包み込むように大陽線が出現した場合、その後は上昇する確率が高いです。
包み足は高値/安値を更新するため、反転シグナルの中でも信頼性が非常に高いことで知られており、勝率も高いと思います。
押し目買いや戻り売りなどのときにも生じるので、ぜひ確認してみてください。
前章で解説した高値圏で出現する『三山』の『山』に相当するローソク足がすべて包み足になっている場合、ネックラインを割ると勢いよく下落する確率が高くなり、トレードの勝率も非常に高くなります。
他のいろいろなパターンと組み合わせてみるのがおすすめです。
包み足が出現したら、押し目買い/戻り売り、相場の転換期になっていないかを確認し、エントリーを検討してみる。1分足~日足まで基本的にどの時間足でも有効。時間単位が大きいほど、信頼性も高くなる。
かぶせ
かぶせ足は、大陽線のあと、小陰線が高値から大陽線にかぶさるように出現します。はらみ足に似ている組み合わせですが、ローソク足の中心に着目します。
陽線で終わったローソク足の次の陰線が、高値を更新しますが終値は前の陽線の中心価格を割ってしまった組み合わせです。
天井付近で出現すれば、相場の転換点となる可能性が高いと判断します。かぶせ足の逆パターンとして、「切り込み線」「入首線」「差し込み線」などがあります。
たくり
たくり線は、底値圏で出現する下ヒゲが非常に長い線のことです。ヒゲが長いほど反転する確率が高いとされています。
逆パターンとして『首吊り線』があり、天井付近で出現する下ヒゲの長いローソク足は下落を暗示するとされています。
2-3 酒田五法の“三川”で天井と底を見極める
酒田五法の三川の中でも特に有名な組み合わせである「宵の明星(みょうじょう)」「明けの明星(みょうじょう)」について紹介します。
宵の明星
大陽線に続いて『星や十字線』が出現した後、大陰線が出現する形を『宵(よい)の明星』と呼びます。
ちなみに「宵(よい)」とは、夕暮れから夜の初めの部分を示す言葉で、相場が下落することを例えている表現です。
星や十字線が出現するということは、トレンドの勢いが弱まり、買い勢力と売り勢力が拮抗している状態ですね。
そこに反対方向の陰線が出現したということは、売り方向へ転換したということを示します。戻り売りなどの際にも活用できますし、天井付近で出現したら下落トレンドに転換する可能性が高いと判断できます。
明けの明星
大陰線に続いて『星や十字線』が出現した後、大陽線が出現する形を『明けの明星』と呼びます。大陽線が確定した時点で、明けの明星シグナル完成です。
相場がこれから上昇をしていくことを暗示するシグナルです。
宵の明星と同じように、十字線が出現した時点で多くのトレーダーは様子見をします。次の足で大陽線が出現すると、トレンドが転換したと考えるトレーダーが増え始め、上昇していくという流れです。
押し目買いでも活用できますし、底値圏で発生すれば相場の転換シグナルとなる確率が高く、トレードの勝率も上がりやすくなります。
2-4 酒田五法は日足が基本
一般的なインジジケータも同じですが、酒田五法の基本も日足です。しかし、日足より細かい4時間足や1時間足でも十分に活用できます。
プライスアクションに通じる部分もあるので、1分足のスキャルピングにも活用できるでしょう。
酒田五法を使った実際のトレード手法やチャートについては、後編(別記事)で紹介していきます。
3 酒田五法をTradingViewで探してみる
3-1 TradingViewはチャートパターン分析が簡単に可能
TradingViewは有名なチャート分析ツールです。MT4/MT5よりも直感的な操作が可能で、非常に使いやすいツールです。
TradingViewには、三山(トリプルトップ)や三尊(ヘッドアンドショルダー)などを見つけるツールがあります。また、エリオット波動やトライアングルなどの分析ツールもそろっているので、酒田五法と組み合わせて活用すると、トレードの勝率も上げやすくなります。
3-2 酒田五法のパターンをTradingViewで確認しよう
プライスアクションに関するインジケータはありますが、ほとんどが英語表記です。日本語表記のインジケータが執筆時点ではありませんでした。正直、2章で紹介した三川のローソク足の組み合わせや宵の明星/明けの明星などは、インジケータを使わずに探した方が良い気もします。
プライスアクションなので、ローソク足の形を1つずつ覚えて、トレードに活用してみましょう。
4 酒田五法を実際のトレードで活用する方法
ここまで酒田五法の考え方や見方などを中心に解説してきました。
問題なのは、酒田五法をどのように実践で活用するかです。
- 酒田五法はどの時間足でも活用できる?
- 酒田五法を活用したトレードの実際例は?
- 酒田五法を利用してトレードの優位性(エッジ)を高くするには?
次の記事では、酒田五法を実際にトレードで活用する方法を解説していきます。1分足のスキャルピングでも有効な考え方です。
サラリーマントレーダーの方や主婦の方でも、酒田五法を利用すれば、すき間時間のトレードでも利益を積み重ねることが可能になります。
ぜひ次回の記事もお楽しみに。
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