FXのミセスワタナベとは一体誰のこと!?プロが詳しく解説

FXの世界には「ミセスワタナベ」という言葉があります。

初めて聞く方は、この言葉がどこかの女性投資家「渡辺さん」のことだと取られるかもしれません。

しかし結論から先に申し上げますと、ミセスワタナベとは特定の誰かを指した名称のことではなく、日本の個人投資家全般を指す俗称になります。

では、なぜミセスワタナベなのでしょうか?

この記事では、ミセスワタナベが生まれた経緯や、日本の個人投資家の特徴や現状について解説していきます。

FXの個人投資家として気をつける点についても詳しく解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事でわかること
  • ミセスワタナベが生まれた経緯
  • ミセスワタナベの特徴
  • FXの個人投資家が気をつけるべきこと
目次

ミセスワタナベとは

ミセスワタナベとは何者なのかを解説するイメージ

日本の個人投資家がミセスワタナベと呼ばれるようになったのは、FX市場の発展と深く関わり合っています。
詳しく見ていきましょう。

なぜミセスワタナベ?日本のFX市場の発展と個人投資家について

日本の個人投資家を指す「ミセスワタナベ」という言葉は、1997年のイギリスの経済誌に登場します。

イギリスでは大きなリスクを取らない小口の個人投資家を、揶揄する意味合いも込めて「アガサおばさん」(Aunt Agathas)と呼んでいました。

経済誌はこれに倣い、日本人に多い名字を使って日本の個人投資家をミセス・ワタナベと呼んだのが始まりとされています。

男女問わず、日本の個人投資家全般のことを指しており、同時に「投資の素人」的な揶揄する意味合いが込められていますね。

ミセスワタナベが大きく注目され始めたのが2007年頃です。
当時は、1998年より個人での参加が可能になったFX(外国為替証拠金取引)がブームを迎えていた時代。

このころ東京市場において、為替相場の方向性が午前から昼を挟んだ午後にかけて、特段の材料がないのにも関わらず反転するケースが度々見られました。

これは、日本のサラリーマンや主婦などの個人のFX投資家が、昼休みを利用して一斉にFX取引を行っていたことに起因します。

つまり、日本の個人投資家が為替相場を左右させるほど大きな影響力を持っていたということです。

こうして「ミセスワタナベ」は主にFX取引を行う個人投資家のことを指すようになり、世界中の機関投資家たちにとって無視できない存在になっていきます。

ミセスワタナベ1京円突破

2007年頃より存在が注目されるようになったミセスワタナベですが、2012年末頃からのアベノミクス景気によって、さらに取引高が拡大していきます

異次元緩和と称される大規模な金融緩和政策によって、日経平均は上昇し、為替は円高が解消されて大幅な円安方向へと進みました。

その結果、FX市場の個人の取引額も大幅に増加し、2015年には年間5,000兆円を突破します。

その後いったんは落ち込むものの、2020年頃から再び増加に転じ、2022年についに1京円を突破しました。

京は兆のひとつ上の桁になります。つまり1,000兆円の次が1京円です。

2022年でいうと、月間の取引高が1,000兆円を超える月もありました。
これは、銀行間の通貨取引に匹敵するレベルです。

背景には一時150円に迫る円安水準があり、買えば上がるといった取引しやすい環境があったといえ、日本の個人投資家の存在感の大きさがあらためて浮き彫りになった出来事と言えるでしょう。

仮想通貨取引ではミスターワタナベに!?

FX取引以外にも「ミセスワタナベ」は存在します。

特に近年では、仮想通貨(暗号資産)取引で日本の個人投資家の動きが際立っています。

実際に2017年後半から2018年初頭にかけて起こったビットコインバブルの際、ある1ヶ月のビットコイン取引の4割が日本円によるものだったとのことです。

このことを受けて経済誌のウォールストリートジャーナルでは、日本でビットコイン取引を行うのは圧倒的に男性が多いことから、「仮想通貨ビットコインの価格を押し上げているのは、犯罪者や麻薬密売人でもなければ、詐欺師でもない。それは日本人男性だ。」といった記述がされました。

ここから海外の経済誌の間では、日本の仮想通貨の個人投資家に対する「ミスターワタナベ」という呼称が誕生し、ミセスワタナベとは分けて使用される傾向があります。

ミセスワタナベのトレード手法

ミセスワタナベのトレード手法を解説するイメージ

ミセスワタナベのトレードには、ある特定のパターンがあります。
ここからは日本の個人投資家に多いトレードスタイルや人気の通貨ペアについて解説します。

トレードスタイル

ミセスワタナベに多く見られるトレードスタイルは以下の通り。

ミセスワタナベのトレードスタイル
  • 基本はクロス円
  • ロング中心
  • 順張りよりも逆張り

ミセスワタナベのトレードスタイルをひとことでまとめると「ドル円逆張りロング」です。

日本の個人投資家なので、クロス円の取引が多くなるのは必然的ですが、中でも圧倒的にドル円の取引額が多くなっています。

そして、売りよりも買いを好む傾向にあります。
つまりドル円の場合だと、チャートが右肩上がりの円安局面が、ミセスワタナベにとっての絶好のトレードチャンスということです。

実際に、円安に振れると取引額が増加する傾向があります。
年間取引額1京円を突破したもの、1ドル150円に迫る歴史的な円安局面でした。

また、逆張りが多いのも大きな特徴になります。
特に言われているのが、値ごろ感による逆張りです。

つまり、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析というよりも、現状価格からいくら値下がりしたら買うといったトレードスタイルが多い傾向にあります。

ミセスワタナベに人気の通貨ペア

ミセスワタナベには、ドル円やユーロ円などのメジャーなクロス円通貨ペアのほか、いわゆる高金利通貨が人気です。

具体的には以下の通貨ペアになります。

  • 豪ドル/円
  • NZドル/円
  • 南アフリカランド/円
  • メキシコペソ/円
  • トルコリラ/円

これらの通貨ペアのロングがミセスワタナベの典型的なトレードパターンです。

またこれらの通貨のロングはスワップポイントが発生します。
そのため、スワップ狙いの中長期的なトレードが多いこともミセスワタナベの特徴としてあげられます。

ミセスワタナベは投機筋のいいカモ?

ミセスワタナベのパターン化したトレードスタイルは、投機筋から狙われてもおかしくはありません。

特に危険なのが値ごろ感によるストップを置かないトレードです。

ストップロス(損切り)を置かないトレーダーは、相場の値動きに振り回されて損切り決済する傾向があり、投機筋にとってはまさにいいカモになってしまいます。

いわゆるストップ狩りというやつです。

実際に市場では「ミセスワタナベは世界で一番チャーミング」といった声も聞かれます。
これはもちろん称賛ではなく、絶好のカモという意味。

そのため、値ごろ感によるストップを置かないトレードには十分注意が必要です。

ミセスワタナベにまつわる事件簿

ミセスワタナベにまつわる事件簿を解説するイメージ

ここではミセスワタナベが一躍注目されるようになったある事件と、気をつけたい「ミセスワタナベ狩り」について解説します。

普通の主婦がFXで8億円稼ぐ→脱税で有罪

2007年、東京都の主婦池辺雪子さんは、FXで利益を出すも納税額1億3,000万を脱税したとして東京国税局に告発されました。

池辺さんは2003年から2005年の3年間で4億円を稼ぎ、その間納税していなかったとのこと。
ほどなく所得税法違反容疑で起訴され有罪となります。

この件は海外メディアでも大々的に報道され、いち個人投資家が稼いだ金額の大きさからも、日本のミセスワタナベを世界に知らしめる事件となりました。

ちなみに、池辺さんはFXを2000年ごろから始め、稼いだ利益は8億円にも上るとのことです。

早朝のミセスワタナベ狩り

「ミセスワタナベ狩り」とは、投機筋が日本人個人投資家の独特のパターンを狙って為替相場を急激に変動させ、その変動に乗じて利益を得ることを指します。

ミセスワタナベ狩りが行われやすい時間帯は以下の通りです。

  • 6:00〜8:00(NY市場終了~東京市場開始の間)
  • 15:00〜16:00(東京市場終了~ロンドン市場開始の間)

特に気をつけたいのが日本時間の6:00〜8:00の間の時間帯です。

この時間帯には、過去に何度もクロス円通貨ペアの不自然な急騰・急落が起きています。

中でもトルコリラは、暴落とも言える値動きを幾度となく見せており、高金利通貨のロングを好むミセスワタナベが相当な損失を被ったのは想像に難くありません。

そのため、日本時間の早朝や東京市場終了後の時間帯では、しっかり損切りを設定したり、ポジションを軽くしておくなどの工夫が必要になります。

FXの個人投資家が気をつけるべきこと

FXの個人投資家が気をつけるべきことを解説するイメージ

FXは高い利益を狙える一方、リスクも大きい投資です。
ここからはFXの個人投資家が気をつけるべきことについて解説していきます。

投資と投機の違いを理解する

FXは投資と投機の両方の側面を持っています。

投資とは将来的な収益を期待して保有することですが、投機とは短期的な利益を狙って資産を取引することです。

株や不動産取引は投資、FXは投機という分け方をされたりもします。

FXの場合、短期間で取引が完結するのが一般的で、なおかつゼロサムゲームになります。

ゼロサムゲームとは、1つの勝者がいる場合は必ず敗者が存在し、全体としての利益がゼロになるゲームのこと。
つまり、FXで勝つ人がいれば、その影に必ず負けている人がいるということです。

このように、FXはかなり投機に近い性質を持っており、個人投資家は自分が行っているのが投資か投機なのかをしっかり把握することが重要になります。

機関投資家の存在

投資家は大きく分けると「個人投資家」と「機関投資家」に分けられます。

機関投資家とは、生命保険や銀行、証券会社などの金融機関、ヘッジファンドといった投資のプロのことです。

機関投資家と個人投資家では、扱う資金額は比べ物になりません。
相場の大きな流れは機関投資家が作っていると言っても過言ではないでしょう。

したがって、個人投資家が行う値ごろ感による安易な逆張りや、損切りを置かないトレードはとてもリスクがあるということです。

そのため、個人投資家は相場の大きな流れに逆らわない姿勢が重要になります。

トレードルールに従う

投機の一面を持つFXですが、決してギャンブルではありません。
ギャンブルは運に依存しているのに対して、FXはリスクを管理し、正しい知識と戦略を持つことが利益に結びつきます。

したがって、FXではトレードの指針たるトレードルールの存在が重要になります。

何もルールがなく、ひらめきや感情の赴くままにエントリーしていても、投機筋のいいカモになるだけです。

FXに参加する個人投資家の9割が負けて退場しているなんてデータもありますからね。

「環境認識」「エントリータイミング」「損切りと利確」といったトレードの核になる部分については、しっかりとしたルールに基づいてトレードを行うようにしましょう。

余剰資金でトレードする

リスク管理の一環として、FXは必ず余剰資金で行うことが重要になります。
余剰資金とは、生活費や将来の備えを除いた投資に回せるお金のことです。

全財産を賭けて勝負するなんていうのは、もはやギャンブルの粋を超えません。

FXで借金を負って破産した個人投資家の話はよく耳にします。
FX行う個人投資家の7割は、1年以内に退場するというデータもありますので注意しましょう。

まずは余剰資金の範囲を明確にし、それを超えてトレードしないようにすることが必要になります。

信頼できるFX業者でトレードする

FXでは業者選びも重要になります。

特に気をつけたいのが海外FX業者です。

基本的に海外FX業者は、日本の金融商品取引法に基づく登録を受けていいません。
つまり何かトラブルが起きた際に、法律は守ってくれないということです。

海外FXのハイレバレッジやボーナスは、日本のFXにはないもので魅力的に映るかもしれませんが、少なからずリスクがあることだけは認識しておきましょう。

まとめ

記事をまとめるイメージ

ここまでミセスワタナベについて詳しく見てきました。

ミセスワタナベが最初に話題になった当時は、おかしなポジションを取ったり、市場をかき回しているといった存在だったようです。

しかし、いまでは日本の個人投資家は世界中の機関投資家に一目置かれる存在であり、プロ並みのトレーダーも多くいることで知られています。

そんな上級者のミセスワタナベになれるよう、日々トレードを重ねていきましょう。

この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

WikiFXでは、テクニカル分析のやり方から、FX会社の安全性に関する情報まで『今日から役立つFXの情報』を幅広く発信しています。
そして私たちは、FX会社アフィリエイトを一切していません。
だからこそ、正しく・信頼性の高い情報を読者の皆様にお届けする自信があります。

コメント コメント 0

コメントする