FXの移動平均線とは?王道テクニカル指標の使い方を完全解説

FXの基本になるテクニカル指標をマスターしたい

FXを始めたけど何から勉強すればいいかわからない…

移動平均線は初心者トレーダーが最初に学ぶような初歩的なテクニカル指標ですが、世界中のプロトレーダーが手法に取り入れる有用なオシレーターです。

移動平均線をマスターすれば、環境認識からトレードタイミングまでを明確に判断できる強い武器になります。

本記事では、初心者から上級者まで誰もが使いこなすべき移動平均線について解説していきます。

概要やおすすめの期間設定、移動平均線を使った実際のトレード手法も画像付きで細かく解説していくので、ぜひ参考にしてください。

移動平均線を使いこなし、勝ちトレーダーの仲間入りを果たしましょう!

目次

移動平均線とは

移動平均線(Moving Average)は、設定した期間の価格の平均を結んで形成された曲線です。

価格の平均を取って進んでいくので、チャートが上昇すれば同じく移動平均線も上昇していきます。

移動平均線の角度を見ればトレンドの方向も判断できるほか、移動平均線自体がサポートやレジスタンスとして機能する場面もあります。

さらに、期間設定が長い移動平均線に対して短期期間設定の移動平均線が上抜けるとチャート上昇を示唆するなど、移動平均線だけでさまざまな分析が可能です。

使い方が1パターンに限定されていないので、活用するトレーダーが多いのもうなずけますね。

移動平均線の歴史

移動平均線は、1920年頃に米国の経済哲学者であるジョセフ・E・グランビルが開発したといわれています。

同時期に、日本のチャート分析で「からみ足」と呼ばれる同じロジックのインジケーターがあったともされており、移動平均線の明確な開発者は諸説あります。

1960年にグランビルが発行した、移動平均線の解説書である「グランビルの法則」で全世界に広く知れ渡りました。

移動平均線は開発から100年経った今でも使われる、本質的なインジケーターなんですね。

移動平均線の計算方法

移動平均線にも複数の種類がありますが、最も基本的なインジケーターである「単純移動平均線(Simple Moving Average)」の計算式はシンプルです。

設定した期間分の終値を割った値が、最新の移動平均線の値として表示されます。

例えば期間5に設定した移動平均線なら、直近5本のロウソク足の平均が求められます。

該当するロウソク足ドル円の価格
101.0
102.0
102.5
101.5
101.0
最新の単純移動平均線の表示位置(101+102+102.5+101.5+101)÷5=101.6

期間設定が200になっていれば、直近200本の平均値で最新の移動平均線の値が求められます。

移動平均線の期間設定ごとの使い方

移動平均線は期間設定によって短期・中期・長期に分けられます。

それぞれ異なる性質を持ち、理解しておくと移動平均線への理解が深まるので、それぞれ見ていきましょう。

短期設定の移動平均線

短期設定の移動平均線には期間5や15、20や25が頻繁に用いられ、以下のような特徴があります。

  • チャートに沿った動きを見せる
  • 価格と移動平均線が頻繁に触れ合い、突き抜ける場面も多い

短期移動平均は価格に沿った動きを見せるため、短期的なトレンドを測るのに適したテクニカル指標です。

例えば上昇トレンドが見られる場面で、短期移動平均線が価格をサポートした場合は強い短期トレンドが発生している判断されるので、ロングエントリーでのトレンドフォローが可能です。

ただし、トレンドの調整が大きかったり勢いが弱まったりすると突き抜けてしまうケースも多いため、単体で使うならポジションを長く持つよりはスキャルピングトレードに向いています。

期間5は1週間の営業日で期間20は1ヶ月の営業日など、よく使われる設定値には由来がある場合が多いですよ。

中期設定の移動平均線

中期移動平均線としては期間50や75が設定されるケースが多く、以下のような特徴があります。

  • 中期的なトレンドを判断できるので、デイトレード〜スイングトレードに活用できる
  • トレンドの押し戻りの終わりを判断しやすい

中期移動平均線は短期設定よりも大まかなトレンド判断が可能で、押し戻りが発生しても大きなトレンドが終わっていないかを測りやすいのがメリットです。

画像の通り短期移動平均線に比べると価格が突き抜ける回数が少なく、トレンド中に小さなレンジ相場が発生しても移動平均線が上向きなら「上昇トレンドは終わっていない」と判断できるでしょう。

また、短期移動平均線よりも深い押し戻りが発生しても突き抜けづらいので、短期〜中期的なトレンドを追いかけるデイトレードに最適です。

短期移動平均線よりも固い根拠のもと短期トレードができるので、より使いやすい設定だといえるでしょう。

また、中期移動平均線は株のスイングトレードのエントリー判断にも使われるケースも多く、「長期移動平均線と中期移動平均線が同時に上向きになったタイミングでエントリー」などの判断も可能です。

短期トレードから長期トレードまで使えるオールマイティな期間設定なんですね。

長期設定の移動平均線

長期移動平均線としては期間100や200が設定され、以下のような特徴があります。

  • 長期的なトレンドの判断が可能なため、トレンドの方向性を決めるのに最適
  • サポートやレジスタンスとしての力が強い
  • グランビルの法則で用いられる期間設定としても知られる

長期移動平均線は短期トレンドの強さや勢いを判断するのには不向きですが、大きなトレンドを判断するには非常に優れています。

画像のように数ヶ月間以上続くトレンドの方向性も捕捉できるので、短期的に値幅の大きな調整が発生しても迷いのないトレードができるようになります。

また、長期移動平均線は価格と触れ合う回数が低いだけにタッチした際のサポート・レジスタンス力が強く、突き抜ける際でも短期足では一度跳ね返されるなど、多くのケースで何かしらの反応を見せます。

また、移動平均線を世界的にメジャーなテクニカル指標にした「グランビルの法則」では、期間200の移動平均線が用いられているのも特徴です。

移動平均線を使ったトレンド・エントリー判断の基本形となるので、必ず押さえておきたい法則ですね。

グランビルの法則に関しては本記事の「グランビルの法則」で解説しているので、ぜひ参考にしてください。

移動平均線に最強のおすすめ設定はある?

移動平均線のおすすめ設定は使用目的ごとに異なりますが、期間200の移動平均線は使い道が広いため特におすすめの期間設定になります。

移動平均線の期間設定強み
短期移動平均線・短期トレンドの方向性、強さを判断できる
・価格と触れ合う回数が多く、エントリーチャンスが多い
・スキャルピングトレードに最適
中期移動平均線・中期トレンドの方向性、強さを判断できる
・デイトレード〜スイングトレードに最適
長期移動平均線・長期トレンドの方向性、強さを判断できる
・サポート、レジスタンス力が強い
・デイトレード〜スイングトレードに最適

表の通り、移動平均線は設定ごとに強い場面が違いますが、トレードの勝率を高めるために使うなら期間200の移動平均線がおすすめです。

期間200は1年の終値の平均値を表しており、有名なグランビルの法則で基準とされる期間設定でもあり、常に多くのトレーダーが注目しているからこそ効き目が強いといわれています。

長期的なトレンドの方向性を探るのはもちろんですが、トレンド発生中に価格が移動平均線にタッチした際の反発力が強いため、トレンド継続を狙ったエントリーの勝率が高くなります。

突き抜けてしまっても、その後再びタッチしに価格が戻ってくる動きも見せやすいですね。

また、タッチした際のトレンドフォローはもちろんスイング規模の値幅を捉えられると強いですが、利確幅を抑えればさらに勝率は高くなるでしょう。

そのため、長期移動平均線はスキャルピング〜スイングトレードに使える優れた最強の設定ともいえます。

「価格と触れ合う回数=トレードチャンスの多さ」に関しては短期移動平均線が最多なので、理想のトレード頻度が多いなら短期〜中期移動平均線を使うといいでしょう。

ただし、短期〜長期まで総合的な判断をしながらトレードするのが理想的なので、3つの移動平均線を併用しながらの判断がおすすめです。

フィボナッチ数列を使った期間設定

移動平均線の設定として、黄金比と一致する不思議な数列であるフィボナッチ数列に基づいた期間設定を行う場合もあります。

  • フィボナッチ数列とは・・・1から始まって前の2つの数字を足した数字を連ねていく数列

これだけではわかりづらいですが、以下の表のように③の数字は①+②を表し、④の数字は②+③を表す…といったように数列が構成されていきます。

計算の順番行っている計算数値
1からスタートのため固定1
⓪+①1(0+1)
①+②2(1+1)
②+③3(1+2)
③+④5(2+3)
④+⑤8(3+5)
⑤+⑥13(5+3)
⑥+⑦21(8+13)
⑦+⑧34(13+21)
⑧+⑨55(21+34)
⑨+⑩89(34+55)
⑩+⑪144(55+89)
⑪+⑫233(89+144)

特に、数値5〜233は移動平均線の期間として採用されるケースもあり、実際に参考にしているトレーダーも多くいます。

フィボナッチというどこか不思議な数列であっても取引に活用しているトレーダーが多いため、価格とのタッチやゴールデンクロスなど、通常の設定値と同じように機能するのが特徴です。

大事なのはインジケーターそのものではなく、インジケーターを参考にする人が起こす取引による値動きなんですね。

全てのインジケーターは、「Aが起きたらBになる」というトレード戦略まで考慮されて開発されています。

そのため、「Aが起きたからBになるのでは?」と考える大勢のトレーダーのポジションメイクによって、本来はCになるはずの値動きもBに変えてしまうほどの力を持ちます。

そのため、「本当にフィボナッチ数列は有効なのか?」ではなく、「フィボナッチ数列を意識しているトレーダーは多いのか?」という視点で期間設定を調整してみると良いですよ。

移動平均線を種類別に解説

移動平均線としては計算方法が若干異なる3種類が開発されているので、違いについては必ず把握しておきましょう。

単純移動平均線(SMA)

移動平均線の計算方法」でも解説した通り、単純移動平均線(Simple Moving Average)は設定した期間分のロウソク足の終値を平均して割り出される、基本的な移動平均線です。

計算式がシンプルなので原理を理解しやすく多くのトレーダーが活用しているため、その分価格タッチなどに対しての反応も大きくなる傾向にあります。

チャートはトレーダーの売買によって動くので、多くの人が見ているテクニカル指標はそれだけ効きやすいということになります。

ただし、単純移動平均線には以下のようなデメリットもあるため、理解したうえで活用する必要があります。

  • 期間内の値動きしか考慮されないため、過去の値動き全てを考慮した描写はされない
  • 過去〜現在までの値動きが全て同じ比率で平均されているため、値動きに対する反応が若干鈍い

単純移動平均線は実際の値動きに対してワンテンポ遅れて動き出すため、トレンドの初動を取りたい人やスキャルピングトレーダーには不向きな可能性があります。

これらのデメリットを克服するため、加重移動平均線や指数平滑移動平均線が開発されました。

加重移動平均線(WMA)

加重移動平均線(Weighted Moving Average)は、単純移動平均線が持っていた「直近価格への反応が鈍い」というデメリットを打ち消すべく開発された移動平均線です。

直近価格に対して大きな数字をかけて平均しているため、設定期間内の中でも直近価格がより重視されて描画されるのが特徴です。

  • 最新の加重移動平均線の値(期間設定5の場合)=(5本前ロウソク足の終値×1+4本前ロウソク足の終値×2+3本前ロウソク足の終値×3+2本前ロウソク足の終値×4+1本前ロウソク足の終値×5)÷15

単純移動平均線に比べて値動きへの反応は素早く、短期トレードでも使いやすくなっているのが特徴です。

ただし、直近への感応度が上がった代わりに「価格を平均化する」という移動平均線の本来の目的からは若干乖離しているため、「加重移動平均線は純粋な価格の平均値を取っているわけではない」と理解しておきましょう。

指数平滑移動平均線(EMA)

指数平滑移動平均線(Expentional Moving Average)は単純移動平均線や加重移動平均線とは異なり、以下の計算式によって過去全てのロウソク足の終値を計算式に含んでいるのが特徴です。

  • 1本目:n期間の終値の合計÷n=n期間の終値の平均値(単純移動平均線(SMA)と同じ計算式)
  • n本目(期間設定がnの場合):1本前の指数平滑平均+{2÷(n+1)}×(n本目の終値-1本前の指数平滑平均)

以上の計算式によって過去の値動きを全て計算に含むのに加え、過去の価格に比べて直近価格の重要度を指数関数的に上昇させています。

加重移動平均線に比べてさらに値動きに機敏に反応するため、スキャルピングなどの短期トレードには最も向いている移動平均線です。

ただし、値動きへの反応度が高い分ダマシも多くなるため、慎重なエントリー判断が求められる上級者向けのテクニカル指標でもあります。

どの移動平均線にも一長一短があるので、自分にとって使いやすい種類や期間設定を見つけるための検証は必ず行いましょう。

移動平均線で相場状況判断に使えるシグナル

移動平均線を使った環境認識やエントリー判断の方法は多く発明されているので、主要なものをいくつか紹介していきます。

どれも使いこなせば強い武器になるので、必ず覚えておきましょう。

ゴールデンクロス・デッドクロス

ゴールデンクロスやデッドクロスはトレンドの開始や終焉を示唆するサインで、2つの移動平均線を組み合わせて判断されます。

  • ゴールデンクロス:2つの移動平均線がともに上向きで、短期移動平均線が中長期移動平均線を上抜けると価格上昇を示唆する
  • デッドクロス:2つの移動平均線がともに下向きで、短期移動平均線が中長期移動平均線を下抜けると価格下落を示唆する

ゴールデンクロスで説明すると移動平均線がともに上向きの時点で、上昇トレンドが発生している可能性が高いと判断できます。

加えて移動平均線のクロスは「中長期のトレンド」に対して「短期のトレンド」が強くなっているのを示しているため、強い短期トレンドの発生・継続を予測できるのです。

さらに、上昇トレンド中のデッドクロスや下降トレンド中のゴールデンクロスは逆向きの値動きを示唆、つまりトレンドの終焉を示唆するサインになります。

そのため、ゴールデンクロスやデッドクロスをうまく活用すればトレンドの発生から終わりまでを予測できるでしょう。

クロスを観察する移動平均線の期間設定は自由で、期間20と100、50と200などトレーダーによってさまざまです。

期間選びのポイントとしては、クロスする移動平均線の期間が短ければそれだけ短期的なトレンドが狙えるので、利確したい値幅やポジションを持てる時間などを基準に判断しましょう。

チャートとの乖離率

移動平均線とチャートの乖離率を見れば「値動きの買われすぎや売られすぎ」を判断できるため、MACDやRSIといったオシレーターのような使い方もできます。

トレンドが大きくなったタイミングの「価格とチャートの乖離率」を基準として、その後再びチャートの勢いが強くなった際に基準の乖離率を当てはめてみましょう。

不思議なことに、基準と同じ乖離率になったタイミングでトレンド調整が発生する場面があるため、トレンドフォローポジションの利確や逆張りトレードに活用できます。

「チャートは美しい動きをしている」と言う経済アナリストやトレーダーもいますが、こういった現象が起こるのにはある種の法則性を感じますね。

今回は1つのトレンド内での乖離率を例に挙げましたが、通貨内の過去〜現在の値動きの乖離率やレンジ相場内の乖離率など、さまざまな場面で応用できる使い方です。

サポート・レジスタンスとして活用する

移動平均線をサポートやレジスタンスとして活用するのは、基本的な使い方の一つとして多くのトレーダーに知られています。

上昇トレンド発生中にはサポートとして、下降トレンド発生中にはレジンタンスとして機能する場面が多く、トレンドフォローの強い材料になります。

ほかにも、トレンド転換期は移動平均線に対するロールリバーサルが発生するケースもあり、水平線やトレンドラインと同じような使い方ができるでしょう。

ただし、短期移動平均線と中長期移動平均線はお互いにメリットとデメリットがあるため、把握したうえで自身に合う期間設定をする必要があります。

移動平均線の設定メリットデメリット
短期移動平均線価格と頻繁に触れ合うためエントリーチャンスが多いダマシが多く突き抜けてしまう場面も多い
中期・長期移動平均線サポート・レジスタンスとして
機能する確率が高い
価格と触れ合うタイミングが少ない

特に期間200の移動平均線はダマシが少ないため、ほかの根拠と重なったら勝率は非常に高いといえますね。

グランビルの法則

移動平均線の開発者といわれているジョセフ・E・グランビルが発明した「グランビルの法則」は、どんなトレーダーでも知っておくべき内容です。

期間200の移動平均線と価格の関係性をもとに売買判断をする法則で、買いサインと売りサインが合計8つ定義されています。

トレードサイントレードサインの内容
買いサイン①移動平均線が横向きor上向きの状態で価格が上抜けしたタイミングで買いエントリー
買いサイン②移動平均線が上向きの状態で価格が一旦下抜けしたが、再び上抜けしたタイミングで買いエントリー
買いサイン③移動平均線が上向きの状態で価格をサポートしたタイミングで買いエントリー
買いサイン④移動平均線が下向きだが価格と大きく乖離したタイミングで買いエントリー
売りサイン①移動平均線が横向きor下向きの状態で価格が下抜けしたタイミングで売りエントリー
売りサイン②移動平均線が下向きの状態で価格が一旦上抜けしたが、再び下抜けしたタイミングで買いエントリー
売りサイン③移動平均線が下向きの状態で価格をレジスタンスしたタイミングで売りエントリー
売りサイン④移動平均線が上向きだが価格と大きく乖離したタイミングで売りエントリー

合計8つの売買サインがありますが、移動平均線の傾きによるトレンド方向判断、移動平均線と価格の反応や乖離率などの判断を複合した非常に実践的な法則です。

移動平均線と価格の乖離による逆張りトレードは、「チャートとの乖離率」でも紹介した内容とかなり近しいものがありますね。

特に買いサイン③や売りサイン③は初心者トレーダーも判断しやすく、価格と移動平均線がタッチしたタイミングでハンマーなど反発を示唆するサインと組み合わせると高い勝率でエントリーできます。

複数のエントリー根拠を使いこなし、勝率を少しずつ上げていく作業が必要です。

例えば、売買サイン④に見られるような逆張りエントリーなら、ロウソク足やチャートパターンで反発のサインを判断するのもおすすめです。

判断基準の一つとなる包み足について解説している記事もあるので、ぜひ参考にしてください。

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移動平均線のデメリット・注意点

移動平均線は100年近く多くのトレーダーを支えてきたテクニカル指標ですが、デメリットや注意点も理解して使いこなす必要があります。

売買サインが値動きより遅れて発生する

移動平均線は1本前までのロウソク足価格の平均を取る計算式になっている特性上、必ず実際の値動きよりも遅れて描画されるため注意が必要です。

たとえば、下降トレンドから上昇トレンドへの転換サインは「戻り高値を上抜けたタイミング」ですが、その時点では移動平均線が下向きのためトレンド判断に迷ってしまうケースも。

特に、移動平均線をメインにトレンド判断をすると遅れによる判断ミスに繋がりやすいため、トレンド判断は以下のようにすると間違いが起きにくいでしょう。

トレンド判断基準
上昇トレンド直近の高値と安値が前回の高安値よりも高いか
下降トレンド直近の高値と安値が前回の高安値よりも安いか

また、移動平均線の期間が長いほど直近の値動きの重要性が下がるため反応は鈍りますが、長期トレンドの方向性がわかりやすくなったりラインとしての力が強まったり、メリットもあります。

移動平均線は遅れて表示されるという理解さえできていれば、それを前提とした環境認識ができるようになるでしょう。

ダマシが発生する可能性もある

これまで移動平均線のさまざまな使い方を紹介してきましたが、どのパターンでもダマシによって否定されてしまう場面は多々あります。

たとえば、上昇トレンド中に期間200の移動平均線が価格をサポートして上昇していく予測をしても、経済指標などで強い下落が発生してしまうと下抜けてしまう可能性は十分にあります。

このように、全世界のトレーダーが参考にしている指標は移動平均線だけではないため、移動平均線以外のテクニカル指標や売買サインを併用するのが大切です。

また、価格がサポートされて上昇していくのはグランビルの法則だと買いサイン③に該当しますが、一度下に突き抜けても再び上昇すれば買いサイン②として数えられます。

この場面は買いサイン②を狙っていた人からはダマシに見えてしまうため、買いサイン③も考慮できるように視野を広く持つ必要があります。

この場合だと、価格と移動平均線がタッチした際のロウソク足が長い陰線なので、下抜ける可能性を考慮できますよね。

移動平均線のセオリー通りに動かないと全てダマシに見えますが、「なぜそうなったのか?」という理由は必ずどこかに転がっているので、どんな値動きも本来ダマシと呼ばれるべきではありません。

そのため、移動平均線だけではなくオシレーターやチャートパターンなど、判断基準を多く持っていると有利に戦えるようになるでしょう。

移動平均線を利用した実際のトレード手法4選

ここでは、移動平均線を利用したトレード手法を4つ紹介していきます。

長期移動平均線を使った逆張りスキャルピング

長期移動平均線と価格がタッチすると、突き抜けるとしても下位足レベルでは一時的に反発する場合が多く、スキャルピングが可能な環境となります。

  • 期間200と期間50の移動平均線を表示させる
  • 1時間足以上でトレンド相場を見つけ、押し戻りと期間200の移動平均線がタッチ
  • 下位足で反転を示唆するロウソク足パターンの確認でトレンドフォローエントリー

まずはチャート上に期間200と期間50の移動平均線を表示させ、1時間足以上でトレンド相場を見つけてください。

2本の移動平均線がトレンド方向を向いているのを確認し、押し戻りで価格と期間200の移動平均線がタッチするのを確認します。

中期と長期の移動平均線が同じ方向を向いていると、強いトレンドが発生していると判断できます。

価格がタッチしたタイミングで1分足か5分足のロウソク足を確認し、十字線か反発方向へのハンマーなどの反発サインが出たら逆張りエントリーをします。

利確は、短期足の期間50の中期移動平均線が横向きに近くなったタイミングに設定しましょう。

スキャルピングなので、反転の兆しがあったらすぐに決済してしまうのが正解です。

損切りは、移動平均線を実体ベースで突き抜けたタイミングに設定してください。

トレンド方向へのエントリーとなるので反発の可能性が高く、下位足で売買サインを探るのはマルチタイムフレーム分析に該当します。

  • マルチタイムフレーム分析とは・・・複数の時間足で相場分析を行い、分析の正確性を上げる作業

そのため、たとえばさらに上位足で反発サインが確認できれば、数十pips以上を狙ったデイ~スイングトレードも可能です。

大きな値幅を狙うならさらに手堅い根拠が欲しいので、2連続でのハンマーやダブルボトム・トップ発生などのパターンを待つのも有効です。

移動平均線とオシレーターを組み合わせた順張りトレード

移動平均線と価格がタッチした際に突き抜けてしまう可能性を減らすには、オシレーターによる買われすぎ・売られすぎの判断を付け加えるのも有効です。

  • 下降トレンド相場で戻りを確認し、200移動平均線とのタッチを確認
  • MACDが0以上を示していれば売りエントリー
  • MACDが売られすぎを示したら利確
  • 価格が200移動平均線を突き抜けてしまい、MACDも下がり始めたらタイミングで損切り

まずは下降トレンド相場を確認し、戻りで期間200の移動平均線と価格がタッチするのを確認します。

価格タッチを利用した手法なので、勝率を上げるために長期移動平均線を活用しています。

移動平均線とタッチしたタイミングで、MACDが0以上示したらエントリーしてください。

利益確定は、MACDが売られすぎを示したタイミングに設定します。

損切りは、移動平均線を突き抜けてMACDが買われすぎ・売られすぎゾーンから戻ってしまったタイミングがいいでしょう。

移動平均線を上抜けるだけだとグランビルの法則で見て売りサイン②に該当する可能性もあるため、MACDのサイン否定もしっかり観察してください。

トレンド発生中はMACDの数値が0に戻るだけでも押し戻り完了の水準に近づくため、移動平均線タッチと組み合わせると有効に活用できます。

移動平均線の乖離とロウソク足パターンを組み合わせた逆張りトレード

移動平均線とチャートの乖離率には、「チャートとの乖離率」で解説したように法則性が見られるタイミングもあり、手法としての応用ができます。

  • 移動平均乖離率オシレーターを使い、直近の最大乖離率を確認する
  • トレンド相場を見つけ、最大乖離率に近く反発の兆しが見られたタイミングでエントリー
  • 移動平均線へのタッチで利確、もう1段トレンドが進んでしまったら損切り

まずは、移動平均線と価格の乖離率を表示する「移動平均乖離率」というオシレーターを使い、直近のチャートで乖離率が大きくなった箇所をマークしておきましょう。

次に、エントリーの前提条件としてトレンド相場を見つけ、トレンド方向への大きな値動きと同時に移動平均乖離率が直近の最大値に並ぶのを確認してください。

これだけだと反発条件としては不十分なので、同時にダブルトップ・ボトムや反発方向のハンマー、包み足などの反発サインが発生したらエントリーです。

価格が押し戻って移動平均線とタッチするタイミングで利確します。

移動平均線タッチ前にトレンドが再開してしまうケースも多いので、押し戻りの勢いが弱ければすぐに決済してください。

損切りは、エントリーしたポイントよりも1段トレンドが進んだらすぐに決済します。

あくまでもトレンドの調整を狙った逆張りトレードなので、決済はなるべく早めに行ってください。

移動平均線と価格の乖離率をチェックしている人は少ないですが、MACDやRSIなどと同じく逆張りの根拠としては強いのでおすすめです。

ゴールデンクロスを利用してトレンドの初動を掴むトレード

ゴールデンクロスとボリンジャーバンドを組み合わせ、トレンドの発生や再開を狙う手法を解説します。

  • ボリンジャーバンドが収束している状態でとれ±2σを突き抜けるのを確認
  • 同時に50移動平均線と200移動平均線でのゴールデン・デッドクロスが発生したらエントリー
  • 利確はボリンジャーバンドが±3σに到達したタイミング
  • 価格がボリンジャーバンドの標準偏差にタッチ、もしくはクロスが否定されたタイミングで損切り

まずはチャートに50移動平均線と200移動平均線、±2、3σを表示したボリンジャーバンドを描画します。

相場環境はトレンドでもレンジでもOKなので、ボリンジャーバンドが収束した状態で価格が±2σにタッチするのを確認してください。

価格が動き始め、今後勢いが増していく可能性が高いという状況を示しています。

ボリンジャーバンドのサインと同時に移動平均線同士のクロスを確認したら、大きな値動きが始まると予測できるためエントリーします。

なお、移動平均線同士がクロスしている角度が急だとそれだけ勢いが強いと判断できるため、強い根拠として活用できます。

ボリンジャーバンドが±3σにタッチしたら押し戻りが発生する可能性が高いため、ここで利確しましょう。

移動平均線同士がクロスしても、反対方向にいくとクロス自体が無かったことになってしまう、すぐに損切りしてください。

特に短期移動平均線を使っているとダマシも多いため、迅速な損切りが必要です。

ゴールデン・デッドクロスを単体で使っても勝率は低いため、必ず別の根拠との併用が必要です。

移動平均線を使いこなして勝ちトレードを大きく増やそう

本記事では、移動平均線の期間や種類ごとの違いといった基本的な知識から、トレードへの応用方法までを詳しく解説しました。

移動平均線はトレードにおいて基本的なテクニカル指標なので、全てのトレーダーが機能や使い方を理解しておくべきだといえます。

ただし、移動平均線だけで勝てるほど研究できるトレーダーはごく稀なので、多くのトレーダーはほかの根拠と組み合わせながら活用する必要があります。

本記事でもほかの根拠との組み合わせ方をいくつか紹介しているので、解説を参考に自分なりの使い方を模索していってください。

トレードに勝ち続けるためには、手法を見るだけでなく自身で検証してオリジナルの改良を施していく必要があります!

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