「海外FXはA-Book業者だから、安全」ってネットに書いてあったけど本当?
そもそもA-Bookって何?
「海外FXではA-Book業者が多い」と聞いた事がある人は多いのではないでしょうか。
結論から言うと、「海外FXはA-book業者が多い」と言うのは、事実に反したことです。
多くのウェブサイトでは、FX市場やFX業者の仕組みについて誤った説明をしているため、多くのトレーダーがA-BookやB-Bookに対して、誤った認識を抱いています。
ここでは、以下の3つについて解説していきます。
- A-BookやB-Bookって何?
- A-BookやB-Bookに関してよくある誤解と真実
- 「海外FX業者はA-Book」が嘘と分かる根拠
この記事を読めば、A-BookやB-Bookに関して抱いている認識を改めることができます。
A-BookやB-Bookって何?
A-BookやB-Bookの意味を誤解している人も多いので、改めてよく確認しておきましょう。
ここではA-BookやB-Bookの意味以外にも、FX全般の知識についても解説していきます。
- FX市場の仕組み
- FX業者の仕組み
FX市場の仕組み
A-BookやB-Bookについて理解するためには、FX業者が顧客からの注文をどのように受け取るのかを、前提知識として知っておく必要があります。
私たちがFX業者を通して行っているFXは「相対取引」と言われ、顧客とFX業者の一対一の取引が前提となっています。
くりっく365という「取引所FX」も存在しますが、ここでは最もメジャーな店頭取引をベースに解説していきます。
FXは株式取引とは違って、実在する取引所で取引が行われるわけではありません。
FXの仕組みを理解するためには、外国為替市場について知っておく必要があります。
外国為替市場とは、世界中の金融機関が為替レートを提示しあい、互いにトレードを行うことで、形成されるネットワークのことを言います。
外国為替市場はインターバンク市場という言い方をすることも多いです。
外国為替市場の参加者は、銀行やヘッジファンド、年金機構や保険会社などの大口の取引をする者で構成されています。
一般的な個人投資家は、外国為替市場で直接取引することはできないので、外国為替市場から派生した金融取引である「FX」を行っています。
金融機関のような大口の金融機関と取引を行うためには、厳格で高水準な条件を満たしている必要があります。
FX業者の仕組み
次にFX業者の仕組みについて解説していきます。
FX業者は複数のリクイディティ・プロバイダーと契約しており、為替レートを受け取っています。
リクイディティ・プロバイダーとは、FX業者に流動性を提供するために、FX業者に対して為替レートを提示している金融機関を指します。
FX業者もリクイディティ・プロバイダーとのトレードを行っていると考えてください。
外国為替市場のなかでは、FX業者ですら小口のトレーダーに分類されているため、銀行などの大口の金融機関と取引することが難しいです。
そのため、FX業者は流動性を確保するために、PoP(プライムオブプライム)と呼ばれる、リクイディティ・プロバイダーと契約しています。
PoP(プライムオブプライム)に関しては、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
FX業者はリクイディティ・プロバイダーから受け取った為替レートを合成し、FX業者独自の為替レートを顧客に対して提示しています。
顧客はFX業者が提示した為替レートに基づいて、「買い」か「売り」の注文を出します。
顧客が出した注文は、一度FX業者が相手方を務める形で約定されますが、その際FX業者は顧客が出した注文とは反対のポジションを保有することになります。
顧客と反対のポジションを持つことで約定させることを、反対売買といいます。
ここでは、FX業者が注文を受け取った後に行われる「A-Book」「B-Book」の注文処理について解説していきます。
- A-Bookとは?
- B-Bookとは?
A-Bookとは?
A-Bookとは、リクイディティ・プロバイダーに対して、FX業者が保有しているポジションとは反対の注文を出すことで、リスクヘッジを行う注文処理のことをいいます。
A-Bookは別名NDD方式とも呼ばれています。
例えば、顧客から100ロットの買い注文が発注されたとします。
FX業者は顧客の注文を約定させるために、反対売買を行って100ロットの売りポジションを保有します。
A-Bookで注文を処理する場合、リクイディティ・プロバイダーに対して、100ロットの買い注文を出します。
リクイディティ・プロバイダーに対して行うリスクヘッジを、カバー取引と言います。
つまり、100ロットの売りポジションとは反対の注文を行うことで、FX業者が抱えているポジションを相殺することができます。
B-Bookとは?
B-Bookとは、FX業者が保有しているポジションを、リクイディティ・プロバイダーに流すことなくそのまま保有し続け、為替リスクを引き受ける注文処理のことをいいます。
B-Bookは別名、DD方式とも呼ばれています。
例えば、顧客から100ロットの買い注文が発注されたとします。
FX業者は顧客の注文を約定させるために、反対売買を行って100ロットの売りポジションを保有します。
B-Bookで注文を処理する場合、FX業者はそのままポジションを保有し続けます。
つまりFX業者は、100ロットの売りポジションで為替差益を狙いに行くことになります。
このように、インターバンク市場に対してカバー取引を行わないことを、呑み行為と呼ぶこともあります。
FX業者がA-BookとB-Bookのどちらを使っているかを知ることはできない
ここまでA-BookやB-Bookについて解説してきましたが、FX業者がA-BookとB-Bookのどちらを使っているか(どのように使い分けているか)を、顧客は知ることはできません。
つまり、FX業者が公式サイトでA-Book業者またはNDD業者を名乗っていたとしても、真実であるかどうかはFX業者にしか知りえないことなのです。
実際のFX業者では、A-Bookでの注文処理を行いつつ、相場の状況や顧客からの注文状況に応じて、B-Bookでの注文処理も行っています。
ほとんどのFX業者がA-BookとB-Bookを場合に応じて使い分けていることを考えれば、FX業者を「A-Book業者」や「B-Book業者」などのように区別することは無意味です。
A-BookやB-Bookに関してよくある誤解と真実
近年ではFXに関して解説するメディアが増えてきていることから、多くのトレーダーがFXの仕組みやトレード方法についての知識を持っています。
しかし同時に、FXに関する誤った知識も広がってしまっているのも事実です。
ここでは、A-BookやB-Bookに関する誤解が広まってしまった理由を解説した上で、「A-BookやB-Book」に関してよくある誤解を解説していきます。
- なぜA-bookとB-bookに関する誤った認識が広まっているのか
- 誤解①:A-Bookの方がB-Bookよりも優れている
- 誤解②:A-Bookでは直接インターバンク市場に注文が流れる
なぜA-bookとB-bookに関する誤った認識が広まっているのか
そもそもなぜ、A-BookやB-Bookが誤った認識で広まってしまっているのでしょうか。
これにはFX業者、特に海外FX業者による印象操作が長年にわたって行われていたことが原因と考えられます。
海外FX業者は、現在日本にも積極的に進出しており、その一環として日本国内でのSEO対策に大量の資金を投じています。
SEO対策とは、Googleなどの検索エンジンで上位に表示されるように対策を施すことを言います。
実際、海外FX業者はIB報酬やアフィリエイト報酬を充実させることで、国内で多くの海外FXのアフィリエイターを獲得しています。
その結果、
- 国内FXの最大レバレッジ25倍に比べて、何百倍ものハイレバレッジトレードが可能
- 口座残高がマイナスになってしまった場合には、追証請求をせず、ゼロカット制度でマイナス分を補填する
- 国内FXよりも豊富なキャッシュバックが行われている
以上のように、国内FXを下げて、海外FXを持ち上げる記事が多くなりました。
また海外FX業者やアフィリエイターは、海外FX口座を開設することに抵抗のある人たちに対しては、
海外FXはA-Bookという透明性が高く、安全な取引ができる業者です!
と宣伝することで、海外FXに対する印象操作を続けてきました。
その結果、日本では海外FXへの人気が高まると同時に、A-BookやB-Bookに関する誤った認識を植え付けられてしまいました。
次に、A-BookやB-Bookに関する具体的な誤解について解説していきます。
誤解①:A-BookのほうがB-Bookよりも優れている
よく、A-Bookは「安全で透明性が高い」と評価される一方で、B-Bookは「FX業者の介入があるから危険」と評価されています。
しかし、A-BookとB-Bookの間には優劣は存在しません。
A-Bookが安全で透明性が高いと評価されている理由として、「A-BookはFX業者のディーラーが注文に介入しないから」と説明されることがあります。
しかし実際には、A-Bookの注文処理が行われるのはFX業者が反対売買で顧客の注文を約定させた後なので、安全性や透明性とは関係ありません。
一方でB-Bookが危険と評価されている理由として、「B-BookはFX業者のディーラーが注文に介入する」ので、レート操作などが可能になってしまうからと説明されることがあります。
しかし前述のように、FX業者が顧客の注文に介入する点は、A-Bookに関しても同じです。
また、B-Bookで懸念されている「呑み行為」に関しても、顧客の注文を約定させた後の話なので、顧客のポジションに対して不利なことは何一つありません。
呑み行為については、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
誤解②:A-Bookでは直接インターバンク市場に注文が流れる
A-Bookつまり、NDD方式では顧客の注文が直接インターバンク市場に流れると誤解している人が多いです。
またそれに付随して、A-BookはFX業者の介入を防ぐことができることから、透明性の高いトレードをすることができると主張している記事も散見されます。
確かに、A-Bookが行われると、リクイディティープロバイダーに対してカバー取引を行うので、間接的にはインターバンク市場との取引と見ることができるかもしれません。
しかし前述のように、FX業者でFXを行う以上、顧客のトレードの相手方を務めるのは、あくまでもFX業者です。
FX業者がインターバンク市場に対して発注する注文は、顧客の注文ではなく、FX業者による新規の注文です。
そもそもインターバンク市場では個人投資家の注文を受け付けていない
また、そもそも個人投資家がインターバンク市場で直接トレードすることは不可能です。
インターバンク市場では銀行などの大口の取引が行われていますが、インターバンク市場での最低取引単位は100万通貨とされています。
インターバンク市場では100万通貨を1本と表現することが多いです。
個人投資家などの小口のトレーダーは、FX業者での最低取引単位である1,000通貨単位で注文を行うことが多いため、インターバンク市場では取り扱ってもらえません。
以上の理由から、A-Bookが行われたからといって、顧客の注文が直接インターバンク市場に届いているというわけではないのです。
「海外FX業者はA-Book」が嘘と分かる根拠
前述のように、FX業者がA-BookとB-Bookのどちらを使っているかを知ることができません。
それでは、「海外FX業者はA-Book業者」が真実である可能性もあるのでしょうか。
結論、海外FX業者がA-Bookしか使用しない「A-Book業者」である可能性はかなり低いです。
ここでは、「海外FX業者=A-Book」が嘘であり、B-Bookも使用していると分かる根拠を解説していきます。
- 根拠①:A-Bookだけでは、海外FX業者の取引条件を提供するのは難しい
- 根拠②:B-Bookの金融ライセンスを取得している
根拠①:A-Bookだけでは、海外FX業者の取引条件を提供するのは難しい
A-Bookだけで海外FX業者の取引条件を提供するのは不可能に近いです。
A-Bookで注文処理した場合、FX業者はスプレッドや取引手数料から収益を得ますが、
- ハイレバレッジ
- ゼロカット
- キャッシュバック
以上のような海外FX業者に特有の取引条件を、A-Bookの収益だけでは実現するのは不可能です。
一方で、B-Bookは顧客の注文を呑むことで、為替差益を狙うことができるので、A-Bookよりもはるかに高い収益性を実現することができます。
したがってB-Bookを使用していれば、ハイレバレッジの注文を約定することや、ゼロカットで顧客のマイナス分を補填すること、積極的に顧客に対してキャッシュバックを行うことも資金的に可能です。
B-Bookは収益性が高いですが、同時に損失を被るリスクがあるのも事実です。
スリッページが狭い海外FX業者もB-Bookを使用している
スリッページが極端に狭いことをアピールしている海外FX業者も、B-Bookを使用している可能性が高いです。
そもそも、A-Bookで注文処理する場合は、顧客の注文を約定させる前に、リクイディティ・プロバイダーに対して、カバー取引が可能であるかの確認をとる必要があります。
そのため、A-Bookで注文処理する場合はB-Bookに比べて、約定に遅延が生じてしまうことがあり、結果的に広いスリッページを発生させる原因になってしまいます。
また、狭いスリッページを実現するためには、
- 高性能なサーバー
- 複数のリクイディティ・プロバイダーとの契約
が必要です。
高性能なサーバーがあれば、電子的に行われている顧客との取引をより高速で効率よく行うことができますが、高性能なサーバーを整備するには、多額の費用がかかります。
また、複数のリクイディティ・プロバイダーと契約すれば、カバー先の選択肢が増えるだけでなく、より良いレートを提供することにつながりますが、複数のリクイディティ・プロバイダーと契約するには、FX業者にそれなりの資本力があることが認められる必要があります。
以上のことから、収益性の低いA-Bookだけでは狭いスリッページを実現することはできませんが、B-Bookを使用しているのであれば、実現が可能です。
根拠②:B-Bookの金融ライセンスを取得している
A-Bookを自称している海外FX業者がB-Bookの金融ライセンスを取得していることがあります。
金融ライセンスとは、その金融当局が管轄している地域内にて、金融にまつわる業務を行うことを許可した機関に対して、発行しているものです。
例えば、日本国内でFX会社を運営するためには、日本の金融庁が発行する金融ライセンスを取得しておく必要があります。
FX業者が取得している金融ライセンスの種類を見ることで、そのFX業者が「A-BookとB-Bookのどちらを利用することができるのか」を判断することができます。
一般的な金融ライセンスを取得しているFX業者は、A-Bookを利用することができますが、B-Bookを利用することまでは許可されていません。
B-Bookを利用するためには、B-Bookを許可された金融ライセンスを取得しておく必要があります。
B-BookはFX業者が為替リスクを背負うことになるので、A-Bookよりも注文処理上のリスクが高いです。
したがって、一定以上の資本金を持っており、それ以外の厳しい要件をみたしたFX業者しかB-Bookを行うことができません。
もし、B-Bookの金融ライセンスを取得している場合は、B-BookだけではなくA-Bookも利用することができます。
WikiFXで金融ライセンスを調べる方法
では実際に、FX業者が取得している金融ライセンスから、どの注文処理方式を利用しているかを確認する方法を見ていきましょう。
FX業者が取得している金融ライセンスは、WikiFXで調べることができます。
以上はFX業者に関するページですが、画面左側にそのFX業者が取得している金融ライセンスを確認することができます。
表示されている金融ライセンスの名称の隣に、特に何の表記もなければ、そのFX業者は管轄区域内においてA-Bookの注文処理を許可されていることになります。
一方で、「MM」と表記された金融ライセンスがあった場合、そのFX業者はその管轄域内において、A-BookだけではなくB-Bookの利用も許可されています。
MMとはマーケットメーカーの略です。
WikiFXでの詳しい検索方法については、以下の記事でも紹介しているので、参考にしてください。
まとめ
ここまでFXにおけるA-BookやB-Bookについて解説してきました。
この記事のポイントは以下の通りです。
- A-BookやB-Bookに関して、多くの人が誤った認識を抱いている
- A-BookやB-Bookは、FX業者の抱えるポジションをどのように管理するかの名称
- A-Bookだからと言って、インターバンク市場に直接注文が流れるわけではない
- A-Bookが良いとされているのは、海外FX業者による印象操作によるところが大きい
WikiFXでは安全性に優れた国内FX業者の利用をオススメしています。
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